海外進出における企業調査の徹底:見えないリスクを回避する戦略
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株式会社gr.a.m
坂井 聡佑
一橋大学卒業後、株式会社クロス・マーケティングに入社。主に大手自動車メーカーや情報システム会社を中心に国内外問わずリサーチ業務を担当。のちにデロイトトーマツ コンサルティング合同会社に入社。インフラ系企業やアパレルメーカーを中心に、BPR・財務領域のコンサルティング業に従事。リサーチ、コンサル業界で経験を積み、gr.a.m参画。
gr.a.mではリサーチ事業部の責任者として国内外多数のプロジェクトを実施。
企業調査の定義と重要性
企業調査とは、企業を対象に実態を明らかにする調査であり、自社の顧客となりうる企業、販売代理店などのパートナー候補、さらには競合企業を対象に行うことが一般的です。海外市場での展開を見据えた的確な企業調査は、進出後のビジネスの成功可能性を高めるうえで非常に重要なステップといえます。新興国の公開データの信頼性
企業調査の重要性は、国内外を問わず多くのビジネスシーンで認識されていますが、特に新興国市場においてはその意義が一層高まります。新興国では、公開されているデータの信頼性が低い場合が多く、表面的な情報だけでは実態を把握することが困難です。
例えば、ミャンマーでは2024年10月に10年ぶりとなる国勢調査が実施されましたが、内戦や治安悪化の影響で全国330郡区のうち145郡区でしか調査が完了せず、58郡区では調査が全く行えませんでした。 その結果、総人口は5,131万人と推定され、事前の政府推計である5,620万人を大きく下回りました。 このような大幅な下方修正は、先進国では考えにくい事態であり、新興国特有の情報の不確実性を示しています。
このような背景から、新興国市場への進出を検討する企業にとって、現地企業の実態を把握するための企業調査は不可欠です。公開情報だけでなく、現地でのヒアリングやネットワークを活用し、信頼性の高い情報を収集することで、リスクを最小限に抑えた戦略的な意思決定が可能となります。
出典:AP News
https://apnews.com/article/census-conflict-election-military-population-8c00211b6f5b07b945fb1b5f6285f54

事前リサーチの根幹を支える企業調査
また、企業調査は、これまでご紹介した様々な事前リサーチの根底を支えています。規制調査を行う場合も、産業調査を行う場合も、個別企業の動向や企業同士の関連性を明らかにするところから全体像が明らかになります。まさに「事前リサーチのすべての道は企業調査から始まる」といえるほど、企業調査は根幹として重要であるといえます。
注目市場インドのポテンシャル
日本企業の海外進出において、進出国の候補はいくつもあります。その中でも近年、進出先として魅力を増しているとされるのが、インドです。
インドは、中国を上回る世界第1位の人口ボリューム(14億人以上)を有しています。人口の増加に伴って一定の購買力を持つ中間層の拡大や、地方都市の発展も見られており、潜在的な市場規模の拡大が顕著に表れています。
さらには、準公用語として英語が広く使われているため、コミュニケーションが比較的容易に取れることも大きな魅力の1つです。
日本企業が直面してきた課題
インドは上述した通り魅力的な市場となっていますが、一方で日本企業が長年苦戦を強いられてきたことも事実です。
例えば、中央政府と州政府がそれぞれ強い権限を持つため、以前は中央政府が徴収する税金に加え、州をまたぐ物品の移動を行う際にも都度税を徴収される仕組みとなっていました。さらに、事業を行う際の認証フローも対応窓口が多岐にわたるなど、複雑な構造を呈していました。これは現地特有の複雑性が原因であり、実際に進出したにも関わらず、なかなか事業がうまくいかない企業が多く見られたのも事実です。
改革を推し進めるインド政府の取り組み
しかし近年、インドでは中央政府と州政府が連携し、外資系企業から見た魅力を上げるため、様々な施策を実施しています。実際に世界銀行の「ビジネスのしやすさランキング」(Ease of Doing Business Rankings)で、インドは2014年には142位でしたが、2019年には77位、2020年には63位と順位を伸ばしており、国家として海外資本の誘致を目指し、着実に進んでいます。
それでは、実際にどのような施策を展開しているのでしょうか。下記に具体的な事例を挙げます。
・全国統一間接税制度(GST)の導入
・デジタルインディア推進に伴う、ガバナンス透明化の促進
・行政処理の簡素化(不要手続きの整理、窓口の簡素化)
・工業団地の区画詳細情報を提供するプラットフォームの構築
・専任マネージャー任命制度の制定(プロジェクトを通して投資家を支援)
・製造業向けに法人税率の設定(BRICsで最少となる水準。2023年3月まで17.16%)
・多国籍企業との間で税制体制を保証するための事前価格設定を締結
上記のように、インドでは国を挙げて外国資本を集めるための施策に乗り出しており、外資系企業がビジネスをしやすい環境整備が確実に進んでいます。
まとめ
マルチ・スズキのような一部の例外を除き、日系企業のインド事業は苦戦する傾向にあります。しかし外資系企業にとって、インドにおけるビジネスのしやすさは確実に改善しており、今後もこの動きは加速するとみられます。このタイミングで信頼性の高い「企業調査」を行い、本格的にインド事業展開を検討されるのはいかがでしょうか。
<会社概要>
株式会社gr.a.m
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