ペルソナ設定の時代は終わった?現代のマーケティングにおけるペルソナ活用法
公開日:
ペルソナ設定は、マーケティング戦略の手順のなかでも重要な要素であるといわれてきました。しかし、最近では「もうペルソナ設定の時代は終わった」という見方も出てきました。なぜペルソナ設定の時代は終わったといわれるのでしょうか。今回は、ペルソナ設定が終わったといわれる理由や現代のマーケティングでペルソナを活用する方法を紹介します。
「ペルソナ設定の時代は終わった」といわれる理由
ペルソナ設定の時代は終わったといわれる理由にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その理由を紹介します。
顧客のニーズが多様化しているから
ペルソナとは、製品やサービスを利用する具体的な人物像のことです。性別や年齢、属性などを設定し、マーケティングに活用します。ペルソナを細かく設定することでニーズを把握し、ターゲットに響く広告を打ち出して新規顧客の獲得を目指します。
しかし、近年では消費者のニーズや購買のきっかけが多様化し、購買行動自体も複雑になっています。そのため、ペルソナという枠に収めることが難しく、従来通りのペルソナ設定では捉えきれない場合もあります。
同じ年齢や性別、属性でも、価値観が一様とは限らない社会になりつつあるため、ペルソナ設定は時代遅れといわれることがあります。
AIの発展によりターゲティング精度が向上したから
近年はAIが急速に発展しており、広告業界でもAIを用いたマーケティングが台頭し始めています。AIの活用によってターゲティングの精度が向上し、一人ひとりの顧客に合った広告配信を綿密に行うことができるようになりました。
特定の顧客の消費行動履歴をもとに、趣味や嗜好に合った製品やサービスを紹介することも可能です。レコメンド機能や自動広告配信の機能を活用することで、より効率的に情報を届けられます。さらに、リアルタイムで分析して配信できる広告も増えているため、マーケティングの精度が向上しています。

そもそもペルソナ設定の目的とは
ペルソナを設定する目的は、自社の製品やサービスを買う顧客のニーズを読み取り、より嗜好に合ったものを開発することです。特定の製品やサービスを利用する人物像を細かく設定すれば、その人物にとって魅力的な製品やサービスを提供することにつながります。
また、社内で統一した顧客像を共有できる点もメリットです。同じ製品やサービスでも、従業員ごとに想定する顧客像が異なると、マーケティングや製品開発の精度は低下してしまいます。そのため、漠然としたターゲット設定では不十分です。
同じ顧客像を共有することで、全社一丸となって製品やサービスの訴求力を高められます。結果として、新規顧客の獲得や売上向上も期待できるでしょう。
ペルソナマーケティングのメリットについてもっと詳しく知りたい方は下記の記事をご参照ください。
ペルソナ設定が必要になるタイミング
ペルソナ設定が時代遅れといわれることがあっても、有効に活用できる場面は多くあります。ここでは、ペルソナ設定が必要になるタイミングについて解説します。
訴求力の高い広告戦略を打ち出すとき
ペルソナが明確に設定されていない広告は、誰に向けたものなのかわかりにくくなりがちです。万人受けを狙った広告では、企業が本当に伝えたい層に響きにくく、効果も期待できません。
訴求力の高い広告戦略を展開するには、ペルソナ設定が不可欠です。ペルソナは、実際の顧客の声やユーザーデータをもとに作成し、設定が細かいほど精度の高い顧客像が完成します。これにより、マーケティングの効果が最大化できます。
特定の製品やサービスを強く訴求したい場合、ユーザーのニーズや嗜好を正確に把握するためにもペルソナ設定が欠かせません。適切なペルソナ設定によって、ユーザーが本当に求めているものがわかり、スムーズなマーケティング活動につなげられます。
製品やサービスが売れない・利用されないとき
製品やサービスの売れ行きや利用状況が悪化している際も、ペルソナ設定が役に立ちます。予測を下回った原因を探るには、ペルソナを活用するのが有効です。
ユーザー数や売れ行きが伸びない原因として、ターゲットに情報が届いていない、届いていても魅力を感じてもらえてないことが考えられます。ペルソナ設定をすることで、ユーザー目線で製品やサービスの問題点を分析できます。
ペルソナ設定をせずに問題点を改善しようとすると、広告の見直しが必要なのか、製品やサービス自体を見直すべきか、判断が難しくなるでしょう。
問題点を的確に特定し、よりターゲットのニーズに合った改良を行うには、ペルソナをもとにした分析が重要です。
新しい商品サービスを開発するとき
新たな製品やサービスを開発するときも、ペルソナ設定は有効です。ペルソナを設定することで、利用シーンや目的を明確にでき、ユーザーのニーズに沿った開発がしやすくなります。
ペルソナ設定をせずに開発を進めると、ユーザーのニーズとずれが生じ、想定より売れないこともあります。売れ行きが低迷すれば、開発にかけた時間とコストが無駄になる可能性があるため、こうした事態を防ぐためにもペルソナ設定は必要不可欠です。

現代のマーケティングでペルソナをうまく活用するには
消費行動が多様化している現代において、ペルソナ設定を上手に活用してマーケティング活動を行うことが大切です。ここでは、時代が変化するなかで成果につながる「データドリブンペルソナ」について解説します。
データを収集する
ペルソナ設定には、データ収集が不可欠です。Webサイトに登録された顧客情報からは、居住地域や年齢、性別などの定量データを取得できます。加えて、ユーザー生成コンテンツから得られる定性データも欠かせません。
ユーザー生成コンテンツとは、ユーザー自身が発信するSNSの投稿や口コミのレビューを指します。これらのコンテンツには、潜在的なニーズや消費行動のパターンなど、マーケティングに役立つ情報が含まれているため、定性データとして活用することが可能です。
また、購買行動を起こす前に口コミなどを検索するユーザーも非常に多いため、SNSの投稿やレビューは他のユーザーの購買意思決定にも影響を与えます。書かれている内容を分析し、課題があれば製品やサービスを改善しましょう。
収集したデータを分析する
集めたデータは、適切に分析しなければ意味がありません。大量のデータを処理するには、解析ツールやテキストマイニングツールが必要です。
アクセス解析ツールを使えば、ユーザーの消費行動パターンを分析できます。一方、テキストマイニングツールでは、SNSの投稿や口コミからユーザーの声を抽出できます。これらのツールを活用し、顧客層や市場の動向を把握しましょう。
テキストマイニングツールのメリットは、大量のデータを瞬時に分析できる点です。リアルタイムでデータを取得し、分析結果に基づいたマーケティングの調整を迅速に行えます。

分析したデータをもとにペルソナを設定し活用する
収集したデータをもとに設定したペルソナは、「データドリブンペルソナ」と呼ばれます。膨大なデータを瞬時に解析し、リアルタイムの情報をもとにペルソナを設定できるため、消費行動や時間の経過に伴うニーズの変化にも柔軟に対応できます。
データはユーザーが入力した事実に基づくため、企業側の主観が入りません。顧客のリアルな声や行動を客観的に把握できるため、より精度の高いペルソナ設定が可能です。これにより、企業側の認識と顧客側の実際のニーズとのずれを抑えられます。精度の高いデータドリブンペルソナを構築するには、幅広いユーザーからバランスよくデータを収集することが重要です。
また、従来のマーケティングでは、顧客の趣味嗜好やライフスタイルなどの定性的な特徴をもとに設定した感情ペルソナが重要視されてきました。しかし、今後は顧客の具体的な行動データをもとにした、行動ペルソナも視野に入れる必要があります。これらを効果的に活用し、マーケティングの精度を高めていくことが求められています。
まとめ
消費者の購買行動や消費に関する価値観の多様化によって、ペルソナ設定も一筋縄ではいかない現状です。あらゆるものが多様化する現代において、ペルソナ設定は時代遅れとする見方も出てきました。
しかし、従来のペルソナ設定は製品やサービスの改善や訴求力を高めたいときに有効です。感情ペルソナとデータドリブンペルソナ(行動ペルソナ)を上手く活用しながら、マーケティングの精度を高めましょう。
