パーセプションとは?購買意欲を左右する5つの要素と調査方法
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消費者の購買意欲は、商材そのものの価値だけでなく「どう見えるか」「どう感じられるか」といった印象=パーセプションによっても大きく左右されます。今回は、パーセプションの定義に加え、購買意欲に影響を与える5つの要素や調査方法について解説します。
マーケティングにおける「パーセプション」とは
マーケティングにおける「パーセプション」とは何を意味するのでしょうか。その定義や、ブランドイメージとの違いを解説します。
パーセプションの定義
パーセプション(perception)とは、「認識」や「知覚」を指す言葉です。マーケティングにおいては消費者が商品やサービスについて「単に名前を知っている」状態を超え、どのような価値・特徴を持つかというイメージを抱いている状態を指します。このイメージは、消費者が意識しているかどうかにかかわらず形成されます。
パーセプションとブランドイメージとの違い
| 項目 | パーセプション | ブランドイメージ |
|---|---|---|
| 意味 | 消費者が商品やサービスに対して 抱く印象や認知 |
企業が自社の商品やブランドの価値を 届けるために定着させたい印象や認識 |
| 視点 | 消費者視点 (消費者がどう感じているか) |
企業視点 (消費者にどのように思われたいか) |
| 形成する要素 | 提供する価値や日々のコミュニケーションの積み重ね | タッチポイントの演出 |
| 例 |
ユニクロ:「シンプルなデザインでどんな服にも合わせやすい」 |
ユニクロ:高品質で低価格な、誰でも日常使いできるベーシックウェアの定番 |
項目
パーセプション
ブランドイメージ
項目
パーセプション
(消費者がどう感じているか)
ブランドイメージ
(消費者にどのように思われたいか)
項目
パーセプション
ブランドイメージ
項目
パーセプション
「ヒートテックが安くて暖かい」
ブランドイメージ
パーセプションは「その商品やブランドが自分にとってどんな意味を持つのか?」という深い“認知”に近く、企業が意図した内容とは異なる形で消費者に定着していることもあります。
一方、ブランドイメージは写真やキャッチコピー、プロモーションによって形成される表層的な印象で、企業側のマーケティング施策によってある程度コントロールしやすい側面を持ちます。
企業のブランド戦略においては、自社が伝えたいブランドイメージと、実際に消費者が抱いているパーセプションとのギャップ(パーセプションギャップ)をいかに埋めるかが重要な課題となります。
ブランドイメージの重要性や確立方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
「ブランドイメージとは?重要な理由や向上のための戦略」

”購買意欲を左右する”パーセプションの重要性
ブランド戦略において、パーセプションを形成する重要性やメリットを紹介します。
カテゴリを超えて第一想起されるブランド作りにつながる
情報の多様化や選択肢の増加により、単なる認知拡大だけでは購買につながりにくくなっています。そのため、今後のブランド戦略では認知拡大に加え、「どのように認識されるか」を重視する視点が欠かせません。質の高いパーセプションを形成できれば、カテゴリを超えて消費者の第一想起を獲得するブランドへと成長します。
ブランドの長期的な価値を支える
変化の激しい現代で支持され続けるには、芯がブレないブランドであり続けることが重要です。その実現には、企業やブランド自らを客観的に見つめ直し、パーセプションを的確に管理する必要があります。こうした取り組みこそが、ブランドの長期的な価値を支える鍵となります。
顧客の信頼・ブランドの社会的価値を高める
パーパスやSDGs・ESGへの関心が高まる現代において、企業は社会にとって意味のある存在だと明確に示す必要があります。そのためには、実績という確かなファクトを積み重ね、社会からの信頼を得ることが重要です。こうした信頼を蓄積させるには、常にパーセプションを理解し、丁寧に向き合っていく姿勢が欠かせません。
パーセプションチェンジによるブランドの再活性化にも貢献する
パーセプションチェンジとは、ブランドや製品に対する消費者のイメージをどのように変化させるかという観点です。パーセプションチェンジの計測により、施策の効果を可視化し、戦略の見直しや最適化が可能になります。また、誤解や偏見を含むパーセプションを修正することで、ブランドイメージの正常化やビジネスリスクの低減にもつながります。
こうしたパーセプションの変化によってブランド価値が高まり、売上や市場シェアの向上にも寄与する可能性があります。
ブランドの再活性に向けたリブランディングについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
「リブランディングを成功させる取り組み方やポイント、事例を解説」

パーセプションを構成する5つの要素
現代のマーケティングにおいては、商品やブランドがどのような文脈で「どう見られるか」を計算し、意図的にこれらの要素を設計することが求められます。ここでは、パーセプションを読み解く上で必要な5つの要素を解説します。
事象(出来事)
パーセプションを構成する出発点となるのが、具体的な事実や出来事の存在です。例えば飲料メーカーが新しいフレーバーの飲料を発売した、ハウスメーカーが地域のイベントにスポンサー参加したなど客観的に確認できる出来事を指します。
重要なのは、漠然としたイメージではなく、あくまでファクトに基づいた認識であるという点です。明確な出来事があるからこそ、そこに対する受け手の解釈=パーセプションが生まれます。この「事象」をどう設計・演出するかが、パーセプション形成の起点となります。
リテラシー(認識力・価値観)
リテラシーは、情報をどのように読み取り、理解し、評価するかという受け手側の素養です。これは個人の経験や知識、価値観などによって大きく左右されます。例えば、同じ広告を見ても「革新的だ」と感じる人もいれば、「わかりにくい」と感じる人もいます。これは、個人の生活経験や情報感度、社会的立場などによって情報の受け取り方が異なるためです。
グループ(所属)
対象がどの「グループ」に属しているか、あるいは分類されるかという要素もパーセプションの形成に影響を与えます。例えば、同じ商品でも「高級ブランドの商品」として紹介されるのと、「量販店の商品」として扱われるのとでは、受け手の印象や期待値がまったく異なります。また、販売元がスタートアップ企業なのか大手企業なのかといった分類も、信頼性や革新性の感じ方に影響を与えます。
タイミング(時代性・流行)
「いつ」その情報が発信されたかというタイミングも重要な要素です。同じ情報でも、伝える時期や社会の潮流、時流によって消費者の受け止め方が変わります。例えば、あるファッションや表現が「トレンド」として好意的に受け入れられるか、それとも「時代遅れ」として受け取られるかも、発信のタイミング次第です。
コントラスト(比較)
人は物事を単体で評価するのではなく、常に何かと比べて判断する傾向があります。パーセプションも、他の選択肢や対象と比較されることでより明確に形成されます。これが「コントラスト(比較)」の要素です。
例えば同じ価格帯の商品であっても、他社より「機能が優れている」「デザインが洗練されている」といった差があることで、その商品に対する評価がいっそう高まることがあります。

パーセプションの主な調査方法
パーセプションの重要性や構成要素が理解できたところで、次に気になるのは「どのように調査すれば良いのか」という点ではないでしょうか。ここでは、パーセプションを把握するための代表的な調査手法を3つ紹介します。
アンケート調査
アンケート調査は、すでに一定数の顧客・ユーザーが存在している場合に有効な方法です。具体的な方法としては、「好感度○点」「認知率○%」など数値化して傾向を把握する定量調査と、自由記述や選択理由から印象や認識の背景を探る定性調査の2種類があります。
結果を数値で比較・分析できる、大規模な母集団に調査できる点がメリットですが、自由記述の内容が浅くなりがちであることや、設問設計の工夫次第では回答にバイアスが生じる可能性があるといった注意点も存在します。
アンケート調査を実施するための基礎情報については、以下の記事で詳しく解説しています。
「アンケート調査とは?種類やポイント・注意点をわかりやすく解説」
インタビュー調査
インタビュー調査は、新商品開発前などコンセプト段階の検証方法に有効です。数人で自由に語ってもらい議論を深掘りするフォーカスグループインタビューと、1対1で深く価値観や動機を探るデプスインタビューの2つの方法があります。
定量的なアンケートでは見えにくい深層的なインサイトを得られ、リアルな言葉でパーセプションの背景を可視化できるのがメリットです。ただし、調査の実施に工数がかかり、同時に多くの対象者から意見を集めるのは困難です。また、実施者のスキルによって結果の質が左右されやすい性質もあります。
インタビュー調査のポイントを詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
「『定性調査(インタビュー調査)』を成功させる“コツ”」
UGC・SNS分析
反応や変化をリアルタイムに把握したいときに有効なのが、UGC・SNS分析です。X(旧Twitter)やInstagram、レビューサイトなどに投稿された自発的な発言・感想を収集・分析するほか、テキストマイニングや感情分析ツールを活用することで、大量のテキストデータから傾向や感情の流れを可視化できます。
UGC・SNS分析では調査対象を新たに集める必要がなく、ユーザーの“素の声”をありのままに把握できる点がメリットです。一方で、投稿数が少ない場合は十分な分析が難しく、投稿者の属性やトーンなどに偏りが生じる点に注意が必要です。
UGCの詳細については、以下の記事で解説しています。
「UGCが気になる方必見!特徴やメリット、活用例をご紹介」
まとめ
パーセプションとは、消費者が商品やサービスに対して抱く価値や特徴の認識を指します。企業は単なる認知拡大だけでなく、消費者が自社をどのように認識しているのかを把握し、意図的に管理していく必要があります。パーセプション調査によって現状を可視化し、そのギャップを的確に埋めていくことで、持続的に選ばれる強力なブランド戦略を描きましょう。

