日本の社会問題とは?現状と影響を解説!企業の取り組み事例も紹介
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少子高齢化や貧困、災害の頻発化など、日本社会は多岐にわたる課題を抱えています。これらの問題は経済や地域、暮らしに深刻な影響を及ぼし、さらには企業活動にも大きな影響を及ぼす可能性があります。こうした中で注目されているのが、社会課題の解決を企業の価値創造につなげる「ソーシャルマーケティング」です。今回は、日本が抱える主な社会問題と、その解決に挑む企業の取り組みについて解説します。
日本が抱える主な社会問題
現代の日本社会は、かつてないほど多様で複雑な課題に直面しています。経済成長の鈍化、人口構造の変化、自然災害の増加など、日常生活の基盤を揺るがす問題が山積しています。ここでは、特に注目される主要な社会問題について、それぞれの概要と影響を解説します。
少子高齢化・人口減少
日本の社会構造を根底から揺るがしているのが、少子高齢化と人口減少の問題です。
・概要
日本の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに減少を続け、2023年10月時点で1億2,435万人となりました。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2070年には総人口が9,000万人を下回ると見込まれています。さらに、高齢化率は2020年の28.6%から2070年には38.7%へ上昇する見通しです。※いずれも出生中位推計。

出典:
国土交通省「国土交通白書2024」
https://www.mlit.go.jp/statistics/file000004/html/n1110000.html
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp2023_ReportALLc.pdf
内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf
・もたらされる影響
人口構造の変化は、労働力人口の減少をもたらし、経済成長の鈍化を引き起こします。企業の競争力が低下することで、国際的な経済的地位にも影響が出かねません。加えて、年金や医療制度を支える現役世代が減少するため、社会保障の持続可能性が懸念されます。地方では人口減少によって学校や商店が閉鎖し、地域コミュニティが衰退するなど、生活基盤の維持が難しくなる事例も増えています。

貧困
経済的な格差と貧困の問題も、日本社会が直面する深刻な課題です。
・概要
厚生労働省の調査によると、所得分布では「100万円〜300万円未満」の世帯が全体の約28.8%を占め、平均所得以下の世帯数は6割を超えています。また、「生活が苦しい」と答えた世帯は全体の58.9%にのぼります。
特に深刻なのが子どもの貧困で、17歳以下の貧困率は11.5%。約8.7人に1人の子どもが経済的困難を抱えています。

出典:
厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa24/dl/03.pdf
こども家庭庁「子供の貧困の状況」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/72e91230-ee19-49d2-b94b-15790ab6d57d/cbf19fb3/20231117_councils_shingikai_kihon_seisaku_bZi2mq96_30.pdf
・もたらされる影響
貧困は教育機会を奪い、十分な学習や健康的な生活が送れない原因となります。その結果、貧困が次世代へと連鎖し、国全体の人的資源にも悪影響を及ぼします。貧困対策は個人や家庭の問題にとどまらず、国の将来を左右する社会的課題といえるでしょう。
災害の激甚化・頻発化
地球温暖化に伴い、日本の自然災害は規模が大きくなり、発生頻度も増加しています。
・概要
この100年間で気象災害の激甚化・頻発化が目に見える形で進行しており、内閣府の防災白書によれば、この傾向は今後も続くことが予測されています。
出典:内閣府「令和5年版 防災白書」
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r05/honbun/t1_2s_01_00.html
・もたらされる影響
災害は人的・物的被害をもたらすだけでなく、被災地の復旧・復興にも大きな負担を強いています。また、農林水産業はもとより、製造業、商業、建設業などさまざまな産業にも影響を与え、経済的損失も甚大です。気候変動は熱中症の増加など健康被害をもたらすリスクも高めており、社会全体での適応策と緩和策の両立が求められています。
出典:
環境省・文部科学省・農林水産省・国土交通省・気象庁「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018~日本の気候変動とその影響~」
https://www.env.go.jp/earth/tekiou/pamph2018_full.pdf
食品ロス
日本の食品ロスは深刻な環境問題であると同時に、食料安全保障の観点からも重要な課題です。
・概要
環境省の調査によれば、令和5年度の日本における食品ロスの発生量は464万トンにも達します。このうち事業系が231万トン、家庭系が233万トンと、ほぼ同量が発生しています。

出典:環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)」
https://www.env.go.jp/press/press_00002.html
・もたらされる影響
食品ロスは単なる資源の無駄遣いにとどまらず、生産・流通・廃棄の各段階で温室効果ガスを排出し、環境負荷を増大させています。
また、世界的な食料不足が懸念される中、国内で大量の食料を廃棄していることは食料安全保障の観点からも問題視されています。食品ロス削減は持続可能な社会の実現に向けた重要な課題です。

東京一極集中
日本の人口と経済活動が東京圏に集中し続けていることも、大きな社会問題です。
・概要
国土交通省の白書によれば、東京圏はバブル経済崩壊後の一時期を除いて転入超過が続いており、2018年には13.6万人の転入超過となりました。現在、日本の総人口の約29%に当たる約3,700万人が東京圏に住んでおり、2014年以降は全道府県で東京圏への転出超過が続いています。大企業の集中もこの傾向に拍車をかけています。
出典:国土交通省「国土交通白書2020」
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/html/n1112000.html
・もたらされる影響
一極集中は、東京では交通の混雑や土地価格の高騰、生活インフラの圧迫といった問題を引き起こし、一方で地方では過疎化による文化の衰退や社会インフラの維持困難、コミュニティの崩壊などの問題を生じさせています。地域バランスの取れた発展が求められています。
情報リテラシー格差
デジタル技術の急速な発展は、情報格差という新たな社会問題を生み出しています。
・概要
総務省の情報通信白書によれば、高齢者や低所得層ではインターネット利用率が低く、いわゆるデジタルデバイドが生じています。また、インターネット上の情報の真偽を確かめることなく信用・拡散する行為も増加しており、情報リテラシーの格差が社会問題化しています。
出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd21b120.html
・もたらされる影響
デジタルデバイドは情報や学習機会の不平等を生み、社会参加や就業の面でも不利益をもたらします。また、デマ情報の拡散は健康被害や経済的被害などさまざまな社会的損失を招く可能性があります。
誰もが平等にデジタル技術の恩恵を受けられる社会の実現と、情報を適切に評価・活用できる能力の向上が重要な課題となっています。
ジェンダー不平等
日本社会には根強いジェンダー不平等が存在し、さまざまな社会的損失を生み出しています。
・概要
世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数2025年」において、日本は148か国中118位と非常に低い順位にとどまっています。国会議員や管理職に占める女性の割合が低く、男女間の賃金格差も大きいことが主な要因です。
一方、国連開発計画のジェンダー開発指数では193か国中89位、ジェンダー不平等指数では172か国中22位と指標によって順位に差があります。
出典:男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数」
https://www.gender.go.jp/international/int_syogaikoku/int_shihyo/index.html
・もたらされる影響
ジェンダー不平等は雇用機会や賃金の不平等、教育機会の損失をもたらすだけでなく、暴力や虐待の温床にもなりかねません。多様性を尊重し、すべての人が能力を発揮できる社会の実現に向けて、ジェンダー平等の推進は重要な課題です。
社会問題の解決を目指す「ソーシャルマーケティング」の事例
企業が自社の利益追求だけでなく、社会的課題の解決にも貢献する「ソーシャルマーケティング」が注目されています。社会や環境に良い影響を与える活動を通して、ブランド価値や企業イメージを高めることができるのが特徴です。
ここでは、日本を代表する企業による成功事例を紹介します。

ユニクロ|「RE.UNIQLO」
ユニクロは、サステナブルな社会の実現を目指して「RE.UNIQLO」プロジェクトを展開しています。
この取り組みでは、着なくなったユニクロ製品を全国の店舗で回収し、リユースやリサイクルを実施しています。回収した服は、難民キャンプや被災地への支援物資として再利用されるほか、素材として再生し、新しい服や断熱材、防音材などに生まれ変わります。
廃棄を減らすだけでなく、循環型社会の形成に貢献するこの活動は、ユニクロの「服を通じて社会に貢献する」という理念を体現するものです。消費者にも環境意識を促し、ブランドの信頼性と好感度を高めています。
トヨタ|トヨタ環境チャレンジ2050
トヨタ自動車は、地球環境と共生する未来を目指し、「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げています。
この取り組みでは、「もっといいクルマ」「もっといいモノづくり」「いい町・いい社会」という3つの領域において、6つの環境チャレンジを設定しています。具体的には、「2050年までに新車のCO₂排出ゼロ」や「ライフサイクル全体でのCO₂ゼロ」など、長期的かつ明確な目標を打ち出しています。
トヨタはこの活動を通じて、環境負荷を減らすだけでなく、技術革新によって社会に新たな価値を提供。企業としての責任と未来志向を両立させる姿勢が、多くの支持を集めています。
サントリー|「天然水の森」活動
サントリーは、「水と生きる」という企業理念のもと、2003年から「天然水の森」活動を続けています。
このプロジェクトは、全国の工場周辺にある水源エリアで森林を保全・再生し、地下水の循環を守るものです。工場で使用する水以上の量を自然から生み出すことを目指しています。
また、「動物」「植物」「昆虫」「菌類」を“採用”するユニークなキャンペーン「人類外採用」も話題となり、環境保全を身近に感じさせる工夫として高く評価されました。サントリーはこの活動を通して、自然との共存を重視する企業イメージを確立しています。
まとめ
日本の社会問題は、人口減少や貧困、環境問題など多方面に広がっています。そんな中、ユニクロやトヨタ、サントリーのように、社会課題を自社の価値創造と結びつける取り組みは、確実に変化を生み出しています。長期的な企業成長を見据えた戦略として、社会の持続可能性を高めるソーシャルマーケティングも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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