研究と事業の目線を揃え、グローバル市場を動かす共通言語を作る。技術をいかに生活者価値として関連部署や市場に分かりやすく伝えるか。
「他の技術との違いを分かりやすく教えてほしい」——。ライオン株式会社のライフサイエンス研究所では、独自技術の開発を進めながらも、その価値を社内外に伝えきれないもどかしさを抱えていました。「独自の技術」を関連部署や市場に分かりやすく届けるための「共通言語」をいかに作るか。
今回のプロジェクトでは、クロス・マーケティングのインサイトコンサルティング部門が、ワークショップ設計から定量的な市場性の検証まで一気通貫で伴走。研究員自身も気づいていなかった技術の魅力を引き出し、組織の壁とグローバル市場の壁を同時に越えた支援事例をご紹介します。
ご相談企業様のご紹介
1891年創業。ハミガキ、ハブラシ、石けん、洗剤、ヘアケア・スキンケア製品などのトイレタリー用品や、医薬品、化学品などの製造・販売を手がける日用品メーカー。「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する」というパーパスを掲げ、国内外で幅広く事業を展開。
ライフサイエンス研究所 チームリーダー。生活者向け製品に関わる技術開発を担当。技術をいかに生活者価値として分かりやすく伝えるかを課題とされていた。
ライフサイエンス研究所。今回のプロジェクトのテーマリーダー。技術開発を進める中、生活者だけでなく関連部署に「この技術ってこういうものなんだ」と価値を理解してもらえるような伝え方に課題を感じられていた。
研究技術センター 戦略統括部。R&D全体の重点領域の設定や投資アロケーションを担う。事業部門への研究価値の伝達を重視し、プロジェクト遂行を後押しされた。
プロジェクト概要
課題
・研究部門と事業部門で「見ている時間軸」が異なることが多く、技術を生活者視点で議論するための「共通言語」の設定が必要であった。
・海外の幅広い地域や民族の実態やニーズを捉えるのに、自社単独では時間を要していた
取り組み
・「Seeds-Needs Bridge」を活用し、従来の「ニーズから製品を考える」手法ではなく、「技術シーズから生活者価値に紐づける」逆方向のプロセスを採用
・技術の仕組みを要素分解。専門的な技術を誰にでも伝わる形にする手法をコンサルタントが設計。
・クロス・マーケティングのメンバーが生活者視点でグループワークに参加し、技術の抽象化と仮説構築を伴走。
・グローバル市場における生活者の実態を把握する定量的な市場性検証リサーチの実施。
効果
・自社のバイアスを排した幅広い応用可能性や、他社では見られない独自のコミュニケーションに繋がり得る仮説が見つかった。
・生活者の反応データに紐づいた裏付けができ、自信を持って海外のマーケティング担当等へ技術の価値を伝えられるようになった。
・パッケージ化された伴走型支援のカスタマイズにより、研究の進め方そのものに対する気づきが得られた。
Interview

写真右から)ライオン株式会社 遠藤様、宮澤様、蔭山様 写真左)弊社 コンサルティング本部 インサイトコンサルティング部 高木
研究と事業の見ている視点の違い ー組織間に生じる「時間軸のズレ」と伝わらない壁
──今回のプロジェクトに取り組む前、「自社の技術の価値をどのように市場へ届けるか」という点で、どのような課題意識をお持ちでしたか?
宮澤様:基礎的な研究が生活者の悩みにどう繋がるかの言語化ができていないため、マーケティング部門などの関連部署に生活者にとっての価値を伝えきれていないという課題がありました。また、海外のマーケティング担当者に対して自分が話していることが伝わっていなかったり、「他の技術と何が違うのかわからない」と言われたりした経験もありました。
蔭山様: 一番大きいのは「見ている時間軸の差」だと思っています。事業部門はすぐに実現可能な技術をどう広げるかという短期視点が必要なことが多いですが、研究部門はこれからどう技術を仕込んでいくかという長期視点でみることが多いです。この時間軸のズレによって、ミスマッチが起きやすいため、この差を埋める作業をいかに早くするかが重要だと考えていました。
CM 高木: 多くの企業様をご支援する中で、技術部門が開発中の技術・製品を事業部へ提案しても「議論が噛み合わず、製品化に繋がらない」というケースを頻繁に目にします。これは技術の優劣ではなく、宮澤様や皆さんおっしゃる通り、双方が同じ土俵で語るための「共通言語」が形成されていないことに起因します。だからこそ、開発の初期段階から我々のような第三者が間に入り、組織の壁を越えて協働できるプロセスを設計することが極めて重要だと捉えています。

「本当に社内でできないのか?」——自社単独の限界と、外部パートナーへの期待
――社内単独での取り組みに限界を感じる中で、なぜクロス・マーケティングの「Seeds-Needs Bridge」をパートナーに選ばれたのでしょうか。
宮澤様: 技術を生活者価値へ紐づけて言語化するという、私たちの中であまり前例がないところでサービスを使わせていただいたのが一つです。また、短期間で幅広い方にアンケート調査を行うことが難しい中、グローバル市場における多様な地域や民族の現地生活者の実態を迅速に把握できたというのは自社だけでは難しかったと感じています。
蔭山様: 社内にも多様なバックグラウンドの研究員がたくさんいるため、上司からは「本当に社内でできないのか」と問われる部分もありました。しかし今回はグローバル案件ということもあり、海外生活者ニーズの定量的な把握には難しさがあったため、クロス・マーケティングさんに、仮説作りからサポートしていただける効果が大きいと判断されました。
遠藤様: 自分たちの中で同様なサービスを使ったことがなかったので、もちろん「どういう成果につながるんだろうか」という不安はありました。でも調査設計ややり方について事前に細かくお話ししながら進める中で、途中からは「このまま一緒に進めば大丈夫だろう」という安心感に変わっていきました。

「ニーズ」ではなく「技術シーズ」から考える。これまでに行ったことのないアプローチ
――パートナーとして伴走がスタートした後のことについて伺います。今回のワークショップにおいて、最も「これまでにない」と感じたポイントは何でしょうか。
宮澤様: これまで行ってきた通常のワークショップは「こんなニーズがあるから、こんな製品アイデアを出そう」というニーズ起点が主流でしたが、今回は私たちの技術を製品アイデアに繋げる目的だったため、「技術シーズがどうニーズに紐づくか」という逆のプロセスでした。ここが一番のポイントだったと思います。自分たちだけで進めると、「この技術はあの悩みにはまるだろう」というバイアスに陥りがちですが、その枠をうまく広げることができました。
CM 高木: 技術をそのまま起点にすると、想定内の課題解決に留まってしまいます。あえて技術を「抽象化」し、フラットな生活者視点から「この機能は、他にもこういう価値に変換できるのではないか?」と問いを投げかけ続けることで、思考の壁を突破するのが私たちの役割です。
技術の擬人化が思考の枠を打ち破る「共通言語」に
――Seeds-Needs Bridgeのワークショップにおいて、難解な技術をどのように紐解き、どのような化学反応が生まれたのでしょうか?
CM 高木: 専門的な技術をそのまま事業部や海外市場に提示しても、なかなか魅力は伝わりません。そこで我々コンサルタントは、普段研究員の方々が突き詰めている技術の仕組みを一度徹底的に要素分解し、「誰にでも伝わる形」に翻訳するプロセスを設計しました。その際、異なる専門性や文化的背景を持つ方にも直感的に伝わることが重要と考え、今回は「高校生が見た時に構造が端的に分かること」を目標に掲げ、体内で起こる連鎖的な反応を、擬人化・ストーリー化するという手法をとっています。ワークショップの最初でいかに「技術の棚卸し」を異なる視点で行えるかが、その後の仮説の広がりを決定づけるからです。
宮澤様: この擬人化・ストーリー化のプロセスは非常に効果的でした。高木さんと綿密にやり取りをし、「このキャラクターはもうちょっとこういう仕事のイメージの方が近い」といった具合にキャラクターを作り込んだことで、部門の垣根を越えた「共通の言葉」がはっきりと形作られたのです。さらに、自分たち自身も気づかなかった「技術の魅力」に改めて気づくことができ、参加した研究メンバーにとって非常に良い経験になりました。

独自のバイアスを外し、未知の「応用可能性」を発見する伴走力
――そのワークショップの結果、どのようなアウトプット(アイデアや仮説)が得られたのでしょうか?
遠藤様: 印象的だったのは、クロス・マーケティングのメンバーが同じグループに「生活者」と対等な視点で入ってくださったことです。専門用語が飛び交うのではなく、「生活者に伝わるか、伝わらないか」という基準で議論ができました。技術を一段階抽象化し、特定の機能領域にとらわれず「人の体で例える」という抽象的なレイヤーに引き上げてストーリー化したことで、皆さんの圧倒的な思考の広がりへと繋がりました。
CM 高木: 研究員の方々が持つ「いつもの思考の枠」を自力で広げるのは難易度が高いものです。技術をそのまま起点にすると、「自分たちが想定した課題を解決する」というバイアスに陥りがちです。だからこそ、私たちがフラットな生活者視点から「この機能は、他にもこういう価値に変換できるのではないか?」と問いを投げかけ続けることで、その壁を突破していく。それがインサイトコンサルタントとしての介在価値です。
蔭山様: 実際、自分たちだけだと「課題を解決するもの」という固いアウトプットしか出てこなかったかもしれません。しかしワークショップを経た結果、他社さんの訴求ではあまり見ないような、ライオン独自の全く新しいコミュニケーションに繋がり得るユニークな仮説が多く生み出されました。技術を擬人化したことで、機能的価値だけでなく、豊かで独自性のあるアウトプットが得られたという印象を強く受けています。

「社内の想い」を「客観的なデータ」へ。組織の熱量を上げるコンサルティング
――定量的な検証を経て、社内の伝え方や今後の展望に変化はありましたか?
宮澤様: 以前より自分たち本位の表現ではなくなりましたし、生活者からもこういう反応が得られているというデータも紐づけてお伝えできるようになったのは全然違いますね。自信を持って伝えられそうです。とにかく丁寧に意図を汲み取り、気軽に連絡をくださりながら一緒に進めてくださったのがとてもやりやすかったです。
遠藤様: サービスがパッケージ化されすぎておらず、調査設計やワーク設計を1個ずつ積み上げて柔軟に対応していただけたのが素晴らしい点でした。今後は言語化の手段や方法をご紹介いただくような、教育的支援があると面白いですね。それだけでも研究の進め方に良い影響があると思っています。
CM 高木: リサーチの本質は、単なるアイデアの「可否のジャッジメント」ではありません。クライアント企業の皆様の「探求心を刺激」し、プロジェクトの「熱量を上げる」プロセスとして機能させることこそが、伴走するコンサルタントの最大の使命だと考えています。今回、定量データという客観的な根拠が、皆様の考えを具体化し、事業部や海外市場に向けて次の一歩を踏み出すための強力な推進力になったのであれば嬉しいですね。今後も、AIなどを活用しながら研究員の方々が自ら思考を広げられるような仕組みづくりも含め、共に探究するパートナーとしてご支援できればと思います。
おすすめのポイント:Seeds-Needs Bridge
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技術の擬人化・ストーリー化による視野の拡張:コンサルタントが介入して難解な技術の仕組みを要素分解し、誰にでも伝わる形にすることで、組織間やグローバル市場との「言葉の壁」を取り払います。
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自社バイアスの打破と新たな応用性の発見:「機能(ファンクション)」を経由して技術とニーズを結びつけ、フラットな生活者視点の問いを投げかけることで、従来の「課題解決」に留まらない独自のコミュニケーションや新たな応用領域を発見できます。
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パッケージ化されていない「探究の主体」としての伴走:単なる調査提供や可否のジャッジに留まらず、ワークショップの設計から定量検証まで、組織の熱量を上げ、事業化への推進力を高めるテーラーメイドのコンサルティングを行います。






