グローバルコラム

インドネシアの揚げ物文化と病

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 インドネシアは17,500もの島々に350の多様な民族が暮らしているため、食も多様性に富み、地域の風土、住民のルーツにより、特色ある郷土料理は潤沢です。食の地域性があるものの、インドネシアのどこへ行ってもゴレガン(gorengan=揚げ物の意。ゴレン goreng=揚げるの意)に出会わないことはなく、インドネシアの食生活に切り離せない存在になっています。

多種多様な揚げ物

 日本では揚げ物というと、天ぷら、鶏の唐揚げ、コロッケ、とんかつ、揚げ豆腐などが思い浮かびますが、一日に何度も揚げ物を食するのは健康管理上のこともあり、稀かと思います。中には揚げ物三昧の人もいますが。

 ゴレガンの種類をざっと挙げると、タフ・ゴレン(揚げ豆腐)、アヤム・ゴレン(鶏の唐揚げ)、レレ・ゴレン(揚げナマズ)、ルンピア・ゴレン(春巻き)、イカン・ゴレン(揚げ魚)、ウダン・ゴレン(揚げエビ)、ピサン・ゴレン(揚げバナナ)、マルタバッ(お好み焼き)、オンデ・オンデ(揚げ団子)、シンコン・ゴレン(揚げキャッサバ)、カチャン・ゴレン(揚げピーナッツ)・・・など切りがなく、900を超える調理方法があるようです。タフ・ゴレン(揚げ豆腐)も日本と同様のものから、中をくり抜いて詰め物をしたものまで多種にわたります。ピサン・ゴレン(揚げバナナ)もソース、トッピングが多様です。

 原材料のシンコン(英語ではキャッサバと呼ばれるイモ類。根に含まれるでんぷん質をタピオカにして食べる。外見は日本の野菜ではサツマイモに近い)にエビ、魚、唐辛子、ハーブ、豆などを加え乾燥させたチップ状のクルプック(せんべい)は、揚げて食事の付け合わせ、おやつとして食され、インドネシアの常用、常備食になっています。果物も生で食べるほかにバナナ、ナンカ(ジャックフルーツ)、サツマイモなどを揚げたチップが溢れています。

 魚は油を塗って焼き、サンバル(辛味調味料)というインドネシア料理に欠かせない調味料を作るにもたっぷりの油を使って揚げ炒めます。日本のシラスに似たインドネシアの小魚であるトゥリは油で揚げたご飯の伴になります。揚げ物が多いのは素材と調理法から中国文化の影響を受けているのと、インドネシアがヤシ油の大量生産国であり、低価格ということが大いに関係しています。
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ナシ・ゴレンに必ず添えられるクルプック(せんべい)

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露店で売られる様々な揚げ菓子

揚げ物の誘惑

 インドネシアを廻っていると、揚げ物を目にしない日はありません。こんなに揚げ物を食していて健康を害さないのかと心配になりますが、小腹を満たすのに、どうしても手軽に早く食べられる揚げ物につい手が出てしまいます。道端のワルン(露店)、カキリマ(移動式屋台)で売られ、いつでも手に入るし、安価なところも誘惑材料になっています。

ゴレガンと病の関係

 20年ほど前、バリ人の医者にインドネシア人の病について聞いたところ、一昔は無かった肥満、心臓病、糖尿病、癌がすでに増加の傾向にありました。2013年のインドネシア保健省の統計によると、死因で一番多いのが脳卒中、脳溢血などの脳血管障害で、2007年1,000人に8.3人だったが、2013年には12.1人に増えていました。死因の2位が心臓病、3位が肺結核、4位が肺疾患、5位が糖尿病、6位が高血圧合併症となっています。
 食生活の偏り、運動不足、ストレス、喫煙など生活の乱れ、高脂血、不整脈、肥満、メタボなどが脳卒中の危険因子を引き起こし、悪化するといわれています。インドネシア人の食生活の改善はなかなか難しいようです。ゴレガンの多食と習慣性が病の起因だと自覚しても、なかなかゴレガンの誘惑に勝てないのが現状です。
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露店で売られる自家製揚げ菓子

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ナシ・ゴレンに必ず添えられるクルプック(せんべい)

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