AI時代のヒットの法則? 「2〜3年先のトレンド」は極端な人の行動から見えてくる
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株式会社クロス・マーケティング
コンサルティング本部 シニアコンサルタント
堀 好伸
生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。
生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。
「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。
著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ:https://www.nhk.or.jp/school/sougou/active10_process)
この記事は、2026年5月27日に開催されたセミナーの内容を基にポイントを解説しています。
「2〜3年先のヒット」は、極端な人たちの行動に隠れている —— 行きすぎたトガリが一般化するメカニズム
はじめに:私たちは本当に「自分で選んで」買っているのか?
皆さんは最近、「これは本当に自分で悩んで、自分の意志で選んだ!」と胸を張って言える買い物をしましたか?気づけばYouTubeもNetflixも、Amazonでの買い物も、AIのレコメンドによって「失敗しない最適化された生活」を送るようになりました。便利になる一方で、どこか「自分で選んだ実感」が失われていると感じることはないでしょうか。
現在のヒット商品の裏側には、こうした「AI最適化社会」に対する反動が隠れています
今回はその記念すべきシリーズ第1弾として、「あえて極端に手間をかける行動」から見えてきた、「余白」という次世代のキーワードとビジネスチャンスについて凝縮してご紹介します!
1. 市場で今、何が起きているのか?(現在のトレンド)
AIによる効率化が進むほど、人はあえて「不完全・手間・アナログ」に価値を見出すようになっています。最近のヒット商品を見ると、その傾向が顕著です。
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アナログ回帰(チェキ・レコード)
スマホで簡単に写真が撮れる時代に、あえて「現像を待つ時間」や「失敗するかもしれないリスク」を持つチェキの売上が過去最高を更新しています。レコードも同様に、プレイヤーを持っていなくても「所有する」若者が増えています。 -
デコ文化(トレカデコ・スマホデコ)
立体的な「ボンボンドロップシール」などで、推しのトレカやスマホケースを自分なりにアレンジする文化が広がっています。 -
カスタム食品(麻辣湯)
具材やスープの辛さを自由に選べる「麻辣湯(マーラータン)」が大流行しています。単に食事としてだけでなく、「選ぶ楽しさ」というエンタメとして機能しています。

2. トレンドの源泉を「逆探知」する(過去の兆し)
実はこうしたトレンドは突然生まれたわけではありません。数年前から、「トライブ」と呼ばれる先進的で極端な行動をとる生活者たちの中に、その兆しは隠れていました。
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ちょい足し族
メーカーの完成品をそのまま受け入れず、自分流にアレンジ(ハック)する人々。これが今の「麻辣湯」などのカスタム食品へと繋がっています。 -
クラフト・ドリンカー
単なるアルコール摂取ではなく、作り手の思想や土地の文脈を探求する人々。これが「DIY・クラフト」の流行へ。 -
カルチャー・シーカー
他人の基準(ステータス)ではなく、自分の基準で豊かさを定義し、時間をかけて作られたモノを愛する人々。これが「アナログ回帰」へ。 -
ミスター・コレクター
モノ自体よりも、それを入手した「記憶と文脈」の保存を重んじる人々。これが「デコ文化」へと繋がっています。
3. なぜ今、これが広がったのか?(選んだ実感と深層心理)
AI最適化によって「選んだ実感」が消失する中で、生活者は「メンパ(メンタルパフォーマンス)」と「プロパ(プロセスパフォーマンス)」を使い分けるようになりました。
疲れている時はAIに頼って居心地の良さを優先(メンパ)しますが、ルーティンや趣味においては、あえて面倒なプロセスを省略せず「自分で作った・選んだ」という達成感(プロパ)を得たいという欲求が高まっています。手軽さの中にも、あえて「0.7手間」をかけることが、現代の贅沢になっているのです。

4. 企業が取るべき次の一手「不完全性消費」と「余白」の実践ヒント
このインサイトから見えてくるこれからのビジネスチャンスは、「不完全性消費」です。 企業は「100%完璧な完成品」を提供するのではなく、消費者が入り込む隙間(余白)を残すことが強力なエンゲージメントを生みます。
では、具体的に自社のビジネスに「余白」をどう取り入れればよいのでしょうか? 4つの実践ヒントをご紹介します。
💡 ヒント1:カスタマイズ余白の設計(半完成品の提供)
最初から100%の完成品を売るのではなく、消費者が自分の好みに合わせて仕上げる余地を残します。例えば、具材を自分で選んで調理するミールキットのように、「自ら選んで作った」という達成感を提供することで、リピート率の向上に繋がります。
💡 ヒント2:完璧な失敗をデザインする(エラー・パフォーマンス)
あえて失敗するリスクや手間を残してみましょう。プロが作った完璧な「映え」よりも、一般ユーザーが試行錯誤してドタバタしている「未完成なプロセス」の方がSNSでの共感を強く誘発します。失敗すらも「愛おしいストーリー」に変わる体験を設計します。
💡 ヒント3:時間を融かす(没頭・育成プロダクト)
効率化や時短の真逆をいき、あえて時間を贅沢に浪費させる体験です。例えば「数日間、発酵・育成を観察しなければならない食品」など、デジタルから離れて作業に没頭する「フロー状態」そのものを価値(プロセス課金)として提供します。
💡 ヒント4:私が50%、あなたが50%(リレー型・共創ギフト)
ギフトの概念を変えるアイデアです。贈る側が50%手を加え、残りの50%を贈られた側が仕上げることで完成するプロダクト。ただのモノではなく、「一緒に悩む時間」や「相手と一緒に仕上げる関係性」を贈る、新しいギフトの形です。
おわりに
これからの時代、AIによる「失敗しない最適化」から、消費者自身が仕上げて育てる「余白設計」へとパラダイムシフトが起きています。モノそのものではなく、モノをめぐる「余白」をどうデザインするかが、次世代の商品コンセプトを構築する鍵になります。
本企画は今後もシリーズとして、最新の生活者インサイトをお届けしていく予定です。皆さんのビジネスでも、あえて「手間」や「未完成」を残す余白設計を取り入れてみてはいかがでしょうか?
