インサイトスコープ

蚊とり線香で新しい価値の提供を第2回 キーワードは「長持ち」と「香り」

Facebook X
森 繁弘
アース製薬 デジタルマーケティング部 研究開発本部 商品企画部
商品企画課 課長

森 繁弘

アース製薬は効きめを第一としながらも、消費者が使い方を間違わないか、使いやすいものであるかということを重視し、「お客さま目線の商品開発」を合言葉に開発に取り組んでいるメーカーです。

「香り」商品増加のトレンドに着目

アース製薬は効きめを第一としながらも、消費者が使い方を間違わないか、使いやすいものであるかということを重視し、「お客さま目線の商品開発」を合言葉に開発に取り組んでいるメーカーです。

前回でも触れた通り、蚊とり線香においてナンバーワンを獲得することは私たちの大きなテーマです。そのため、商品開発にはずっと注力してきました。もっとも、殺虫効果は「あって当然」のものであり、蚊とり線香に関しては各ブランド間でベースの原料に大きな差もなく、効果・性能という点での差別化は難しい状況です。

そこで、シェアを獲得するために最初に手を付けたのが価格戦略です。他社よりも手に取りやすい価格帯にしたのですが、すでにでき上がったブランドイメージを破るまでには至りませんでした。

次に取り組んだのは大型化です。渦巻のサイズを大型化して、時間にして約1.7倍長持ちするようにしました。競合も長持ちタイプの商品は投入してきましたが、価格が高くなりすぎて手を出しにくい価格帯になっていました。私たちは先に低価格化を進めていたこともあり、売上げを伸ばすことができました。

次なる手として、蚊とり線香独特の煙の臭いに抵抗がある人がいるのではないかということで、煙の臭いを抑える研究も続けていました。その成果として、2010年頃には煙の臭いを消す技術ができ上がりました。

当時、香りつき柔軟剤のブームを受けて、ほかの日用品でも香りをつけることがトレンドになっていました。私たちも煙の臭いをただ消すだけではなく、香りをつけることでアピールする商品があってもいいのではないかということで開発を進め、2012年にバラの香りをつけた商品を発売しました。

これがヒットしたことを受けて、第2弾のお茶の香り「アロマグリーン」、第3弾にラベンダーの香りを発売するに至りました。2015年には新たにカモミールの香りを発売しています。

他社も追随、本当の勝負はここから

実はかつて、煙の臭いと刺激を抑えた商品を販売していたのですが、当時は「煙が少ないことでお部屋を汚さない」ことを訴求していたものの、お客様に響かず、店頭でのインパクトも打ち出せずに失敗したという苦い経験がありました。そこで、今回は香りをメインに訴求するとともに、店頭で消費者の目に止まって手に取ってもらえるように、バラはピンク、ラベンダーは紫、お茶はグリーンといったように、香りとパッケージカラーを関連づけたインパクトのある商品として打ち出しました。
 
 
20150821_02
 
 
通常の蚊とり線香の白と緑を基調としたパッケージが並ぶ売り場に、明るい色が加わったことで、視覚的にも目に入りやすいという効果があったと思います。小売店側も売り場が華やかになったということで好意的に受け入れてもらうことができました。今年発売したカモミールは、すでにあるピンク、紫、グリーンとある中に、夏らしく涼しげな色を投入しようということで展開しています。他社からも香りのついた商品が出てきており、このカテゴリーも競争が激しくなっています。

長持ちタイプと香りつきタイプの発売で、蚊とり線香に新しい価値を加え、売上も伸ばすことができました。シェアに関しても、かつてはトップブランドの足元にも及びませんでしたが、現在はトップブランドが約50%ほどに対し、私たちが約30%と、ようやく背中が見えてくるほどまでに差を詰めることができました。そして、ここからが勝負だと感じています。

次回は、広告展開や今後についてご紹介します。

おすすめのコラム

デジタルマーケティングコラム

世界スマホシェア率を日本と比較|人気のOSやメーカーは?

アプリ開発企業のマーケティング担当者の中には、世界のスマートフォンシェア率が気になっている方もいるでしょう。人気のOSやメーカーなどに関して、世界全体と日本との傾向の違いを把握しておくことで、マーケティングに活かせる面もあるかもしれません。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介

「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう

今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介

近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説

結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

就職氷河期世代の年齢とは?世代の特徴や背景、現状を解説

バブル崩壊後の不況に直面しながら社会に出た「就職氷河期世代」。厳しい雇用環境により正社員になれず、現在もキャリアや生活に課題を抱える方が少なくありません。今回は、マーケティングに役立つ視点から、就職氷河期世代の年齢や背景、特徴、そして現状についてわかりやすく解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!

ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

パン派・ごはん派の割合|身体に良い方はどっち?

日本の主食といえば、ごはんですが、パンを好んで食べる方が増えているのも事実です。実際は、パン派とごはん派のどちらが多いのでしょうか。また、体にとって良いのはどちらなのでしょうか。 今回は、パン派とごはん派の調査結果と身体に良い主食について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

推し活の経済効果はどれくらい?市場規模と推し活マーケティングのメリットとは

若年層に適確なアプローチができないなど、従来のマーケティング手法に限界を感じてはいませんか。商品やサービスのターゲットとして、「推し活に力を入れる消費者」に絞る方法もあります。 推し活とは、推し(お気に入りのキャラやアイドルなど)を応援する活動のことです。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード