データマーケティングコラム

”勝ちパターン”の定義がカギ!N1起点での顧客理解+CRM推進メソッド【データマーケ ウェビナーレポート】

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今回は、2025年3月に実施したウェビナー「“勝ちパターン”の定義がカギ!N1起点での顧客理解+CRM推進メソッド」の概要をご紹介いたします。
弊社データマーケティング部マネージャーが自ら、顧客データの分析手法や注目すべきポイントを紹介したウェビナーで、CRMに携わる皆様のお役に立つ内容になっていますのでぜひお読みください。

 

はじめに:N1起点での ”勝ちパターン”の定義とは?

最近バズワードにもなっているN1分析は、皆様の中でも意識していて実際のお客さまの声を聞いていこうというトレンドがあると思いますが、そこで得られた知見を”勝ちパターン”として定義化しておくことがとても重要です。

”勝ちパターン”の定義とは、新規顧客がリピート購入を経てロイヤル化していくステップを把握し、そこから、いわゆるロイヤリティが高い顧客の成長ルートを定義することを指します。この”勝ちパターン”の定義付けを私たちのサービスとしてクライアント様のご支援をおこなっています。

 

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”勝ちパターン”定義化の効果

”勝ちパターン”の定義化をすることのメリットは、顧客を成長させるCRM文脈の中で、どのタイミングでどの施策を打つべきか、それをどのようなKPIに落とし込むのか、というCRM設計がとても容易になることにあります。

例えば、新規獲得の段階ではSNSが効果的という”勝ちパターン”が発見された場合、SNS上でのブランド関連キーワードの発生件数を上げていこう、ということがKPIになります。リピート化のためには初回購入時の店舗での良い接客体験が”勝ちパターン”ということであれば、来店後の接客満足度を上げることがKPIになります。あとは、ロイヤル化のためにはECと店舗を併用して利用してもらうことが”勝ちパターン”であることも多く、その場合は店舗のみの利用者にECを利用してもらうことがKPIになります。このように、”勝ちパターン”を定義することで、それに沿ったKPIを考えやすくなることが大きなメリットのひとつです。

もう一つの側面としては、”勝ちパターン”を定義しておくことで各部門間の目線を容易に揃えやすくなることです。CRMの運用においては、施策の企画・設計を行う部署と、実際の運用を担う部署が分かれているケースがよくあります。さらに、施策を展開するプラットフォームやチャネルごとに担当者や部門が異なり、実行体制が複雑になることも少なくありません。その結果、会社全体としての売上や成果ではなく、自事業部のKPI達成を優先してしまうという傾向が生まれやすくなります。

例えば店舗とECで事業部が分かれている企業様の場合、それぞれが自事業部の成果のみ追及し、施策がカニバってしまうケースはよくみられます。会社全体としての売上を高めるという発想があれば、店舗とECの双方向で流入を促すような施策を検討すべきでしょう。

ここまでを簡単に整理すると、N1目線で納得感の高い”勝ちパターン”を定義し、それを組織横断で施策を推進する際の目印とすることが重要だと考えます。世の中でもいろいろな手法がありますが、実際にどのように進めていけばよいのか、難しさを感じている方も多いのではないでしょうか。

”勝ちパターン”に基づくN1起点での顧客理解+CRM推進メソッド

では私たちはどのような支援を行っているのか、実際に実施している手法を、主に3つのポイントを押さえながらご紹介したいと思います。

【3つのポイント】
  1. 注目すべきN1顧客を正しく抜き出すこと
  2. 行動と意識の双方の観点から理解を深めていくこと
  3. しっかり”勝ちパターン化”をしてKPIや施策へ落とし込むこと

1.注目すべきN1顧客を正しく抜き出す

初めに実施するのは、着目すべきN1顧客を正しく抜き出すことです。本当に有効な顧客のセグメントを作るために、RFMの視点を応用した星取表という手法を使っています。星取表ではある期間ごとに購買が発生したか否かでセグメントを作っていくのですが、その顧客セグメント別で人数構成やLTVを確認します。
この顧客セグメント毎に、ビジネスボリューム全体に占めるインパクトが分かるので、それを踏まえて着目すべき顧客セグメントを決定するのですが、この時お客様の業態に合わせて、例えばオムニチャネルで販売している場合は星取表の観点に店舗利用やEC利用といったチャネルの区分を追加したり、リユース企業様の場合には”売る”・”買う”という行動を追加することもあります。

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星取表を作成して注目すべきセグメントが決まったら、そのセグメントに属する顧客の個票を作っていきます。これが今回のテーマでもあるN1視点での分析になります。個票とは、N1の顧客がいつ・どこで・どのようなものを購入したのかという購買ログデータの履歴を指します。ここに会員IDをキーにメールの開封ログや自社オウンドメディアのアクセスログなどを組み合わせることで、よりリッチな個票が完成します。大事なのは個票を作成するだけにとどまらず、個票を読み込み活用することです。分析者である私たちとクライアント様で一緒に個票を読み込み、目指すべき顧客像を明確化させていきます。

例えば、過去にご支援したアパレル企業様の場合では、個票を確認することで「初回にある特定の商品を購入した人はリピーターとして定着しやすいのではないか」という意見が出てきました。既成概念にとらわれず、個票を見ながら顧客の特徴的な行動をできる限り多く出していくことがとても大事なプロセスになります。

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次のステップとして、個票で抜き出した行動特徴をフラグ化し、再度マクロデータに戻して分析軸として検証していきます。そうすることでそのフラグの有効性を確認します。先ほどのアパレル企業様の例では、初回に特定の商品を購入した顧客と、それ以外の商品を購入した顧客でセグメントを分け、特定商品の購入者は本当にLTVが高いのかを確認しました。

着目したポイントとしては以下の2つです。
まず1つめは、実際にLTVに差が出ているかどうかの確認です。2つめとしては、初回にその特定商品を購入した顧客のボリュームを把握し、施策として実行する価値があるかどうかという点です。この2つを満たすことで、ようやく有効な顧客セグメントとして活用することができるようになります。

この工程を複数回繰り返すことで、各クライアント様の顧客をリアルに反映した価値のある顧客セグメントができていきます。またそこから、目指すべき顧客像の”勝ちパターン”(顧客の行動ジャーニーパターン)を作っていこうという議論に進めることが可能となります。


N1の行動分析を起点に、ここまで深く確認することで、初めてクリティカルな行動パターン=いわゆる”勝ちパターン”に該当する顧客像を明確にとらえることができるのですが、これを実際に行うのは容易ではありません。私たちがご支援しているクライアント様の中でも「肌感覚でなんとなく感じていたけれど、実際にこういう買い方をしてるお客様がいたのか」と、顧客理解が組織全体で深まり、分析の効果を実感していただくことが多いです。

2.行動×意識の双方の観点から理解を深める

その次に実施するのが、顧客に対する定性インタビュー調査です。これまで分析した行動データだけでは顧客の行動ジャーニーを正確に把握するのはなかなか難しいケースもありますが、弊社はマーケティングリサーチのノウハウを持つ会社なので、実際に対象となる会員の方にご協力いただいてインタビューを実施することが可能です。また分析から得た仮説を定量調査で検証することで、顧客の意識という観点から行動の裏付けをとることもできます。

例えば行動データの分析だけでは、いわゆるコンバージョンのタイミングでしかログが取れないので、その間に顧客がどんな情報接触をしたのか、行動したきっかけを知ることができないのですが、実際には顧客意識として何かに満足したとか、何かに対してすごく愛着が湧いた、ということがあるはずです。それを定性インタビューで確認し、行動のコンバージョン間の穴埋めをしてあげる。当然これもN1分析になります。またその行動を起こした顧客のボリュームが実際にどれぐらいあるかを把握するために、定量調査で検証することもあります。調査を組み合わせることで、より実態のある”勝ちパターン”化ができることが私たちの支援の特徴と言えます。

こちらもアパレル企業様の事例ですが、初回に特定の商品を購入した顧客に対して、なぜその商品を購入し、リピーターとなったのかを調査で確認しました。分析から得られたファクトとしては、該当の商品を購入した顧客は、実際に試着室で試着をしているケースが多く、その際に店員から良質な接客を受けていたということがわかりました。このことから、初回に特定の商品を購入した顧客は、他の商品を購入した人と比べて、その店舗へのロイヤリティ=体験価値が高まりやすい傾向にあると定義しました。

他にも、個票で読み取ったフラグを調査で裏付けするという分析支援をした事例がいくつかあるので、また別の機会にご紹介したいと思います。

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3.”勝ちパターン”化してKPI・施策へと落とし込む

実際に”勝ちパターン”を作ることで、KPIや施策へ具体的に落とし込みがしやすくなります。新規顧客の段階からリピート化し、さらにロイヤル顧客化するまでにどのような意識を醸成し、どのような行動を促すべきかを、これまでのステップでジャーニーという形で一本の道筋として理解しているため、その内容をKPIとして落とし込んでいきます。

クライアント様がお客様の行動をコントロールできる機会に実施すべき施策はなんだろう?ということを私たちが考え、施策方針をクライアント様に提案させていただきます。

クライアント様側でも窓口に立っていただく方はCRM担当の方々、マーケティング部門の方々が多いのですが、個票の読み込みの場には店舗で接客をされている方、ECの運用をされている方など様々な方にヒアリングをして現場の意見を確認していきます。現場の方々にも顧客の行動ジャーニーを見ていただき、会社として目指すべき方向性を統一していく目的もあります。


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終わりに:企業にとっての”勝ちパターン”・顧客にとっての”価値パターン”

このように、私たちは個票の確認や定性調査を通じてN1起点で顧客の解像度を高めた上で、定量調査やマクロ分析による検証もしっかりと行っています。こうして”勝ちパターン”を定義し、施策の方向性を作成するご支援を行うことで、クライアント様も目指すべき指標に沿った施策につなげることができます。

N1起点での分析工程は、弊社のクライアント様にご案内するとご賛同をいただくことも多いのですが、一方で自社のみで進めていくことは技術面でもリソース面でも難しいというお声もよくいただいています。そこでご活用いただいているのが弊社でご提供している「ジャーニーデータ分析」というサービスです。

今回ご紹介した分析のステップは、この「ジャーニーデータ分析」のサービス手法をそのまま活用した事例になります。なのでこの世界観・この手法に関心をおもちいただいた方、自社だけで取り組むには少しハードルが高いと感じられた方は、ぜひ私たちにご相談いただければと思っています。

過去の実績としては、最初の星取表を整理してセグメントを作るところから始めるケースもあれば、個票を作って読み込むところから始めるケースもあります。ある程度CRMが進んでいて顧客のセグメントはできている場合は、調査で裏付けるところからご支援させていただいているクライアント様も多くいらっしゃいます。ご状況を伺って最適なご提案をさせていただきます。

最後に、これまで何度も”勝ちパターン”という言葉をご紹介してきましたが、実はここで考え方を誤ってしまうケースがあります。よくあるのが、「企業にとっての理想的な行動」を”勝ちパターン”と捉えてしまうことです。つまり、「消費者にはこう動いてほしい」という企業側の期待をそのまま”勝ちパターン”に設定してしまうことがあります。その場合、”勝ちパターン”の定義で失敗しているため、その後の活用がうまくいかないことが多いです。

本当に大切なことは、この”勝ちパターン”は企業視点のものではなく、お客様にとって価値があると感じられる行動のパターン、つまり”価値パターン”=バリューパターンであるということです。なので、あくまでも生活者のN1の起点からニーズを探り、生活者の方が考えている価値をきちんとパターン化していくことが重要です。それを促すために企業の皆様が動いていく、あくまでもクライアント(お客様)ファーストでやっていくということが私たちとしては大事であると思ってます。最後にぜひ心に留めていただけましたら幸いです。


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ウェビナー情報

ウェビナーテーマ:”勝ちパターン”の定義がカギ!N1起点での顧客理解+CRM推進メソッド
実施日:2025年3月
 
峯俊 洸大氏 写真

登壇者

株式会社クロス・マーケティング
データマーケティング部 マネージャー
峯俊 洸大



前職の調査会社でマスコミ、広告代理店、CVS、スポーツ団体等、幅広い業界担当のリサーチャーとして経験を積む。 クロス・マーケティング入社後は、クライアントのデータ活用を支援するデータマーケティング業務を担当。データ分析をベースにした顧客のCRM推進からTableau等のBIツールを通じたデータ活用環境の構築まで、複数の業界業種におけるクライアントのデータマーケティングを支援している。

 

 

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