ニッパチの法則とは?概要からマーケティングにおける活用例まで解説
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「ニッパチの法則」は、ビジネスや経済の場面でも注目されています。とはいえ、実際にどのように仕事へ活用できるのかイメージがわかない方もいるでしょう。今回は、ニッパチの法則の概念や、日々の業務やマーケティングに活かすための方法について事例を交えて解説します。
ニッパチの法則とは?
ニッパチの法則をマーケティングに活かすためには、まずは法則の基本を知ることが大切です。ここでは、ニッパチの法則の概念や具体例について解説します。
ニッパチの法則の概要
ニッパチの法則(2:8の法則)とは、全体の結果の大部分(8割)は、それを構成する要素の一部(2割)によってもたらされるという原則です。パレートの法則とも呼ばれています。
経済学者のヴィルフレド・パレートが、ヨーロッパの所得統計を分析した結果発見したといわれており、一部の要素が全体に対して大きな影響力をもつということを示しています。ビジネスの現場においてニッパチの法則の視点を取り入れることで、注力すべき顧客や効果的な施策を絞り込み、効率的なマーケティング戦略の立案に役立てられるでしょう。
ニッパチの法則の具体例
ニッパチの法則は、マーケティングの領域だけでなく、品質管理、在庫管理、売上データを分析する視点、経済以外の自然界の出来事や社会的な現象にも当てはまると考えられています。ここではいくつかの具体例(※)を紹介します。
※各領域における傾向の例であり、必ずしも実際の統計結果に基づいたものではありません。
・マーケティングにおける具体例
・売上の8割は、顧客の中で特に重要な2割の層によってもたらされる傾向がある
・Webサイトのアクセス数全体の8割は、公開されているコンテンツ全体の2割に集中している
・主要な2割の業務内容を見直すことで、全体の業務効率が8割向上する可能性がある
・経済における具体例
・国の税収の8割は、所得の高い2割の人々の納税によって成り立っている
・特定の業界において、利益全体の8割は2割の大手企業が生み出していることが多い
・全座席数の2割に特別な価値を付加したシートを設けることで、残り8割の一般席の価格設定に柔軟性をもたせることができる
・品質管理における具体例
・顧客からの苦情の8割は、特定の2割の製品に集中する傾向がある
・品質検査で検出される不良品の8割は、特定の2割の部品の不具合によって生じている場合が多い
・生産ラインの停止時間の8割は、重要な2割の設備の故障が原因となっている場合が多い
・自然現象における具体例
・年間の降水量の8割は、年間通して2割の集中的な降雨日によってもたらされる
・森林が吸収する二酸化炭素の8割は、樹齢を重ねた2割の巨大な樹木によって行われている
・過去の火山噴火でみられた噴出物の総量の8割は、2割の大規模噴火によってもたらされた
・日常生活における具体例
・週末の時間の8割は、親しい2割の友人との交流に費やされることが多い
・所有している洋服全体の8割は、お気に入りの2割のブランドアイテムで占められている
・日常的な連絡の8割は、特定の2割の人との間で頻繁に行われている
・スーパーでの支払い金額の8割は、普段から繰り返し購入する2割の商品によって占められている
・スマートフォン利用者の8割の頻度を占めているのは、2割の頻繁に使用するスマートフォンの機能である

ニッパチの法則に似ている法則
ニッパチの法則は、全体の2割が大きな影響力をもつとされていますが、ほかにもこの考え方に似た法則があります。ここでは、ニッパチの法則に似ている法則を紹介します。
ユダヤの法則(78:22の法則)
「ユダヤの法則」あるいは「78:22の法則」は、世の中の事象は特定の割合で構成されているという考え方です。この比率は、日常生活のさまざまな場面に現れています。
例えば、体内の水分とそれ以外の成分や、地球の表面における海と陸地の割合など、「78:22」に近い割合で構成されている要素が多く存在します。また、ユダヤの人々は、この法則性を金融ビジネスに応用し、預金者と借金者の比率を意識的に78:22に近づけることで、銀行業を発展させたとも伝えられているのです。
働きアリの法則(2:6:2の法則)
働きアリの法則は、ニッパチの法則をさらに掘り下げた考え方といえます。これは、アリの群れにおける行動特性に着目したものであり、下記のように分類されます。
・2割:よく働き、際立って貢献する
・6割:平均的な働きをする
・2割:あまり積極的に働かない
ただし、上位2割の働きアリだけを集めたとしても、長期的にみるとその集団内でも同様の割合に分かれるといわれています。母集団を変えても結局は、「2:6:2」の割合に推移していくのです。

マーケティングにおけるニッパチの法則の活用例
ニッパチの法則を実際の業務でどのように活用できるのか、気になる方もいるでしょう。ここでは、マーケティングにおけるニッパチの法則の活用例を紹介します。
施策の戦略立案
既存の顧客や製品データを、受注日や売上額の高い順に整理してみると、特定のパターンが見えることがあります。例えば、顧客全体の2割が総売上の大部分を占めており、製品ラインナップのうち2割の商品が売上の多くを生み出していることがあるのです。
この2割をさらに強化するのか、あるいは残りの8割の受注や売上を底上げするかは、各企業の戦略によって異なります。とはいえ、ニッパチの法則に基づいて受注企業や製品の構成比率を分析することで、次の施策を検討しやすくなるでしょう。
Web広告の改善
Web広告戦略においてニッパチの法則を応用すると、リソース配分の最適化につながります。例えば、検索広告を通じて購買意欲の高い2割のユーザーに訴求し、潜在的なニーズをもつ残りの8割のユーザーに対しては、ディスプレイ広告などを通じて段階的なアプローチを行うといったイメージです。
さらに、ニーズが高いと考えられる2割のユーザーをペルソナとして定義し、その特性に合わせてキーワードを選定します。より魅力的な広告文を作成することで、Web広告の効果を高められるでしょう。
Webサイトの改善
Webサイトの改善においても、ニッパチの法則を意識することで、効果的なアクションプランを策定できます。Webサイトの成果を左右する2割の要素を特定し、それらを重点的に改善することで、労力を最小限に抑えながらWebサイト全体のパフォーマンスを向上させることが可能です。
重要度の高い2割を改善することで、残りの8割の改善と同等のインパクトをもたらす可能性があるという考え方に基づいています。

ニッパチの法則を活用する際の注意点
ニッパチの法則を業務にスムーズに取り入れるために、注意点も確認しておきましょう。
8割の存在を軽視しない
ニッパチの法則を考慮すると、全体のうち上位2割に注目しがちですが、残り8割を軽視してはいけません。例えば、小売業において、残り8割の商品が将来的に収益につながる商品へと成長する可能性もあるからです。また、幅広い品揃えは、ビジネス全体の印象を良くする効果も期待できます。上位2割の商品ばかりを重視し、そのほかの商品を放置すると、結果として全体的な売上不振を招くことにもなりかねません。
ニッパチの法則は、一般的な傾向を示すものであり、その背景は個々のケースで異なります。重要なのは、上位2割だけでなく、全体を分析し偏りのない視点をもつことです。
ニッパチの法則は完璧ではない
ニッパチの法則はさまざまな場面で応用できますが、絶対的なものとして捉えるのは賢明ではありません。状況によってはニッパチの法則が必ずしも当てはまるとは限らず、「ロングテールの法則」という視点を取り入れることも大切です。
ロングテールの法則とは、主にインターネット販売において、売れ筋商品(上位2割)よりも、残りのニッチな商品群(8割)が生み出す売上のほうが大きくなるという考え方です。売れ筋商品を恐竜の頭、そのほかの商品を長い尻尾に見立てて「ロングテール」と表現しています。
インターネット販売では実店舗と異なり在庫スペースに制限がないため、売れない商品群であっても販売数を積み重ねることで売上が大きくなりやすいのです。
まとめ
ニッパチの法則とは、全体の成果の8割を特定の2割の要素が生み出しているという考え方です。マーケティングにニッパチの法則を活用することで、ビジネスを成功に導くことが可能になるでしょう。ただし、法則に固執することなく、状況に応じて柔軟に活用していきましょう。