イマーシブとは?没入体験を取り入れたマーケティングのポイント
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イマーシブ(immersive)とは「没入感」を意味する英語です。近年はモノ消費から体験消費へと価値が移り変わり、消費者はより臨場感のある体験を求めるようになりました。イマーシブ体験はブランドと顧客の距離を縮め、認知拡大やファン化につながる手法として活用されています。今回はイマーシブ(没入型)マーケティングのポイントを解説します。
近年注目されている「イマーシブ」とは
イマーシブ(immersive)とは、英語で「没入する」「浸る」などの意味を持つ言葉です。マーケティングの文脈では「イマーシブ体験」として用いられることが多く、ユーザーがコンテンツの世界観に入り込み、まるでその場にいるかのように感じられる没入体験を指します。
従来の「モノを所有すること」に価値を置く消費から、「体験すること」に価値を見出す消費へと変化が進んできました。特にZ世代を中心に「トキ消費」や「イミ消費」と呼ばれる、時間や意味に重きを置いた価値観が広がっており、その延長線上にあるのがイマーシブです。
単なる情報発信にとどまらず、消費者が能動的に体験へ参加できる仕組みをつくることで、ブランドとユーザーの距離を縮められる点が注目されています。
関連記事:トキ消費・イミ消費とは?消費行動の変化とZ世代にささるポイントを解説
イマーシブがトレンドになっている3つの背景
ここからは、イマーシブが注目されている3つの背景について、社会的な変化やユーザー行動の変容を踏まえて解説します。
デジタル技術の変化
イマーシブの広がりを支えているのが、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった先端技術の進化です。ARやVRの技術革新によって、現実とデジタルの境界が曖昧になり、従来では実現できなかったような没入体験が可能になりました。
例えば、自宅にいながらも商品の質感やサイズ感を試せたり、遠隔で開催されるイベントやライブにリアルタイムで参加できたりと、体験の幅が大きく広がっています。
ARやVRの技術は単なる便利さにとどまらず、ユーザーに「現実に近いリアルな体験」をオンラインで味わわせるものであり、体験価値を重視する世代の期待に応える要素です。その結果、イマーシブ体験が加速的に普及しています。
新型コロナウイルスの蔓延による影響
コロナ禍による外出制限は、オンラインでの新しい体験価値を一気に高める契機となりました。バーチャル展示会やオンラインライブ、さらにはデジタル店舗などが短期間で広く浸透し、これまでデジタルに積極的でなかった層も体験に触れるきっかけを得ています。
この流れによって、デジタルやオンラインに対する抵抗感は大きく減少し、制約された環境下で「不足した体験を補いたい」と願う消費者の強いニーズが生まれました。結果として、現実では得られない特別感や臨場感を味わえるイマーシブ体験が一気に注目され、社会的にも価値のある取り組みとして広がっていったのです。
SNSとの相乗効果
イマーシブ体験はSNSとの親和性が高い点も大きな特徴です。非日常的でインパクトのある体験は、ユーザーが自然に写真や動画を撮影してシェアしたくなる要素をもっています。
SNSでの共有が拡散されることで、体験した本人以外にもブランドの世界観や魅力が広まり、二次的・三次的な波及効果を生み出します。特にSNSを日常的に利用するZ世代にとっては、イマーシブ体験とSNSの組み合わせは相性抜群です。
ブランド側にとっては広告を打たずとも自然な口コミを通じて認知を拡大でき、ファンを形成する強力なきっかけとなります。そのため、イマーシブ体験は単なるイベントではなく、SNS時代に適したマーケティング施策として高く評価されています。

イマーシブの手法を駆使した事例
イマーシブの手法を駆使した実際の事例を2つ紹介します。ここで取り上げる事例は、単なる娯楽にとどまらず、新しい顧客体験の在り方やマーケティング戦略のヒントにもつながるものです。没入感をどのように演出し、人々の心をつかんでいるのかを見ていきましょう。
泊まれる演劇
宿泊型のイマーシブシアターは、ホテル全体を舞台として使う新しい形の体験型演劇です。観客はただ鑑賞するのではなく、物語の一部として参加し、登場人物と同じ空間を共有することで、深い没入感を得られます。
滞在中は客室や廊下、レストランなど、普段であれば日常的な場所が物語のシーンへと変わり、さまざまな角度から物語を楽しめるため、一度の体験で多彩な発見があります。非日常感を強調した演出は、体験者の心に強い印象を残します。結果として演劇ファンだけでなく、普段は演劇に触れない層にも広がり、SNSを通じて話題が拡散され、リピーターが続出して新たな市場を生み出しています。
イマーシブ・フォート東京
お台場に登場したイマーシブ・フォート東京は、さまざまなイマーシブ・シアターを取り揃えた完全没入型テーマパークです。12種類のアトラクションが用意され、来場者は非日常的な物語世界に足を踏み入れることができます。
シャーロック・ホームズの推理劇に参加したり、ヘンゼルとグレーテルの物語を追体験したりと、人気ストーリーを五感で味わえる仕組みが特徴です。さらに人気アニメの世界観を活かした謎解き体験もあり、世代を問わず幅広いユーザーを魅了しています。
単なるアトラクションではなく「物語の住人」として参加できる点が強みで、来場者は物語の進行に自分が関わっているかのような感覚を楽しめます。その特別な体験が口コミやSNS投稿を生み、結果的に集客力と話題性を同時に高めています。マーケティング施策においても、Z世代を中心に共感を呼ぶ好例といえるでしょう。
イマーシブな手法をマーケティング活動に取り入れるポイント
イマーシブな手法をマーケティング活動に取り入れる際のポイントについて解説します。顧客体験を中心に据えることが、次世代のブランディングや販路拡大に直結します。
顧客を主役にする
イマーシブを活用する際には、顧客を「見せられる立場」ではなく「参加する立場」としての設計が重要です。ブランドの世界観に顧客を招き入れ、体験そのものを通して価値を感じてもらうことで、より強い印象を残せます。
また、視覚や聴覚だけでなく、味覚や触覚も含めた五感に訴える体験を組み込むと、商品やサービスへの理解や共感がより深まります。単なる説明では得られない“体感型の納得”を提供できるのが大きな魅力です。
リピート率を高める仕掛けが必要
一度体験して終わりではなく、「もう一度訪れたい」と思わせる仕掛けの設計が、マーケティング活用のカギです。訪れるたびに違う体験ができるストーリー展開や、参加するごとに新しい発見がある仕組みを取り入れれば、継続的な来訪を促すことができます。
リピート体験はファンの定着につながり、商品やサービスに対するロイヤルティを強化します。こうした工夫が長期的なブランド価値の向上にも寄与するのです。
SNSを活用する
イマーシブ体験はSNSとの相性が非常に良い領域です。ハッシュタグを用意したり、シェアしたくなる演出を盛り込むことで、自然と拡散が広がります。さらに、SNSを介したキャンペーンやフォトスポットの設置などを組み合わせれば、ブランドの話題性を高めると同時に新規顧客の獲得も期待できます。特に写真や動画による拡散は視覚的インパクトが強いため、SNSユーザーの心をつかみやすいのが特徴です。
Z世代へのアプローチを考えるなら、SNS連携は欠かせない要素であり、イマーシブ体験の力を最大限に引き出す方法のひとつといえるでしょう。
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まとめ
イマーシブとは「没入感」を意味し、ユーザーが能動的に参加しながら体験できる仕組みを指します。AR・VRといった技術の進化やコロナ禍によるオンライン体験の普及、さらにSNSとの親和性の高さを背景に急速に広がりました。マーケティングで活用する際は、顧客を主役に据える設計やリピートを促す仕掛け、SNSでの拡散を意識することが重要です。イマーシブ体験を取り入れることで、ブランド認知の拡大とファン化を同時に実現できるでしょう。

