マーケティングコラム

デブリーフィングとは?グループインタビューにおける目的・進め方・注意点を解説

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デブリーフィングとは「出来事や活動の直後に、事実・気づき・解釈を共有し、次の改善につなげる」ための振り返りプロセスです。特にマーケティングリサーチでは、単なる主観的な印象の共有や雑談のような意見交換にとどまらず、対象者の発言や反応の背景を深く掘り下げて仮説を構築し、具体的な次のアクションへと落とし込む点に特徴があります。本記事では、デブリーフィングの定義・目的から、インタビュー調査における具体的な進め方、円滑に進めるためのポイントまでを体系的に整理します。

 

デブリーフィングの定義と使われる場面

デブリーフィング(debriefing)とは、活動や出来事の終了直後に関係者が集まり、何が起きたかを整理し、そこから得た学びを次の行動に活かすための対話プロセスを指します。単なる報告や反省だけで終わらせず、判断や行動の背景にある要因を言語化することで、次のアクションの質を高め、具体的な改善へと結びつけることが可能になります。

デブリーフィングが活用される場面として、大きく以下の2系統に分類されます。

1.ビジネスやリサーチにおける事後レビュー
ビジネス・医療・教育・訓練などで、チームの意思決定やオペレーションの質を向上させるために行う事後レビューです。
2.災害・事故などの文脈における心理的ケア
被災や事故などの深刻な場面において、当事者の精神的負担の軽減(心理的デブリーフィング)を目的として行われるものです。

同じ言葉であっても、目的やアプローチは全く異なります。特に後者の心理的ケアを目的としたデブリーフィングは、状況や個人差によっては逆効果を招くリスクも指摘されており、専門家による慎重な判断が必要です。本記事では、前者の「ビジネスやリサーチにおける事後レビュー」を中心に解説します。業務や調査の成果を高めるための具体的な手法として、その型を正しく理解しておくことが重要になります。

グループインタビュー(FGI)におけるデブリーフィングの重要性

マーケティングリサーチにおけるグループインタビュー(FGI)では、参加者の発言内容そのものだけでなく、言外の意図や場の文脈(空気感)にこそ高い価値があります。そのため、インタビュー調査を実施した直後のデブリーフィングが調査全体の成果を左右します。

グループインタビューは、参加者同士の相互作用(グループ・ダイナミクス)の中から、表層には現れない本音や潜在的な価値観を捉える定性調査です。そのため文字起こしデータとしてテキストで残る発言だけではなく、以下のような非言語情報が重要な情報となります。

・誰の発言に対して、他の誰が深く頷いたか
・質問に対して、一瞬の沈黙やためらいが起きた瞬間
・言い直しや、言葉選びに迷いが生じた様子
・場の空気や熱量が変化したタイミング

デブリーフィングは、こうした非言語情報や文脈の記憶が鮮明なうちに、モデレーター、オブザーバー、クライアントなどの関係者全員で突き合わせる工程です。同じ場に同席していても、それぞれの立場で見ている景色は微妙に異なることもあるため、その認識のズレを早期に統合できるほど、後工程で行う分析の精度が向上します。

またデブリーフィングには、次のセッションに即反映できるというメリットもあります。1日に複数グループのインタビュー調査を実施する場合、1回目で発見した違和感や不足質問をその日のうちに修正できるかどうかで、調査全体の成果(情報の取りこぼしの有無)が大きく変わります。デブリーフィングは単に「レポート作成のため」だけではなく、「調査を実施しながらブラッシュアップしていくため」に行うものです。

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デブリーフィングの目的

デブリーフィングの目的は「関係者の気づきを揃え、その背景(理由)を理解し、次の具体的な打ち手へと変換する」ことにあります。
デブリーフィングが適切に機能すると、チーム内での解釈の前提が揃うため、その後の分析や意思決定のスピードが速くなります。逆にこの行程を曖昧にしたままにすると、後から議事録や録画動画を見返したとしても、「なぜその場でその発言が出たのか」「なぜあの空気が生まれたのか」という重要な文脈の手がかりが失われてしまいます。

具体的には、デブリーフィングの目的は大きく3つあります。

1.気付きの共有と共通認識の形成

デブリーフィングの最初の成果は、関係者それぞれの視点で捉えていた重要なポイントを持ち寄り、チーム全体の共通認識として揃えることです。同じ場にいても、モデレーターは進行と深掘りに集中し、オブザーバーは特定のテーマや行動を観察し、クライアントは自社事業への関心・視点から発言を聴いています。注目点が異なるのは自然であり、だからこそそれぞれの気づきを1つに統合することに意味があります。

ここで共有すべきことは、参加者の表面的な発言だけではありません。
・どの話題に対して反応が強かったか
・躊躇や言い淀みがみられたのはどの箇所か
・話題が転換したきっかけは何だったか
・参加者同士の同調や対立の構図はどうなっていたか

こうした「場のダイナミクス」も含めて共有します。共通認識を形成するコツは、いきなり主観的な結論を言い切るのではなく、根拠となる客観的な事実を短く提示することです。

・NG例:「対象者は商品Aが良いと言っていた」
・OK例:「対象者は商品Aが良いと言ったが、直前に競合Bの話で笑いが起きて流れが変わったため、本音かどうかは精査が必要だ」

このように文脈込みで事実を共有することで、その後の議論の土台が固まります。

2.背景要因の整理と仮説づくり

共通認識をもった上で次に行うのは、「なぜその発言・行動が出たのか」という背景の深掘りです。定性調査において最も避けたい失敗は、参加者の言葉を文字通りに要約してそのまま調査の結論にしてしまうことです。参加者の発言は、社会的に望ましい言い方やその場の空気に合わせた表現になったりします。そのため、発言の背景を疑い、深掘りする視点がなければ、得られる示唆は浅くなってしまいます。

背景要因を整理し、質の高い仮説を構築するためには、以下のようなフレームに分けて捉えると構造化しやすくなります。

背景要因の分類 観察・分析の着眼点
価値観・ライフスタイル 対象者が根底に持つ価値基準や、日常の生活文脈
制約条件 予算、時間、家族構成、物理的な環境などの制限
意思決定プロセス 情報をどこで得て、誰が最終決定権を持っているか
心理的抵抗 購入や利用を躊躇させる、目に見えない心理的障壁
価値観・ライフスタイル

観察・分析の着眼点

対象者が根底に持つ価値基準や、日常の生活文脈
制約条件

観察・分析の着眼点

表予算、時間、家族構成、物理的な環境などの制限
意思決定プロセス

観察・分析の着眼点

情報をどこで得て、誰が最終決定権を持っているか
心理的抵抗

観察・分析の着眼点

購入や利用を躊躇させる、目に見えない心理的障壁

例えば、対象者からの「価格が高いから買わない」という発言は、単純に金額だけの問題ではなく、「失敗したときの精神的ダメージ(失敗回避)」「他社製品と比較する手間の面倒さ」「家族に相談しにくい(周囲の目)」「使用頻度が低い」など、全く別の要因が真意であるケースも多々あります。デブリーフィングの場では、1つの解釈に決め打ちするのではなく、複数の解釈案をあえて並べ、検証可能な仮説の選択肢を網羅的に揃えることが重要です。

3.改善策の抽出と次回への反映

デブリーフィングの最終ゴールは、得られた気づきを「調査運営の改善」と「ビジネス施策への示唆」に分けて整理することです。これらを混同してしまうと、調査の運営上の反省が施策の結論に影響を与えたり、施策の議論が長引いて次のインタビューに向けた調査設計の改善が置き去りになったりするリスクが生じます。そのため、まずは次回のセッションの質を高めるための具体的な改善策を洗い出すことが先決です。

・調査運営の改善
質問の順番、モデレーターの深掘り不足、時間配分、呈示する刺激物(コンセプトシートや試作品など)のタイミング、スクリーニング条件、オンラインの接続環境など、まずは改善すべき項目を具体的に特定します。「時間が足りなかった」という抽象的な反省ではなく、「次回は比較パートの時間を5分前倒しし、体験談の深掘りを後半に寄せる」といった、次回の調査運営にすぐ反映できるよう明確にして落とし込みます。

・ビジネス施策の示唆
「誰に、何を、どのような条件で提案すれば響くのか」という仮説をさらに深掘りし、追加で検証すべき課題とセットで整理します。「〇〇のニーズがありそうだ」という示唆だけで終わらせず、「それを確かめるために、次回のセッションで確認すべき追加の問いは何か」「不足している視点は何か」を明確にすることで、レポート作成や社内での合意形成がスムーズになります。

デブリーフィングの特徴と一般的な振り返りとの違い

デブリーフィングが一般的な定例ミーティングや単なる振り返りと大きく異なる点は、インタビュー直後に話し合うことと、複数の視点から多角的に分析することです。この2つの特徴によって、すべての議論を次のアクションへ直結させることができます。

インタビュー直後に行う

デブリーフィングをインタビュー直後に行う最大の理由は、人間の記憶の鮮度にあります。表情の変化、語尾のニュアンス、笑いの質、沈黙の長さ、会話の割り込み、同調の連鎖といった非言語情報は、時間とともに急速に失われていきます。インタビュー終了直後であれば、これらの情報を共有しやすく、質の高い仮説構築に役立てることができます。

また記憶が鮮明なうちに話し合うことは、議論がスムーズにまとまることにも貢献します。関係者の熱量が高いタイミングで「今回の最大の論点は何か」「次に何を確かめるか」を決めることで、プロジェクトの意思決定が格段に前に進みます。これらを翌週などに持ち越してしまうと、記憶が薄れて重要な論点がブレやすくなり、結果として録画動画を再確認するなどの非効率なプロセスが発生しやすくなります。

複数の視点から多角的に分析する

一般的な振り返りは、起きた出来事の共有や単なる反省、良かった点の称賛などに比重が置かれがちです。一方、デブリーフィングは、重要発言の選別から始めて、解釈を複数出し、背景を推定して仮説にし、次の具体的な行動を決めるところまでをワンセットで扱います。

特にFGIでは「参加者がそう言った」という事実だけでは、ビジネスの意思決定を支える根拠としては不十分です。「なぜそう言ったのか」という背景の理解が求められます。デブリーフィングは、単なる発言の記録から「マーケティングの施策に活かせるヒント(あるいは仮説)」を見つけ出すための、重要なステップと言えます。

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実施タイミングと所要時間の目安

デブリーフィングの基本は「直後に短く、必要に応じて最後に深く」です。品質とスピードを両立させるための時間管理の目安を以下に示します。

実施タイミング

インタビューセッションの終了直後、遅くとも当日中に実施します。翌日以降に持ち越すほど、議論が文字情報(テキスト)だけに頼った平坦なものになってしまいます。

所要時間の目安

    • 単発のセッション直後: 1530分(クイックに論点を整理)
    • 標準的な振り返り: 3060
    • 複数セッション連続の場合: 各回の直後に1015分のミニデブリーフィングを挟んで軌道修正を行います。全日程の最後に6090分を確保して、全体の振り返りとして全セッションを横断して総括する進め方が現実的かつ現場の負担も少なく効果的です。

時間は議論の長さだけではなく、記録の整理と保管まで含めて設計します。話して終わりにするのではなく、後から参照できるよう記録にまとめるまでがデブリーフィングの時間です。

デブリーフィングの進め方

デブリーフィングでの議論は、以下の5つの流れに沿って行うことで、ファシリテーターのスキルに頼ることなく、チーム全員でスムーズに議論を深めることができます。

ステップ1:調査直後の第一印象のすり合わせ

ステップ2:象徴的な発言のピックアップと深掘り

ステップ3:対象者心理の深掘りと仮説のブラッシュアップ

ステップ4:次回セッションの改善点と施策の整理

ステップ5:決定事項と議論内容の記録

この順番には意味があり、いきなり結論や具体的な施策の内容になると、根拠の弱い主観的な議論になりやすいため、この流れを意識することが議論の質を高める重要なポイントです。

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ステップ1:調査直後の第一印象のすり合わせ

まず今回のセッションの目的、事前に想定していた仮説、当日の流れを数分で再確認します。これにより、議論の焦点が「そもそも何を明らかにするための調査だったか」という軸に戻り、個人の印象論が散乱するのを防ぎます。

次に参加者それぞれの第一印象を短く共有します。ここでは正しさよりも、1人30秒〜1分といった制限時間を設けてテンポよく発言を回すのがコツです。時間が限られている場合は、この時点で「今回のデブリーフィングで深く扱う最大論点は2つまで」のように絞り、残りは未解決の問いとして記録に残すと、質とスピードを両立できます。

ステップ2:象徴的な発言のピックアップと深掘り

次に、インタビュー内でキーとなる発言や反応を具体的にピックアップします。

・複数の対象者から繰り返し出た言葉(語彙)
・対象者間で意見の対立したポイント
・強い感情(驚き、怒り、喜びなど)が出た箇所
・急に会話が弾んだ、あるいは逆に不自然に止まった箇所

これらを基準にすると、重要なポイントが浮き彫りになります。

ここで大切なのは「何が言われたか(事実)」と「どう解釈できるか(インサイトの推定)」を明確に切り分けることです。解釈の可能性は一つに絞らず、複数案を並べて比較します。例えば対象者が発した「便利」という言葉に対して、「時短になるから便利なのか」「失敗するリスクが低いから便利なのか」「心理的な手離れが良いから便利なのか」など、複数の意味合いを検討します。発言の直前直文脈もセットで考えることで、解釈の解像度が高まります。

ステップ3:対象者心理の深掘りと仮説のブラッシュアップ

抽出した具体的な発言や行動のデータをもとに、背景を推定して仮説にまとめます。生活文脈、制約条件、価値観、購買プロセスなどの観点から整理します。事前に検討していた既存の仮説がある場合はそれと照合し、「合致している点」「修正が必要な点」「完全に棄却すべき点」を分類します。

重要なのは、初期の仮説を正当化することではなく、現場で得られた生の事実に基づいて仮説を柔軟にアップデート(更新)していくことです。「A層は同意が早かったが、B層には沈黙が起きた」といった、セグメント間を比較することで、誰にとっての課題なのかが明確になり、施策のターゲット選定の精度があがります。

ステップ4:次回セッションの改善点と施策の整理

導き出した示唆を、次のアクションに変換します。調査運営の改善点については、次回のセッションで再現できる具体的なルールに落とし込みます。一方で、今後の施策検証として構築した仮説の確度を高めるためには、次に何を確かめるべきか具体的に整理します。追加すべき質問案、さらに深掘りすべき分析観点、対比させるべき新たなセグメントなどを明確にすることで、後工程の迷いが減ります。

整理した項目は、必ず担当・期限・反映先まで決めます。「次回の2グループ目でこの質問を追加する」「レポートの第3章にこの考察を盛り込む」「定量調査で検証する」といったように、反映すべきことを明確に定義しておくことで確実に実行へとうつすことができます。

ステップ5:決定事項と議論内容の記録

デブリーフィングの締めくくりとして、決定事項、アップデートされた仮説、未解決の問い(今後の課題)、そしてその根拠となった「実際の対象者の発言(発言録)」を記録に残します。特に根拠となる発言は、可能な限りそのままの言葉で引用として書き留めておくことで、後からいつでも検証可能になり、社内やクライアントへの説明力が高まります。

この記録は、個人のメモ帳などに分散させては意味がありません。プロジェクトの共有フォルダや社内のナレッジ共有ツールなど、関係者がいつでも検索・閲覧できる場所に一元化して保管します。また記録する際は、仮説は確定事項のように書かず、確度や前提条件もセットで記載することで、仮説が事実として誤って認識されてしまうリスクを未然に防ぐことができます。

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デブリーフィングを効率よく進める方法

短時間で質の高い議論にするために、事前準備・当日の進行・評価の観点という3つの要素をあらかじめ整理しておくことが大切です。共通のフレームワークとして仕組み化しておくことで、プロジェクトごとに参加メンバーが変わっても、常に一定の品質を維持できるようになります。

事前に認識をすり合わせておく

デブリーフィングの成否は、その場のノリや空気感ではなく、事前の設計によって決まります。事前の準備が不足していると議論が発散し、進行のルールがないと声の大きい人の主観的な意見に引きずられ、分析の観点が弱いと単なる表面的な要約で終わってしまいます。

事前に、アジェンダ、想定仮説のリスト、観察メモのフォーマットを準備しておきます。観察メモは、あらかじめ「事実(Fact)」「気づき(Finding)」「疑問(Question)」「仮説(Hypothesis)」を分類して記入できる型にしておくと、デブリーフィング時に混線しにくくなります。

またチーム内での役割分担(ファシリテーター、タイムキーパー、記録担当、論点管理など)をあらかじめ明確にしておくことで、全員が議論に集中しながらも、限られた時間内で確実に議論を収束させ、具体的な結論を導き出すことが可能になります。

全員が発言しやすい場を作る

議論を始める冒頭にチーム全体に対して以下のようなルールを共有します。
・相手の意見を評価・否定するのではなく、可能性を探索する
・安易な断定よりも、検証可能な仮説を歓迎する
・視点の多様性を生かすため、異なる意見は大歓迎である

特にクライアントが同席している場合、リサーチの現場スタッフが無意識のうちに「クライアントの意向(結論)に合わせにいこう」という心理が働きやすいため、こうしたルールを明文化しておくことが発言を高める上で重要です。

発言の偏りを防ぐためには、最初に全員に順番に意見を求めるなど、最初の早い段階で全員が一度話すことで、その後も意見が出やすくなります。ファシリテーターによる深掘りは、「それは価格の問題ですか、それとも失敗リスクだと思いますか?」といった、対象者の背景を特定するための具体的な問いの形式で行うと、議論のブレがなくなり、本質的なインサイトの抽出へとつながります。

多角的な分析視点を持つ

議論が行き詰まったり、表面的な感想に終始しそうになったりしたときは、以下の3つの観点から問いを投げかけると、対象者への理解(インサイト)の解像度が一段と深まります。

・構造化(一般化)の観点
「この発言や行動は、他の人にも起きる傾向(再現性のあるもの)か、それとも特定の条件を満たした人にだけ見られるものか」を確認します。単なるレアケースではなく、一般性が見えてくることで、導き出した示唆が具体的なビジネス施策へと結びつきやすくなります。

・因果関係の観点
「なぜその行動が起きたのか。その行動を誘発したきっかけや、行動を阻害している心理的な要因(ハードル)はどこに潜んでいるか」といった、原因と結果のつながりを探ります。行動の裏にある真のメカニズムを解き明かすことで、施策の訴求軸が明確になります。

・別解釈と差分の観点
別の解釈は成り立たないか」「逆の行動をとった事例はあったか」「それはどのような属性や価値観を持つ人に特有の傾向か」を洗い出します。あえて異なる可能性や差分を比較検証することで、思い込み(バイアス)が排除され、仮説の質が上がります。

言葉の表層的な意味だけに捉われず、こうした多角的な観点を持って突き詰めることで、デブリーフィングから得られる成果の質は高まります。

デブリーフィングにおける失敗例とその対策方法

デブリーフィングは効果的な意見交換の場である反面、短時間で議論をまとめようとするあまり、結論を急ぎすぎて誤った解釈を正当化してしまう側面もあります。特に、もっともらしいストーリーができた瞬間にその場の全員が納得してしまうと、データと矛盾する重要な兆候を見落としかねません。

こうした失敗の多くは、事実と解釈の混同、発言力の偏り、記録の不足、次のアクションが曖昧なことに集約されます。これらは参加する個人の能力に依存するのではなく、あらかじめ運用のルールを定めておくことで、仕組みとして防ぐのが現実的です。デブリーフィングの品質を一定に保つために、まずはどのような課題やリスクがあるのか、代表的な失敗例とそれを回避するための具体的な改善策を確認していきましょう。

デブリーフィングで陥りがちな失敗例

・単なる「感想の言い合い」で終わってしまう
インタビューの印象を語り合うだけで満足してしまい、重要な発言の選別や背景の深掘りにまで至らないケースです。場の雰囲気は良くても、使える具体的な示唆が何も残っていない、という状態に陥りがちです。

・声の大きい人の解釈に引っ張られる
声の大きいメンバーや役職者の意見に全体の流れが左右されてしまうのも典型的な失敗です。特に経験者の断定的な意見には説得力があるため、客観的な根拠の検証を経ないまま、チーム全体の結論としてまとまってしまうリスクがあります。

・事実と仮説が混同し、後工程で破綻する
「対象者が実際に発言したこと(事実)」と「リサーチャーの推測(仮説)」の境界線が曖昧なまま議論が進むと、いざレポートを作成する段階になって論理破綻を起こしやすくなります。根拠となる実際の発言が残っていないため、分析に活かせないという問題もここから生じます。

・議論の焦点がブレて時間切れになり、次のアクションが決まらない
あれもこれもと議論を広げすぎた結果、時間内にまとまらず、次に「誰が・何を・いつまでにやるか」という具体的なアクションが決まらないまま解散してしまうケースです。

失敗を防ぐための改善策

・冒頭で「目的・論点・時間配分」の合意を取る
ディスカッションを始める前に、今日の議論の範囲を明確にします。特に「今回は何を確定させるか」を最初に宣言しておくことで、本質から外れた議論の脱線を防ぐことができます。

・事実と解釈を明確に切り分ける
ホワイトボードや共有メモを活用し、「対象者の発言(事実)」「行動や表情の観察(非言語)」「そこから導く解釈(推測)」「次のインタビューへの問い」といったように、情報の性質ごとに整理・ラベリングを徹底します。これだけで、議論の混線は劇的に減少します。

・反対の解釈もあえて一度は出して検証する
導き出した結論に対して、「本当にその解釈だけで合っているか」「逆の可能性はないか」をチームで一度は問い直します。客観的な根拠を実際の発言データ(引用ログ)に求めながら検証を進めることで、思い込みによる失敗を防ぎます。

・次にやるべきことの割り振りを明確にし、記録に残す
デブリーフィングの最後には、必ず「担当者」「期限」「反映先(アウトプット)」をセットにして整理し、作成した記録をどこに保管するかを決定します。ここまで確定させて初めて、デブリーフィングでの気づきが、その後のレポート作成や具体的な施策へと活かされるようになります。

デブリーフィングの活用例

デブリーフィングは、インタビュー調査に限らず、プロジェクトの推進スピードやチームの対応力を高めたい様々なビジネスシーンで有効に活用できます。特に不確実性が高く、現場でのリアルタイムな判断が成果を左右する業務において、その真価を発揮します。
具体的には、以下のような場面での活用例が挙げられます。

・営業活動における商談の振り返り
商談の直後に、受注・失注に至った要因を客観的な事実ベースで分解し、次の提案ステップやアプローチ方法に即座に反映させます。

・カスタマーサポートにおける難易度の高い対応
イレギュラーな対応事例の後に、なぜその判断に至ったのかを振り返り、チーム全体の対応指針やマニュアルのアップデートに活かします。

・プロジェクト運営の節目
プロジェクトの要所で短時間のデブリーフィングを挟むことで、課題の早期発見と迅速な軌道修正が可能になります。ただし、ここでは「責任追及の場にしないこと」が大切です。原因を個人の問題に帰属させてしまうと、心理的安全性が失われて率直な情報共有が行われなくなり、チームとしての成長機会を逃すことになります。

・研修やシミュレーション(演習)の後
単に出来栄えを評価(採点)するのではなく、判断の根拠や迷ったポイントを言語化し、次の具体的な行動に落とし込むことで、個人の経験をチーム全体で再現可能なナレッジへと変えることができます。

まとめ

マーケティングにおけるデブリーフィングは、インタビュー調査直後に関係者の気づきを統合し、その背景を解釈して仮説を構築した上で、次の具体的なアクションへと落とし込むプロセスです。特にグループインタビュー(FGI)のように非言語情報と文脈そのものに価値がある定性調査においては、実施直後のデブリーフィングの有無が、リサーチから得られるインサイトの質やマーケティング意思決定の成果に直結します。

効果的に実践するためのポイントは、事実と解釈を厳密に切り分けて、複数の視点で検証をした上で、最後に必ず具体的な次のアクションプランと振り返りの記録を残すことです。本記事でご紹介した進め方を参考にすることで、担当者の経験値に依存することなく、常に一定以上の高い品質でプロジェクトを回せるようになります。

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