なぜ「認知度の向上」や「機能アピール」 だけでは選ばれなくなったのか?
公開日:
株式会社クロス・マーケティング
コンサルティング本部 シニアコンサルタント
堀 好伸
生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。
生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。
「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。
著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ:https://www.nhk.or.jp/school/sougou/active10_process)
はじめに:「知っている」「優れている」の先で、選択は決まる
「認知度は上がっているのに、指名買いにつながらない」
「品質や機能には自信があるのに、競合との違いが伝わらない」
ブランドづくりの現場では、こうした悩みが起こります。
認知を高めることも、商品・サービスの強みを磨くことも欠かせません。
しかし、生活者が日々多くの情報と選択肢に触れる環境では、「知っている」「高品質」「高機能」という事実だけで、特定のブランドを選ぶ理由までつくることは難しくなっています。
必要なのは、企業が伝えたい強みを増やすことではなく、その強みが生活者にとってどんな意味を持つのかまで捉え直すことです。
1.認知は「選択肢に入る条件」であって、「選ばれる理由」ではない
認知が高まれば、検討してもらえる可能性は広がります。ただし、「名前を知っている」状態と、「このブランドを選びたい」状態は同じではありません。
広告やSNSで何度も見たことがある。店頭で商品を見かけたことがある。ブランド名も覚えている。
それでも、いざ購入となれば競合と比較し、価格や分かりやすい機能差で決めることがあります。
つまり、認知から選択へ進む間には、「自分にとって、このブランドを選ぶ意味がある」という認識が必要です。
認知を増やすだけではなく、生活者の中でブランドがどんな意味を持っているのかを見る。
ここから、指名されるブランドづくりが始まります。

2.機能を磨くほど、比較されやすくなることもある
「高品質」「高機能」「独自技術」は、企業にとって重要な強みです。
一方で、市場全体の品質が上がると、競合も似た機能や表現を持つようになります。
新しい機能で差が生まれても、追随されれば再び比較表の中へ戻ってしまいます。
ここで強みを追加し続けると、生活者にとっては「どれも良さそう」に見え、最終的に価格という分かりやすい判断軸へ寄りやすくなります。
問題は、機能が弱いことではありません。企業が考える「商品の強み」と、生活者が感じる「選ぶ理由」が一致しているとは限らないことです。
だからこそ、「何ができる商品か」に加えて、「その機能によって自分は何を得られるのか」まで視点を移す必要があります。

3.属性ではなく、その人の「深層価値観」まで見る
では、生活者にとっての意味は、どう捉えればよいのでしょうか。
年齢、性別、職業、家族構成といった属性は、顧客像を整理するうえで有効です。ただ、同じ「30代女性・会社員」でも、大切にしていることは同じではありません。
効率よく暮らしたい人もいれば、安心できる選択をしたい人もいる。新しいことに挑戦したい人もいれば、自分らしいペースを守りたい人もいます。
こうした「何を大切にしているか」「どんな自分でありたいか」といった心理的な価値観、いわゆるサイコグラフィックな側面まで見ることで、同じ属性の中にある“選ぶ理由の違い”が見えてきます。
商品ニーズだけでなく、そのニーズの背景にある価値観を理解する。それによって、「この機能が必要な人」から、「このブランドの考え方や体験に意味を感じる人」へ、顧客理解を深められます。

4.「ブランドのらしさ」と顧客の価値観が重なると、比較軸が変わる
ブランドが指名される状態を考えるとき、大切なのは企業側の“らしさ”だけでも、生活者側のニーズだけでもありません。
ブランドが大切にしている価値や姿勢と、生活者が本質的に大切にしている価値観。その重なり=共鳴(レゾナンス)を見つけることです。
たとえば、同じ便利さを提供する商品でも、「時間を節約できる」だけでなく、「忙しい中でも、自分の時間を大切にできる」と感じられれば、機能は生活者にとっての意味へ変わります。
この意味がブランドらしさと結びつくと、「高機能だから」「安いから」という比較だけではなく、「自分に合っている」「この考え方が好きだから」という選択軸が生まれます。
こうした共鳴が積み重なることで、ブランドは単なる比較対象から、継続して選びたい対象へ近づきます。
価格だけに左右されにくい関係や、長期的な利用・推奨につながる顧客基盤を考えるうえでも重要な視点です。

おわりに:「何を持っているか」から、「誰の心にどう響くか」へ
認知度も、品質も、機能も重要です。しかし、それらはブランドが選ばれるための“材料”であって、それだけで選ばれる理由が完成するわけではありません。
「知っている」から「選びたい」へ。
「優れている」から「このブランドだから」へ。
その間をつなぐためには、生活者を属性だけで捉えず、その人が大切にする価値観まで理解し、自社の強みやらしさを顧客にとっての意味へ変換することが必要です。
ブランドづくりの問いを、「どう認知を増やすか」「どの機能を訴求するか」だけで終わらせず、「誰の、どんな価値観とつながるブランドなのか」まで広げてみる。
そこに、指名して選ばれるブランドへの次の一歩があります。
ブランドと生活者のつながりを明確にする「BrandLink Compass」
クロス・マーケティングの「BrandLink Compass」は、独自の生活者価値観クラスターモデルを活用し、ブランドの目指す姿と親和性のあるターゲット像を定性・定量の両面から捉えるメソッドです。
ブランドを支持する潜在顧客層の実態とブランドパーソナリティを掛け合わせ、ブランドが目指す方向性の明確化や、社内での共通認識づくりにつなげます。
「自社・ブランドの強みや“らしさ”と、現在の顧客層にギャップを感じている」
「ブランド論を実際のマーケティング戦略まで落とし込めていない」
といった課題をお持ちの場合は、BrandLink Compassのサービス内容をご覧ください。
また、自社のブランド課題や顧客理解について具体的に相談したい場合はこちらです。
