インサイトスコープ

新たなニーズを発掘する商品ブランド戦略 第2回 消費者の「違和感」を見逃すな

Facebook X
長野 種雅
株式会社資生堂
トレードマーケティング部 トレードマーケティング室 コラボレートマーケティンググループ

長野 種雅

「フルメーク ウォッシャブルベース(FWB)」は、自社オンラインショップ(watashi +)での先行発売と卵を使った動画を核としたプロモーションの効果もあり、2013年3月発売の予定を前倒しして店頭発売することになりました。店頭での発売時には、会社一丸となった大規模な店頭プロモーションを実施しています。先行発売時の動画と同じように卵を使い、お湯で簡単にメークが落ちることを端的に理解してもらえるプロモーションを行いました。

過去最速でシェア30%へ

「フルメーク ウォッシャブルベース(FWB)」は、自社オンラインショップ(watashi +)での先行発売と卵を使った動画を核としたプロモーションの効果もあり、2013年3月発売の予定を前倒しして店頭発売することになりました。店頭での発売時には、会社一丸となった大規模な店頭プロモーションを実施しています。先行発売時の動画と同じように卵を使い、お湯で簡単にメークが落ちることを端的に理解してもらえるプロモーションを行いました。

店頭発売を前にした流通との商談には私も同行し、実演してみせました。流通の担当者も先行発売の実績や、私の実演動画が拡散していることを知っていたこともあり、私たちの大規模プロモーションの話にも前向きに乗ってもらえました。3月のテレビCM放映と同時に店頭を占拠するプロモーションを行い、ブランドの垂直立ち上げに成功しました。

 
20160506_02-1

メーク時

20160506_03-1-Dec-11-2024-10-19-29-0221-AM

お湯でメークを落とした時


手小売りとの商談時に、長野氏が自らメークをして臨み、その場でお湯で落として見せた。
その結果、その場で大口の商談が実現したという。 
 

このときに私たちが伝えようとしていたのは、お湯でメークを落とすという新習慣でした。テレビCMでも忙しく働く女性や、子どもと一緒にお風呂に入る母親がお湯だけで簡単にメークが落とせることを伝えました。Web、店頭、テレビCMといったプロモーションでメッセージを伝えられたことが、化粧下地のシェアを過去最速で約30%にまで伸ばし、出荷個数も発売から間を置かずに200万個超えの達成につながったと感じています。

「メークが落ちていない」という誤解

一方で、課題も見えていました。まずは、立ち上げの段階でメークをお湯だけで落とすという新しい化粧習慣を伝えるメッセージに偏りすぎたため、お客さまに「本当にお湯だけでメークが落ちるのか?」という疑問を抱かせてしまったことです。そこでお客さまの疑問を払拭すべく、メークがお湯だけで簡単に落とせる事を端的に訴求するテレビCMを制作しました。さらによりインパクトの強い形に進化させたのが、歌舞伎俳優の片岡愛之助さんを起用したテレビCMや店頭ツールによる歌舞伎メークをお湯で落とすという訴求です。

もうひとつ問題となったのは、お客さまの使用感触に関することでした。発売後にお客さまから届いた声で一番多かったのは「メークが落ちていない」というものです。実は、開発段階から認識していたのですが、FWBを使ってお湯でメークを落としたときの肌の手触りと、クレンジングオイルを使ったときのそれは違うということです。

クレンジングオイルを使ってメークを落とす際に肌が「キュキュッ」とする感じが、お客さまが「メークが落ちた」と感じるサインなのです。FWBにはお湯と反応することでメークを落とす効果につながる「ヴェールアクションポリマー」という独自の成分が含まれていますが、このポリマーがお湯と反応するときに、触感として少しぬるつきを感じるため、「メークが落ちていないのではないか」という不安・不信感につながってしまいました。ホントは落ちてるんですけどね。技術的に実際起きていることと、消費者の体験から感じる印象がイコールではないときに、どんなアプローチが必要なのかという視点は、この問題を通じた気づきになりました。
 
 
20160506_04ブランドサイト上で、お湯でメークが落ちる仕組みを説明
 
 
FWBはこれまでにない新しい発想から生まれた商品なので、お客さまが使用して下さった印象も従来と違って当然だという考えが私たちにはありました。ところが、それでは済みませんでした。私たちが提供する新しい習慣、そこから生まれる新しい価値を、違和感を覚えることなくお客さまに使ってもらうことが最も重要だったのです。そこにわずかでも疑問が生まれると、消費者は本当にメークが落ちたのか?と不安になってしまうのです。ただ習慣を変えるだけではなく、そのためにお客さまがすでに抱えている不満や不安を解消し、安心してお使いいただく必要があることがわかりました。この点については、今回の商品で一番想定外の出来事で、今後の商品開発やプロモーションにおいての学びになったと感じています。

次回は、男性が女性向けの化粧品を開発するにあたっての難しさ、それをクリアするために取り組んだことなどを紹介します。

おすすめのコラム

デジタルマーケティングコラム

世界スマホシェア率を日本と比較|人気のOSやメーカーは?

アプリ開発企業のマーケティング担当者の中には、世界のスマートフォンシェア率が気になっている方もいるでしょう。人気のOSやメーカーなどに関して、世界全体と日本との傾向の違いを把握しておくことで、マーケティングに活かせる面もあるかもしれません。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介

「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう

今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介

近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説

結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

就職氷河期世代の年齢とは?世代の特徴や背景、現状を解説

バブル崩壊後の不況に直面しながら社会に出た「就職氷河期世代」。厳しい雇用環境により正社員になれず、現在もキャリアや生活に課題を抱える方が少なくありません。今回は、マーケティングに役立つ視点から、就職氷河期世代の年齢や背景、特徴、そして現状についてわかりやすく解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!

ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

パン派・ごはん派の割合|身体に良い方はどっち?

日本の主食といえば、ごはんですが、パンを好んで食べる方が増えているのも事実です。実際は、パン派とごはん派のどちらが多いのでしょうか。また、体にとって良いのはどちらなのでしょうか。 今回は、パン派とごはん派の調査結果と身体に良い主食について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

推し活の経済効果はどれくらい?市場規模と推し活マーケティングのメリットとは

若年層に適確なアプローチができないなど、従来のマーケティング手法に限界を感じてはいませんか。商品やサービスのターゲットとして、「推し活に力を入れる消費者」に絞る方法もあります。 推し活とは、推し(お気に入りのキャラやアイドルなど)を応援する活動のことです。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード