インターネットの歴史|技術革新、普及の軌跡をたどる
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インターネットは今や生活の一部となっており、重要なインフラのひとつに数えられています。ここまで普及するまでに、どのような歴史をたどったのかを知れば、今後の展開や新たな施策のヒントが得られるかもしれません。そこで今回は、インターネット誕生から現在までの歴史を紹介します。
インターネットの歴史1|1980年代以前
まずはインターネットの始まりである、1980年代以前のトピックを紹介します。

インターネットの開発と普及
インターネットの起源は、1969年にARPA(Advanced Research Projects Agency:米国国防総省高等研究計画局)が軍事目的の通信網として開発したARPAnetだといわれています。1986年にはNSF(National Science Foundation:全米科学財団)がこれを引き継いで、NSFnetとして再構築しました。
日本のインターネットの起源は、1984年に始まったJUNET(Japan University/Unix NETwork)です。東京大学・東京工業大学・慶應義塾大学が研究用として構築しました。
電子メールなどの基本的なサービスが登場
1982年にはSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)が開発され、インターネットによる電子メール送信が行われるようになりました。
また、翌1983年には、DNS(ドメイン名システム)が開発されます。DNSとは、インターネットに接続している機器に割り振られるIPアドレスと、IPアドレスに紐づくドメイン名を変換するためのシステムです。インターネット通信には欠かせないもので、現在でも使われ続けています。

インターネットの歴史2|1990年代
続いて、インターネットの商用利用が始まった1990年代のトピックを紹介します。

商用解禁とWorld Wide Web(WWW)誕生
軍事目的で開発されたインターネットですが、アメリカでは1990年に加入制限がなくなり、商業利用できるようになりました。日本で商業利用が始まったのは1993年で、これを機にインターネットの利用者数が拡大していきます。
また、同時期の1991年には、世界初のWWW(World Wide Web)が登場しました。WWWは大量の情報を読み込み、Webブラウザに表示させる便利なシステムです。インターネット上のさまざまな情報をハイパーリンクでつなげ、容易にアクセスできるようにしています。
HTTP(Hypertext Transfer Protocol)によって、Webクライアント(主にWebブラウザ)のリクエストに対し、Webサーバー内の情報を転送します。
WWWによって情報共有が可能に
WWWは、Webページ内にあるリンクを介して、そのほかのWebページに移動できます。Webページ内にはテキストはもちろん、画像や音声なども掲載可能です。それらの情報を得られるようになったことで、インターネットは情報取得ツールから情報共有もできるツールになりました。
国内のインターネット普及が進む
インターネットの利便性が大幅に向上したことにより、日本国内でもよりいっそうインターネットの利用が拡大していきます。
情報通信白書によると、1997年時点の個人のインターネット利用率は9.2%でした。それが1999年には21.4%、2000年には37.1%と上がっていき、2023年には86.2%まで上昇します。テレホーダイやADSLが登場し、通信環境が向上したことも、インターネットの普及を後押ししました。

出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd21b120.html
インターネットの歴史3|2000年代
ここでは、現在のインターネットにつながる法律やサービスが数多く誕生した、2000年代のトピックを解説します。

「不正アクセス禁止法」施行
インターネットの利用者が増えるにつれて、インターネット上の情報を狙った悪質な行為や犯罪が増加しました。
その結果、2000年に「不正アクセス禁止法」が施行されます。この法律により、インターネットを介してIT機器やサービスを攻撃したり、IDやパスワードを不正に取得・悪用したりする行為が禁じられました。
Google、Amazonが国内でサービス開始
不正アクセス禁止法が施行された同年、インターネットの世界で圧倒的な地位を誇るGoogleが日本語対応の検索エンジンの提供を開始します。また、Amazonも書籍販売をスタートし、翌年にはビデオやCD、DVDも取り扱うようになりました。
IT基本法成立
2001年には、日本国家のIT戦略推進を目的に「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」が施行されます。内閣官房にもIT戦略本部が設けられ、世界最先端のIT国家となることを目指しました。
なお、IT基本法は後継法である「デジタル社会形成基本法」が成立したことにより、2021年に廃止されています。
ブロードバンド利用が飛躍的に進む
2000年代は、ブロードバンド利用が飛躍的に進んだ時代でもあります。始まりのADSL下り1MBも、誕生当初は高速と評価されていました。
しかし、2001年に8M・月額約4,000円の高速・低額な「Yahoo!BB」が登場したことで、ブロードバンド加入者が大幅に増加します。このころに家庭向け光回線や3Gの携帯電話なども登場し、インターネット活用の場が広がっていきました。
The Facebookリリース
2004年には「オンライン学生名簿」という位置づけで、The Facebook(現Facebook)がサービスを開始します。同年、日本国内では、日本発の招待制SNSであるmixiやアメーバブログなどがリリースされました。ここからSNSが幅広く普及していきます。
関連記事:「SNSの歴史とは?SNSの誕生から未来までをたどる」
日本語版の「YouTube」スタート
2005年になると、アメリカでYouTubeがサービスを開始します。2年後の2007年には、完全日本語対応のYouTubeが、日本国内でリリースされました。
iPhoneとAndroidの登場
日本で初めてスマートフォンが登場したのは、2008年7月のことです。アメリカでは前年の2007年6月に初代iPhoneが発売されていましたが、こちらは日本では販売されていません。第2世代となるiPhone3Gが、日本初のスマートフォンになりました。
さらに翌年の2009年7月には、日本初のAndroidスマートフォン「HT-03A」が登場します。
小さなボディでPCに引けを取らないほどインターネットを活用できるスマートフォンは、その利便性の高さから一気に利用者が拡大していきました。その結果、インターネット利用者も増加し、インターネット上での情報のやり取りも、より活発になっていきます。
Twitter(現X)リリース
2008年になると、すでに2006年にサービスを開始していたTwitter(現X)が日本語版をリリースします。引用RTやハッシュタグなどの機能が実装されたことで、情報拡散の手段としての価値が高まっていきました。

インターネットの歴史4|2010年代
続いて、インターネットの活用が急速に進む2010年代の動きを紹介します。

Instagram登場
Twitter(現X)の登場から2年後の2010年6月、AppStoreにてInstagramの提供が開始されます。提供開始から約3か月でユーザー数が100万人を超え、大人気のサービスとなりました。
LINE登場
翌年の2011年6月には、モバイルメッセンジャーアプリのLINEがリリースされます。
2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけに、メッセンジャーアプリの必要性が高まったことを受けて開発されました。多くの人のニーズに応えたLINEは、サービス開始から6か月で1,000万ダウンロードを達成しています。
IoT(Internet of Things)など多様化するインターネット
個人でもインターネットの活用が進むなか、家電や車、建物までもがインターネットとつながるIoT(Internet of Things)が進みます。その結果、従来の業務やデータの流れが大幅に変化しました。
ネット選挙が解禁
2013年4月には、公職選挙法の一部が改正されました。この法改正により、インターネットを利用した選挙運動が解禁されています。
DXの時代へ
2018年9月に、経済産業省がデジタル技術をビジネス再構築に活用することを推奨する「DXレポート」を発表しました。これ以降、ビジネス構築や意思決定、課題の明確化へのデータの活用や業務のIT化などが推し進められていきます。
出典:経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
日本のインターネット普及率83.5%に
2016年に、日本国内のインターネット利用率が83.5%に達します。インターネットに接続する端末はPCが58.6%、スマートフォンが57.9%とほぼ横並びです。ちなみに2023年時点ではPCが47.4%、スマートフォンが72.9%と、スマートフォンでの接続が圧倒的に多くなります。

出典:
総務省「平成29年版 情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc262120.html
総務省「令和6年版 情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/datashu.html#f00311
総務省「通信利用動向調査」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05a.html
関連記事:「【年代別】インターネット利用率を紹介!シニア層へのアプローチ方法についても解説」
動画中心のSNS「TikTok」リリース
2017年には、ショート動画メインのSNS「TikTok」が発表されます。2018年には、App Storeの無料アプリダウンロード数で1位を獲得しました。
日本のインターネット広告費が2兆円を超え、テレビを逆転
インターネット広告費は年々増加し、2019年には2兆円を突破してテレビメディアの広告費を超えました。それ以降テレビが逆転することはないまま差が広がり、2024年時点のインターネット広告費は3兆6,517億円(前年比109.6%)と、総広告費の47.6%を占めるまでに成長しています。
出典:
電通「2019年 日本の広告費」
https://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2020014-0311.pdf
電通「2024年 日本の広告費」
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2024/index.html
インターネットの歴史5|2020年以降
ここでは、現在のインターネットの使い方につながる2020年以降の動きを解説します。

コロナ禍の広がりでWeb会議システム普及
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、ZoomやMicrosoft TeamsといったWeb会議システムの利用が拡大しました。他者との接触を避けるために、電子決済の利用も増加しています。
「5Gサービス」開始
同じく2020年に、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社が5G通信サービスの提供を開始します。4Gを大きく超える高速通信が話題となりました。
生成AIの台頭
2022年に大きな話題をさらったのが、生成AI「ChatGPT」です。動画や音声、文章など、さまざまなものが生成可能で、発表からほんの2か月で「月間1億ユーザー」を獲得し、史上最速の成長と話題を呼びます。その後、他の生成AIも登場し、2023年は生成AI元年とも呼ばれることとなりました。
関連記事:「人工知能(AI)で未来はどう変わる?人工知能の現状と予測される変化」
Google検索にAI Overview登場
2024年には、Google検索の「AI Overview」が公開されます。ユーザーが検索した内容に対する回答をAIが自動で作成し、検索結果画面に表示する機能です。日本では2024年8月から利用が開始されました。
また、2025年5月には、アメリカで「AIモード」の提供が開始されています。これはAIが直接ユーザーに回答する機能であり、日本での導入時期は未定です。

まとめ
1960年代に開発されたインターネットは、人々の生活を大きく変化させ、利便性を向上させました。今後も新たな技術が登場すると考えられます。常に最新情報をキャッチアップし、日々の生活やビジネスに活用しましょう。