現代の「過保護化」がもたらす新たなインサイト「自律性消費」への移行
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株式会社クロス・マーケティング
コンサルティング本部 シニアコンサルタント
堀 好伸
生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。
生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。
「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。
著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ:https://www.nhk.or.jp/school/sougou/active10_process)
この記事は、2026年7月30日に開催されたセミナーの内容を基にポイントを解説しています。
先進消費者の解釈と現在のトレンドから読み解く ヒットの源泉を逆探知!「2〜3年先の新市場」の見つけ方
■はじめに:行き過ぎた「過保護」と謎の疲労感
現代社会は、快適な空調や便利家電、手軽な医療アクセスなど、生活者を外から守る「過保護」とも言える環境が整っています。 しかし、すべての不便が排除され、企業側が先回りして課題を解決する社会において、生活者は「自分の力を使っている実感」を失い、原因不明の疲労感や物足りなさを抱えているのではないでしょうか。 本コラムでは、2026年7月30日に開催したSEEDER様との共催セミナー「“過保護化”に焦点を当てる」の内容から、生活者の新たな消費価値観を紐解きます。■ 現在のトレンドに見る「コントロール感」への欲求
市場で注目を集めている3つのトレンドから、生活者の意識変化が見えてきます。
第一に「サウナ」です。ブームは落ち着きを見せていますが、月4回以上通うヘビー層は2024年度から大きく増加しています。 これは、単なる疲労回復の場から、自ら極端な環境(熱さと冷たさ)を選び、能動的に状態を切り替える「コントロール感」を得るための装置へと変化しているためです。
第二に「FMD(Fasting-Mimicking Diet)」です。 完全な断食ではなく、食事を摂りながら5日間だけ制限を設けるプログラムです。 食べ物が常時手に入る環境下で、あえて自ら期間を選んで制限を設けることが支持されています。
第三に「体質診断(漢方)」です。 クラシエ薬品様の「からだかがみ」のようなサービスは、曖昧な不調に対して唯一の正解を与えるのではなく、自分の言葉で状態を整理し、対処法を自ら選ぶための入り口として活用されています。
これらの共通点は、外部任せの即時解消ではなく、自らの状態に関与する「ケア」への移行です。
■ 先進生活者「トライブ」が示す未来の兆し
さらに、3〜5年先の未来を体現する先進生活者(トライブ)の行動にも同じ兆しが見られます。
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おてんばマダム:
年齢を理由にした過剰な補助や先回りを拒否し、あえて少し不便な状況や負荷のかかる生活を選ぶことで、自身の力を活用しようとするシニア層です。 -
インナービルダー:
画一的な健康法に頼らず、自身の身体の反応を観察しながら、食事や運動などを一つずつ試してチューニングしていく層です。 -
ドクターシューマー:
趣味や仕事など没頭したい領域のために、食事を合理化・インフラ化し、常に一定のパフォーマンスを保とうとする層です。
■ マーケティングへの示唆:「自律性消費」の設計
過剰な最適化やAIによるレコメンドは、短期的には便利ですが、顧客の受動化を招き、自らの好みを言語化する機会を奪ってしまいます。 その結果、市場は同質化し、ブランドへの深い愛着も育ちにくくなります。
これからのビジネスにおいて求められるのは、選択を顧客に完全に丸投げするのではなく、比較・判断するための材料を提示し、顧客自身が「自分でできた」という手応え(小さな達成感)を得られる設計です。 「削る場所」「委ねる場所」、そして「いつでも戻れる安全網」の3点をセットで再設計し、顧客の自己選択を後押しする「自律性消費」のモデルこそが、次なるヒットの源泉となるでしょう。
