【2025年】値上げラッシュの現状|原因から企業に求められる対応まで解説
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2025年も続く「値上げラッシュ」。食品や日用品の価格上昇が生活に影響を与えるなか、企業の対応力が問われています。特にマーケティング担当者にとっては、価格改定の必要性と消費者の反応をどのように両立させるかが大きな課題です。今回は、値上げの現状や背景を整理しながら、企業に求められる対応とマーケティング戦略のヒントを解説します。
値上げラッシュを感じる人の割合
2025年現在、多くの消費者が食品価格の上昇を肌で感じています。クロス・マーケティングの調査によると、食品の値上げを実感している方は全体の9割にのぼり、そのうち約7割が「強く感じている」と回答しました。これは日常の買い物において、値上げが明確に認識されていることを示しています。
特に値上がりを感じる食品としては、「お米」がもっとも多く、75.6%の方が価格上昇を実感していました。続いて、「葉物類」や「卵」なども多くの方が値上がりを認識しています。また、「果菜類」「果物」「根菜類」も2割台と一定の割合がありました。
出典:株式会社クロス・マーケティング「食品の値上げに関する調査(2025年)」
値上げラッシュにともなう生活の変化
価格上昇が続くなか、消費者の暮らしにも確かな変化が見られます。クロス・マーケティングの調査では、日々の買い物行動や購入する食品に工夫を凝らす様子が浮き彫りになりました。ここからは、具体的な変化を詳しく紹介します。
食品の買い方の変化
値上げの影響を受け、消費者の買い物スタイルにも変化が表れています。最近では、割引品や見切り品を積極的に選ぶ方が増加しており、全体の3割程度がこの行動をとっているという調査結果が出ています。また、より安く購入できる店舗を選んだり、クーポンやポイント還元を活用したりする傾向も見られました。
さらに、特売やセール情報を事前に調べる、購入する商品をあらかじめ決めて無駄買いを避けるなど、日々の買い物に工夫を取り入れる動きが広がっています。消費者は、限られた予算のなかでできるだけ満足のいく買い物をしようと、知恵を絞って対応しているようです。
買う食品の変化
値上げが続くなか、消費者が選ぶ食品にも明確な変化が見られます。クロス・マーケティングの調査によると、買う頻度が減った食品には「お米」「お菓子」「キャベツ」があげられました。これらは、以前まで常備される傾向が高い食品だったため、価格上昇が購買行動に影響を及ぼしていると考えられます。
一方で、「もやし」「豆腐」「パン」などの比較的価格が安定している食品の購入頻度は増加しています。特に、もやしや豆腐は安価で栄養価も高く、家計にやさしい選択肢として支持を集めているようです。このように、消費者は価格に敏感に反応しながら、日々の食卓を工夫しています。
出典:株式会社クロス・マーケティング「食品の値上げに関する調査(2025年)」
値上げラッシュの主な原因
2025年の値上げラッシュは、複数のできごとが複雑に絡み合って生じています。国際情勢から経済政策、気候変動まで、幅広い背景があるのです。ここでは、代表的な3つの要因について詳しくみていきましょう。
ウクライナ侵攻
ロシアとウクライナは、どちらも世界有数の穀物輸出国として知られています。しかし、両国の戦争により輸出量が大幅に減少し、世界の穀物市場に深刻な影響を与えました。その結果、小麦やトウモロコシなどの価格が高騰し、配合飼料を使用する鶏卵の価格上昇にもつながっています。
さらに、中東地域の不安定な情勢も影響を及ぼしています。2023年12月においては紅海で貨物船が攻撃され、石油輸送が遠回りを強いられたことでタンカーの運賃が3倍に跳ね上がりました。加えて、ロシアへの経済制裁や産油国の減産が重なり、ガソリン価格は2025年1月時点で1リットル180円台と高止まりしています。
こうした原油価格の上昇は、輸送コストにも直結します。食品などの流通にかかる費用が増加し、その負担が小売価格に反映されることで、消費者が感じる値上げの一因になっているのです。
ドル高円安
日本では、1ドル150円前後の円安水準が続いており、海外からモノやサービスを輸入する際のコストを押し上げるため、輸入企業が価格を引き上げざるを得ない状況です。特に、エネルギー資源や家畜の飼料といった輸入依存度の高い品目では、価格上昇が顕著にみられます。
こうした円安の背景には、日米間の金融政策の違いがあります。日本では2013年から続く超金融緩和政策が継続されており、日本銀行は金利を据え置いている状況です。一方、アメリカではインフレ対策として政策金利を引き上げており、それにともないドルの価値が高まり、相対的に円が安くなっています。
この為替の動きは、輸入コストの上昇を通じて食品や生活必需品の価格に影響を与え、値上げラッシュの一因になっているのです。
異常気象
近年、地球温暖化の影響とみられる異常気象が世界各地で発生しており、農作物の生産に深刻な打撃を与えています。「世界の食卓が危ない」とまでいわれるほど、気候変動が食品供給に影響を及ぼしているのです。
2023年においては、カナダで小麦畑が熱波によって枯れ、フランスではブドウ畑がひょうの被害で壊滅的な状況になりました。さらに、タイやベトナムでは大雨の影響で米の収穫量が3割も減少するなど、主要な農産国でも天候不順による生産減が相次いでいます。
その結果、各国が自国の供給を優先し輸出を制限したことで、日本が輸入する農産物の価格は急上昇しました。これが食品の値上げに直結し、生活にも影響を与えているのです。
値上げラッシュはいつまで続く?
物価の上昇が続くなか、多くの消費者や企業が気になるのは、いつこの値上げラッシュが落ち着くのかという点です。しかし、現時点では、収束の兆しはまだ見えていません。
帝国データバンクが行った調査によると、2025年1月から4月にかけて値上げが予定されている飲食料品は、パンやビール、冷凍食品など6121品目にのぼるとされています。これは前年同時期と比べて約6割の増加で、2025年春まで値上げが常態化する見通しです。
また、2025年5月以降の動向については不透明な部分が多いものの、現在の円安傾向が続けば、輸入コストのさらなる上昇が懸念されます。特に原材料やエネルギーを海外に依存している分野では、再び調達価格が上がり、追加の値上げが発生する可能性も否定できません。
このように、今後もしばらくは企業も消費者も、価格上昇への備えが必要な状況が続くと考えられます。
出典:株式会社PR TIMES「2025年の値上げ、4月までに6千品目 24年比6割増ペース 今年の値上げ、1万2520品目 前年比6割減少、抑制の1年」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000993.000043465.html
値上げラッシュ時に企業に求められる対応
物価上昇が続くなか、企業には価格転嫁だけでなく、顧客満足や信頼を損なわない工夫が求められます。ここでは、コストの見直しや価格戦略、マーケティング施策など、今こそ取り組むべき具体的な対応策を紹介します。
事業やコストを再検討する
値上げが避けられない局面では、価格転嫁に頼るだけでなく、事業運営やコスト構造の見直しが重要です。例えば、新規事業の立ち上げや営業活動の強化などによって収益機会を広げる攻めの対応が考えられます。一方で、固定費や光熱費、人件費などを精査する守りの姿勢も同時に求められるのです。
ただし、過度なコストカットは従業員の不満や離職を招き、結果として人材確保にかかるコストが増えるリスクもあるでしょう。企業としては、短期的な効率だけでなく、従業員との信頼関係を維持しつつ、持続可能な経営を目指すバランスの取れた施策が求められます。
製品の価格を見直す
国内企業は、消費者への印象を考慮して価格転嫁を控える傾向がありますが、コスト上昇が避けられない状況では、価格の見直しが現実的な選択肢です。特に食品は、価格は据え置いたまま内容量を減らす実質値上げもひとつの手段とされています。
しかし、消費者庁の調査によると、24.8%の方がステルス値上げ(価格を変えず、内容量やサイズを縮小すること)を理由に購入商品を変更し、24.2%の方がそれを「不誠実」と感じているという結果が出ています。こうした声を踏まえると、値上げを行う際には、正面から価格改定を伝え、その理由を丁寧に説明する姿勢が信頼維持の鍵になるでしょう。
単なる価格の調整ではなく、企業としての透明性や誠実さを示す対応が、消費者の共感や納得につながるのです。
出典:消費者庁「COLUMN1 実質値上げ(ステルス値上げ)に関する消費者の意識(物価モニター調査結果より) 」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2019/white_paper_column_01.html
消費者を理解したマーケティング戦略を立てる
継続的な値上げに直面するなかで、消費者は、これまで以上に「何にいくら使うか」を慎重に考えるようになっています。そのため、企業側も単に商品を売るだけではなく、「なぜその商品を選ぶのか」という明確な理由を提供できる戦略が求められるでしょう。
例えば、健康志向や自己投資、QOL(生活の質)の向上といった社会的背景や消費者心理を踏まえた商品開発・訴求が重要です。生活者の価値観に寄り添った提案が、購買意欲を高める鍵になります。
また、マーケティング戦略を立てる上では、まず自社商品の特性を正しく理解することが不可欠です。POSデータをもとにしたABC分析で商品の売れ筋を把握したり、RFM分析で顧客のロイヤルティを分類したりすることをおすすめします。さらに、9Seg分析などを活用して顧客層の分布を可視化することで、ターゲットとの最適なコミュニケーション設計にもつながるでしょう。
まとめ
2025年の値上げラッシュは、複数の要因が重なり今後も続く見通しです。企業は価格改定だけでなく、コスト見直しや消費者心理に寄り添った戦略を通じて信頼を維持しましょう。