共働き世帯の家事分担の現状と悩みとは|マーケティングのポイントも解説
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現在、日本社会において共働き世帯が主流となり、政府も「共働き・共育て」を積極的に推進しています。一方、家庭内での家事分担は十分に進んでおらず、負担の偏りや役割分担の不公平感に悩む家庭は少なくありません。今回は、共働き世帯における家事分担の実態と、今後のマーケティングに活かせるポイントを解説します。
共働き世帯の家事は7割以上を女性が担っている
共働き世帯は増加の一途をたどっており、2022年には1,262万世帯に達しました。1980年の614万世帯と比べておよそ2倍に増えた一方で、「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」は1980年時点の1,114万世帯から2022年には539万世帯へと大幅に減少しています。こうした変化を背景に、共働き世帯における家事分担の現状を探ります。

出典:厚生労働省「令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会-」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/22/backdata/02-01-01-03.html
夫の3.4倍を家事に費やす共働きの妻
内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和5年版」によると、家事分担は依然として妻に大きく偏っています。専業主婦世帯では家事全体の84.0%を妻が担い、共働き世帯でも77.4%を妻が担当しています。

6歳未満の子どもがいる共働き世帯においては、妻の家事時間が週全体平均391分であるのに対し、夫は114分にとどまります。つまり、妻は夫の約3.4倍の時間を家事に費やしていることになります。夫の家事時間は2006年時点の57分と比較して2倍に増加しているものの、依然として妻とのギャップは大きいのが現状です。

出典:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和5年版 」(P13・14)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/pdf/r05_tokusyu.pdf
家事・家庭は妻がマネジメント
家事・家庭のマネジメント分担の調査によると、「家計管理・運営」「家族の予定を調整する」「ごみを分類し、まとめる」など多くのタスクを妻が担っていることが明らかになっています。なかでも食事関連は8割以上を妻が担当しているという結果が出ています。

出典: 令和元年度内閣府委託調査・株式会社リベルタス・コンサルティング「家事等の仕事のバランスに関する調査報告書」
(P19~23)
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/balance_research_202003/07.pdf
共働き世帯の家事分担にまつわる課題
上記を踏まえ、共働き世帯の家事分担にまつわる課題をいくつかの観点から紹介します。
性別役割に関する無意識の思い込みの存在
現在もなお「性別によって担うべき役割がある」と考える人は、男女ともに少なくありません。
令和4年に実施された性別役割意識に関する調査では「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」という設問に対し「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の割合は、男性で50.3%、女性で47.1%に上りました(選択肢「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の4段階)。
さらに「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」という設問では、男性の29.5%、女性の23.8%が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答しています。
このように、性別による役割分担に対する無意識の思い込みは、令和の時代に入っても多くの人の意識に根づいており、共働き世帯における家事の分担を見直す上で、ひとつのハードルになっているのが現状です。
出典:内閣府男女共同参画局「男性の家庭・地域社会における活躍について」(P38~39)
https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_kanshi/siryo/pdf/ka14-1.pdf

「見えない家事」を妻が担当
家事には、料理・洗濯・掃除といった目に見える作業だけでなく、「見えない家事」や「名もなき家事」と呼ばれる細かな作業が多く含まれています。こうした作業には、トイレットペーパーを補充する、ごみ袋を取り替えるなど、誰かが気づいて対応しなければ生活が成り立たないものが数多く存在します。
国立社会保障・人口問題研究所が2022年に実施した「2022 年社会保障・人口問題基本調査 第7回全国家庭動向調査 報告書」によると、以下のような「見えない家事」の多くを妻が担当していることが明らかになりました。
【妻が「見えない家事」を担っている割合】
・食材や日用品の在庫の把握:86.0%
・食事の献立を考える:88.9%
・ごみを分類し、まとめる:69.5%
・家族の予定を調整する:61.6%
・購入する電化製品の選定:27.4%

上記のような「見えない家事」が明確に分担されていない場合、気づいた人が自然に引き受けることになりがちです。調査結果からわかる通り、夫側が「見えない家事」の存在に気づいていないケースが多く、見た目以上に妻への負担が集中しているのが実情です。
出典:国立社会保障・人口問題研究所 「2022 年社会保障・人口問題基本調査 第 7 回全国家庭動向調査 報告書」
https://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ7/Mhoukoku/kateidoukou7_kekka_20240426.pdf
「夫婦間のコミュニケーション」と「家事・育児スキル」の不足
夫婦間のコミュニケーション不足や家事・育児に関する知識やスキルの差は、家事の分担を円滑に進める上で障害になることがあります。
内閣府男女共同参画会議の「男性の暮らし方・意識の変革に向けた課題と方策~未来を拓く男性の家事・育児等への参画~」によると、男性の家事・育児関連時間を増やすために必要な要素として、「残業の削減」などの職場環境の改善以外に、特に多くあげられたのが以下の2点です。
・配偶者とのコミュニケーションの向上
・家事・育児のスキルの向上
とりわけ夫婦間のコミュニケーションが不足している場合には、家事・育児スキルの未熟さが引け目や消極的な姿勢につながりやすく、結果として分担が進みにくくなる可能性があります。
出典:内閣府男女共同参画会議「男性の暮らし方・意識の変革に向けた課題と方策~未来を拓く男性の家事・育児等への参画~」(P19)
https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/kurashikata_ishikihenkaku/pdf/0310houkoku_i.pdf

共働き世帯の家事分担をサポートする製品・サービス例
共働き世帯を支える手段として、時短を意識した家電製品が続々と登場しています。加えて、家事負担を軽減する各種サービスも共働き世帯にとって心強い存在です。ここでは、家事分担をサポートする製品やサービスの具体例を紹介します。
時短家電
食器洗い乾燥機や洗濯乾燥機、掃除用ロボット、時短調理器、自動調理器など、時短をかなえる家電が幅広く展開されています。
こうした時短家電は、家事にかかる時間や労力を大幅に削減できるだけでなく、精神的なゆとりや生活の質の向上にもつながります。特に共働き世帯や子育て中の家庭にとっては、時短家電の導入によって限られた時間を有効活用できるようになり、家族との時間や自分のための時間を確保しやすくなります。
共働き世帯が増え続けている現状からすると、今後ますますこうした時短家電のマーケット拡大が期待されます。
家事負担を軽減するサービス
時短家電を手軽に導入できる手段として、家電のサブスクリプションサービスを推進するのもひとつの手段です。高額な時短家電の購入に踏み切れない場合でも、サブスクリプションサービスであれば月額制で気軽に使用できます。
また、外食・フードデリバリーも食事準備をサポートする有用な家事軽減策です。忙しい日々を送る共働き世帯の「ご褒美利用」としても効果的です。
家事代行サービスは、業者によって展開内容が異なりますが、掃除機掛けやキッチン掃除、洗濯、ごみ出しなど幅広く対応しています。特に子育て世代からのニーズが高く、幅広い年収層で利用が広がっています。

共働き世帯マーケティングのポイント
共働き世帯が主流となった今、妻が担う家事・育児の負担は依然として大きいものの、夫の参入によって「家事を簡略化できる」「迷わず使える」といった利便性を重視した商品が売れています。例えば、「この1本だけで味付けができる調味料」や「自動で洗剤を投入してくれる洗濯機」などが代表例です。
こうした背景をふまえ、夫の家事・育児参加を前提とした商品・サービスの開発やマーケティングが今後ますます求められます。
また、平日に毎日自炊をしない家庭も多く、調理や後片付けの手間を省ける外食ニーズが高まっています。加えて、買い物の手間を減らすため、食料品や日用品をオンラインで購入する家庭も増加しており、EC市場におけるビジネスチャンスも広がりを見せています。
関連記事:「共働き世帯の割合とは?共働きを選ぶ理由や社会的背景も解説」
まとめ
共働き世帯の増加が続く一方で、家事の多くは依然として妻に偏り、見えない家事や家庭のマネジメントも含め、妻が大きな負担を担っているのが現状です。今後は、夫の家事参加を前提とした直感的で使いやすい商品や、家事そのものを省力化できるサービスへのニーズがさらに高まると考えられます。
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