インサイトスコープ

新商品企画が陥る2つの罠~「ありきたりの改善」か「実現不能なSF」か~

Facebook X
堀 好伸
株式会社クロス・マーケティング
コンサルティング本部 シニアコンサルタント

堀 好伸

生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。
生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。
「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。
著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ:https://www.nhk.or.jp/school/sougou/active10_process

顧客の声を集め、商品の改善を重ねているのに、次のヒット商品につながらない。
未来を見据えたアイデア会議を開いても、今度は実現性のない構想ばかりが出てくる。

新商品・新サービスの企画現場では、このような壁に直面することがあります。
一見すると異なる問題ですが、その背景には、商品企画が陥りやすい2つの罠があります。

ひとつは、現在の顧客ニーズに応え続けた結果、競合と似た商品になってしまう「同質化の罠」
もうひとつは、未来を自由に描いた結果、事業として実行できない構想になってしまう「不確実性の罠」です。

これらの罠を避けるには、「今の延長線上」でも「遠すぎる未来」でもない、生活者にとっての実現可能な次の未来を捉える必要があります。

本記事では、新商品企画が両極端になってしまう理由と、3〜5年後の新習慣・新常識を起点にコンセプトを考えるための視点を解説します。

 

新商品企画を阻む「2つの罠」

現在に寄りすぎると「ありきたりの改善」になる

顧客の不満を調べると、商品やサービスが抱えている課題を具体的に把握できます。

例えば、

「使い方がわかりにくい」
「持ち運びにくい」
「手続きに時間がかかる」

といった声です。
こうした不満を解消すれば、商品は今よりも使いやすくなります。

一方で、不満を起点に生まれるアイデアの多くは、現在の体験にあるマイナスをゼロに戻す改善です。
競合企業も同じ市場の顧客を調査していれば、似た不満を捉え、同じような改善を進めます。

その結果、

「少し使いやすくする」
「機能をひとつ追加する」
「競合商品にもある機能を取り入れる」

といった企画が増え、商品や訴求の違いが見えにくくなります。
顧客の不満を解消することは、現在の競争に追いつくためには有効です。
しかし、それだけでは、次の市場をつくる独自の顧客体験にはつながりにくいという限界があります。

concept_discovery_02

未来に寄りすぎると「実現不能なSF」になる

concept_discovery_03

同質化を避けるために、未来予測やアイデアソンに取り組んでも、生活者の変化や検討する時間軸が共有されていなければ、実現方法や市場性を説明できない案に偏ります。

参加者ごとに想定している未来も異なるため、アイデアを同じ基準で比較できず、事業戦略や開発計画へ落とし込めません。これが、未来志向の企画が採用されにくくなる「不確実性の罠」です。

concept_discovery_04

2つの罠に共通するのは「現在と未来の分断」

concept_discovery_05

2つの罠に共通するのは、現在と未来をつなぐ変化の道筋が描けていないことです。
現在の不満だけを見れば、企画は今ある商品の延長線上にとどまります。一方で、遠い未来だけを見れば、実現までの道筋を説明できません

必要なのは未来を正確に当てることではなく、現在に表れている変化が、数年後にどのような行動や習慣へつながるのかを考えることです。
3〜5年後であれば、生活者の変化を見据えながら、自社の技術や資産を踏まえて実現を検できます。
この、今の延長線上と遠すぎる未来の間にある領域が「実現可能な次の未来」です。

未来の商品を考えると聞くと、これから起きることを正確に予測しなければならないように感じるかもしれません。
しかし、新商品企画で必要なのは、遠い未来を言い当てることではありません。
まず必要なのは、自社が企画の対象とする未来の時間軸を定めることです。

例えば、3〜5年後であれば、現在とは異なる生活者の行動や価値観が生まれている可能性があります。
一方で、自社が保有する技術や資産、開発体制を踏まえながら、実現に向けた具体的な検討を進められる距離でもあります。
この、今の延長線上と遠すぎる未来の間にある領域が、「実現可能な次の未来」です。

concept_discovery_06

「実現可能な次の未来」を描くために考えること

concept_discovery_07

時間軸を3〜5年後に設定しただけでは、具体的な商品コンセプトは生まれません。
次に考える必要があるのは、生活者を取り巻く環境や行動がどのように変化するのかということです。

例えば、次のような問いから未来の前提を整理します。

「生活者の時間の使い方は、どのように変わるのか」
「人との関わり方やコミュニケーションは、どう変化するのか」
「商品が使われる場面やライフシーンは、どう変わるのか」
「現在は一部にしか見られない、広がる可能性のある行動は何か」
「その行動の奥には、どのような理想の体験があるのか」

こうした変化を整理したうえで、「その未来において、生活者にどのような体験を提供するべきか」を考えます。

商品や機能から発想するのではなく、先に提供すべき顧客体験を定義することが重要です。
その後、自社が保有している技術やブランド、データ、顧客接点などと組み合わせ、具体的な商品・サービスの形へ落とし込みます。

concept_discovery_08

アイデアを出す前に、未来の前提を揃える

商品企画の会議では、最初から商品の形や機能を考えたくなります。 しかし、参加者が見ている未来が異なる状態でアイデアを出しても、議論はまとまりません。

まずは、

「どのくらい先の未来を考えるのか」
「生活者の行動はどのように変化するのか」
「その変化が広がると、何が新しい習慣になるのか」

という前提を共有する必要があります。
未来の前提が揃えば、単に面白いだけのアイデアではなく、生活者の変化と自社の事業を接続して考えられるようになります。

そして、

「なぜ、この変化に着目するのか」
「なぜ今、この商品をつくるのか」
「なぜ自社が提供するべきなのか」

を、社内で説明できる企画へと近づいていきます。

「調査結果」から次の価値へ――実際の支援事例

サンスター株式会社では、若い世代のオーラルケアへの意識・関心を高めるための調査を実施したものの、得られた結果をどのように次の商品やアイデアへつなげるかという「動線づくり」に課題を感じていました。

そこでクロス・マーケティングのインサイトコンサルティングチームが参画。
調査結果だけを見るのではなく、社会トレンドと組み合わせて解釈し直し、ワークショップを通じて生活者にとっての価値を再考しました。

その結果、健康に対する価値観を「オーラルケア」という既存カテゴリの枠だけで捉えるのではなく、「ウェルビーイング」というより広い視点へ再定義し、次のコミュニケーションの方向性につなげています。

ポイントは、調査結果からすぐに「どんな商品をつくるか」を考えなかったことです。

現在のデータ

生活者・社会の変化まで視野を広げる

価値の捉え方を変える

次に提供すべき価値を考える

というプロセスを挟むことで、既存商品の小さな改善だけでは見えにくかった、新しい方向性を考えやすくなります。
詳しくは以下の記事よりご確認いただけます。

▼顧客起点で「新たな習慣」の創出に取り組んだサンスター株式会社様の事例

 

生活者の変化から「次の顧客体験」を考える

Concept Discoveryは、生活者の本質的なニーズに基づく仮説構築から、将来の市場で可能性が期待できる商品・サービスのアイデアやベネフィット開発までを、クライアントと伴走しながら共創するコンサルティングサービスです。

 

 

おすすめのコラム

デジタルマーケティングコラム

世界スマホシェア率を日本と比較|人気のOSやメーカーは?

アプリ開発企業のマーケティング担当者の中には、世界のスマートフォンシェア率が気になっている方もいるでしょう。人気のOSやメーカーなどに関して、世界全体と日本との傾向の違いを把握しておくことで、マーケティングに活かせる面もあるかもしれません。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介

「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう

今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介

近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

就職氷河期世代の年齢とは?世代の特徴や背景、現状を解説

バブル崩壊後の不況に直面しながら社会に出た「就職氷河期世代」。厳しい雇用環境により正社員になれず、現在もキャリアや生活に課題を抱える方が少なくありません。今回は、マーケティングに役立つ視点から、就職氷河期世代の年齢や背景、特徴、そして現状についてわかりやすく解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説

結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

パン派・ごはん派の割合|身体に良い方はどっち?

日本の主食といえば、ごはんですが、パンを好んで食べる方が増えているのも事実です。実際は、パン派とごはん派のどちらが多いのでしょうか。また、体にとって良いのはどちらなのでしょうか。 今回は、パン派とごはん派の調査結果と身体に良い主食について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!

ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム

マズローの欲求5段階説とは?ビジネスシーンにおける活用例も紹介

日常生活はもちろん、ビジネスシーンでも私たちはさまざまな欲求に突き動かされています。その欲求がどのように構造化され、どの段階で優先されるのかを理解するために、アブラハム・マズローが提唱した「欲求5段階説」は非常に役立つでしょう。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード