パーソナライズされた広告とは?活用するメリット・デメリット
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インターネットやSNSを利用していると、自分の興味関心に合った広告が表示されることがあります。これは「パーソナライズされた広告(パーソナライズド広告)」と呼ばれ、ユーザーの検索履歴や閲覧履歴、購買履歴などのデータをもとに、最適な広告を配信する仕組みです。
企業にとっては広告の効果を高め、ユーザーにとっては自分に合った商品やサービスを見つけやすくなるメリットがありますが、活用に際しては注意したいデメリットも存在します。そこで今回は、パーソナライズされた広告とは何か、活用するメリット・デメリットについて解説します。
パーソナライズされた広告(パーソナライズド広告)とは
パーソナライズされた広告とは、ユーザーの行動や関心に基づいて表示される広告のことです。ユーザーがインターネット上で閲覧したサイトや検索履歴、購入履歴、SNSでの活動などから得られるデータを利用して、特定のターゲットに関連性があると思われる商品やサービスを提案します。
そして、この仕組みを利用したWeb広告を「パーソナライズド広告」と呼びます。広告配信会社に蓄積された個人データをもとに、ユーザーが関心を示す可能性の高い商品・サービスの広告を配信することで、従来の一律な広告よりも効果的にユーザーの興味を引くことが可能です。
ユーザーにとっては、興味のある商品やサービスの広告が表示されるため、情報収集の手間が省けます。このように、企業・ユーザーの双方にとってメリットがあるのがパーソナライズド広告です。
下記では、パーソナライズド広告の仕組みや非パーソナライズド広告(NPA)との違いについて解説します。
パーソナライズド広告の仕組み
パーソナライズド広告は、Webサイトの閲覧履歴や検索履歴、購入履歴、SNSでの「いいね」やフォロー情報、位置情報などのデータを収集し、それをもとにAIやアルゴリズムがユーザーを分析・分類して広告を表示する仕組みです。
例えば、あるユーザーがオンラインショップで「ランニングシューズ」を検索すると、後日、別のサイトで「ランニングシューズの特別セール」の広告が表示されることがあります。これは、広告システムが「このユーザーはランニングシューズに興味を持っている」と判断し、関連する広告を配信するためです。
非パーソナライズド広告(NPA)との違い
非パーソナライズド広告(NPA)は、ユーザーの過去の行動データを利用せず、コンテンツの内容や一般的なターゲット層(地域や時間帯など)に基づいて広告を配信します。そのため、広告用のデータ収集を拒否するユーザーに対しても、プライバシーを尊重しながら広告を表示させることが可能です。
パーソナライズド広告と比べてターゲットが絞り込めないため、広告のクリック率や購入率は下がる可能性があります。しかし、特定のユーザーに依存せず、広範囲に広告を配信できることから、ブランドの認知度を高めたい企業に向いている手法です。
パーソナライズド広告を活用するメリット
パーソナライズド広告を活用する場合は、ユーザー視点のメリット・デメリットを知っておくことで、より効果的な広告戦略が立てられます。下記では、パーソナライズド広告を活用するメリットについて、ユーザー視点と広告主視点の双方を紹介します。
ユーザー視点のメリット
パーソナライズド広告を活用すれば、自分の興味関心に合った広告を受け取ることができ、新しい製品やサービスを知る機会が増えます。例えば、ランニングが趣味の人には最新のランニングシューズやウェアの広告が表示されるため、自分に合った商品を効率良く見つけることが可能です。
また、自分では気づいていなかった潜在的なニーズを発見することもあり、例えば「家でのトレーニング方法を知りたい」と考えていた人が、フィットネスアプリの広告を通じて新しいトレーニングプランを見つけることもあります。
実際に消費者庁の調査によると、消費者の約50%がネットで商品を購入する際に、上位表示される商品やプラットフォームのおすすめを参考にしていると回答しており、パーソナライズド広告が購買行動に影響を与えていることが分かります。
出典:消費者庁「デジタル・プラットフォーム利用者の 意識・行動調査 (概要)」
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_system_cms101_200520_02.pdf
広告主視点のメリット
パーソナライズド広告を活用することで、広告主は適切な潜在顧客にリーチでき、商品の認知を効率良く広げられるメリットがあります。
従来の広告では、不特定多数に向けて配信されるため、興味のないユーザーにも表示されて広告の効果が薄れることがあります。しかし、パーソナライズド広告であれば、過去の検索履歴や購買履歴などのデータを活用することで、関心の高いユーザーに絞って広告を届けることが可能です。
例えば、アウトドア用品を販売する企業が、登山関連のサイトを頻繁に閲覧しているユーザーに広告を配信すれば、関心のない人に比べて広告の反応率が高まり、より効果的な訴求ができます。
また、パーソナライズド広告は、広告配信の費用対効果(ROAS)を最適化できる点もメリットです。無関係なユーザーへの広告表示を減らし、購入の可能性が高いユーザーに集中して広告を配信できるため、広告費を無駄にせず、より高い成果を得られます。
パーソナライズド広告を活用するデメリット
一方、パーソナライズド広告の活用にはデメリットもあります。ユーザー視点、広告主視点の双方を紹介します。
ユーザー視点のデメリット
パーソナライズド広告を活用するデメリットは、自身のニーズの変化を汲んだ広告が表示されないことです。例えば、ユーザーが一時的にベビーカーを検索して購入した後も、しばらくの間ベビー用品の広告が表示され続けることがあります。すでに購入を完了して関心がなくなったにもかかわらず、過去のデータに基づいた広告が配信され続けてしまいます。
また、パーソナライズド広告は、ユーザーの行動履歴や興味関心をもとに最適化されるため、特定のジャンルの広告ばかりが表示され、新しい情報や異なる分野の製品・サービスに触れる機会が減りやすい点もデメリットです。
広告主視点のデメリット
パーソナライズド広告は精度の高い広告配信が可能である反面、ターゲット層が限定されて新規顧客の獲得が難しくなる点がデメリットです。
例えば、アウトドア用品を販売する企業が過去の購買データをもとに広告を配信しても、すでに興味を持っている人の範囲内で広告が表示されるため、新たな層へリーチする機会を失い、結果的に市場の拡大が難しくなることがあります。
また、パーソナライズド広告は過去のデータに依存しているため、変化し続けるユーザーのニーズには対応しづらい点もデメリットです。例えば、一時的に賃貸物件を検索したユーザーに、しばらくの間空き物件の広告が表示され続けると、不要な広告と感じられる可能性があります。
さらに、広告の出し方によっては、ユーザーに不快感を与えてしまうリスクも否定できません。一度自社ブランドに対して嫌悪感を持たれると、その後の購買活動が低下し、最終的には顧客離れにつながることも考えられます。
パーソナライズド広告を配信できるプラットフォームの例
パーソナライズド広告を配信できるプラットフォームには何があるのでしょうか。下記では、代表的なプラットフォームを3つ取り上げて解説します。
Googleの主な広告メニューには、検索連動型広告(Google検索結果に表示される広告)、ディスプレイ広告(Webサイトやアプリに掲載されるバナー広告)、YouTube広告(動画広告)、ショッピング広告(Googleショッピングに表示される広告)、アプリ広告(アプリのダウンロード促進を目的とした広告)などがあります。
これらの広告は、Googleが収集するユーザー情報をもとに、ターゲットに最適な形で配信されます。
Googleが利用するユーザー情報は主に、検索履歴、閲覧履歴、位置情報、使用デバイス、アプリの利用履歴、広告のクリック・閲覧履歴、Googleアカウントの登録情報(年齢・性別・興味関心)などです。例えば、ユーザーがGoogle検索で「ランニングシューズ」と調べた場合、後日YouTubeを視聴している際にスポーツブランドのシューズ広告が表示されることがあります。
Amazon
Amazonは、主にECサイト内での購買行動データを活用して広告を配信します。
Amazonの広告メニューは主に、スポンサープロダクト広告(検索結果や商品詳細ページに表示される広告)、スポンサーブランド広告(ブランドロゴや複数の商品を掲載できる広告)、スポンサーディスプレイ広告(Amazon内外のWebサイトやアプリに表示される広告)、ストア(ブランドのストアページを作成して商品を紹介できる広告)です。
Amazonが利用するユーザー情報には、商品検索履歴、閲覧履歴、購入履歴、カートへの追加履歴、ほしい物リストの登録情報、レビューや評価の投稿履歴、プライム会員情報、配送先の地域データなどが含まれます。例えば「ワイヤレスイヤホン」を検索したユーザーには、Amazonのトップページや商品ページで、関連するイヤホンやアクセサリーの広告が表示されることがあります。
X(旧Twitter)
Xの広告メニューには、プロモ広告(タイムラインや検索結果に表示される広告ツイート)、フォロワー獲得広告(特定のアカウントをフォローするよう促す広告)、X Amplify(動画コンテンツに企業の広告を挿入)、X Takeover(Xのトップページやトレンド一覧の最上部に広告を表示)などがあります。
Xが利用するユーザー情報は主に、ツイートの内容、いいね・リツイートなどのエンゲージメント履歴、フォローしているアカウント、検索履歴、位置情報、デバイス情報、IPアドレス、閲覧した広告の履歴などです。
例えば、ユーザーが頻繁に「サッカー」についてツイートしている、あるいはサッカーショップ関連のアカウントをフォローしている場合、サッカー用品の広告がタイムラインや検索結果に表示されることがあります。
まとめ
パーソナライズされた広告(パーソナライズド広告)とは、ユーザーの興味関心や行動履歴をもとに、最適な広告を配信する仕組みのことです。パーソナライズド広告を活用すると、ユーザーは自分に合った商品やサービスを効率良く見つけられ、広告主もターゲットに的確にリーチし、費用対効果を高められます。とはいえ、ユーザーニーズの変化に対応しにくい点や新たな層へリーチしにくい点など、注意点もあるため、導入するかどうかは慎重に検討してみてください。