排ガス規制で変化するベトナムのバイク市場、「国民の足」はガソリン車からEVへ
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「バイク大国」といわれるベトナムが今、大きな転換期を迎えています。背景にあるのは、深刻化する大気汚染への対策として、ベトナム政府が進める排ガス規制と環境政策の強化です。本コラムでは、急速に進むベトナムの「脱ガソリン車」の動きと、それに伴う消費者の意識変化について解説します。
2030年を見据えた規制強化。国家課題となる都市交通の刷新
ベトナムの都市を歩けば、途切れることなくバイクが流れていく光景に出会います。道路を埋め尽くすように走る二輪車は、通勤や買い物、食事、子どもの送り迎えまで、日常生活のほぼすべてを支える「国民の足」です。ベトナム人にとって、バイクは単なる移動手段に留まらず、社会の活力そのものを象徴する存在ともいえます。
しかし昨今、この国民的モビリティが大きな転換点を迎えています。背景にあるのは、深刻化する大気汚染への対策として政府が進める排ガス規制と環境政策の強化です。
ベトナム政府は都市部の交通環境改善を国家的課題と位置づけ、ガソリン車・バイクへの依存を段階的に縮小する方針を明確に示しています。具体的には、ハノイとホーチミンという二大都市において、以下のような構造改革が進められています。
・ハノイ市
2026年に環状1号線内でガソリンバイクの通行禁止を開始。その後、2028年には環状2号線、2030年には環状3号線まで規制エリアを拡大する計画が進んでいます。
・ホーチミン市
2026年以降、配送・ライドヘイリング(配送サービス)など商用バイクの電動化を本格化し、低排出ゾーンの導入を段階的に進める方針が示されています。
両都市が歩調を合わせて電動化へ舵を切ったことで、都市交通の将来像はこれまでとは大きく異なるものになりつつあります。
加速するEVシフト。変化する購買意識と重視される新たな価値
こうした政策変更は、市民のバイク購買意識にも確実に影響を与えています。次回購入するバイクの候補として「EVバイク」をあげる人は54%に達し、「ガソリン車」の24%を大きく上回る結果となりました。
特に、規制の影響を強く受けるハノイでは6割がEVを選択すると回答しており、社会全体で「次のスタンダードは電動である」という認識が広がりつつあることが分かります。
また、EVを選ぶ理由にも変化がみられます。
・環境への配慮
・低ランニングコスト
これらが上位にあがっており、これまで重視されてきた「給油の便利さ」「初期価格の安さ」といった価値観から、環境性能や維持費の安さを重視する志向へと消費者の判断基準が徐々に変化している点は注目に値します。政府の方針が市場心理を動かし、消費者の具体的な行動変容につながり始めているのです。

出典:Q&Me「ベトナムの次なるバイク選択:EVかICEか」(株式会社Asia Plus)
https://qandme.net/ja/report/vietnams-next-motorbike-choice-ev-or-ice.html
台頭する国産ブランド。市場構造の変化と二輪・四輪への波及
EVバイクの普及をさらに後押ししているのが、ベトナム企業初の国産自動車メーカー「VinFast(ビンファスト)」の台頭です。長らくホンダが8割近いシェアを維持してきたベトナム市場ですが、次に買いたいブランドとして「VinFast」を選ぶ人が32%に急増していることは象徴的です。
現行のホンダユーザーの多くも「次はVinFastも検討したい」と回答しており、市場構造の変化を予感させます。国産ブランドが支持される背景には、EV技術や環境性能に加え、以下のような社会的文脈も大きく影響しています。
・ベトナム国産ブランドであること
・充電インフラの整備が進んでいること
・政府支援が手厚いこと
単なる製品スペックの比較を超えた「新しい価値」が形成されつつあります。
https://qandme.net/ja/report/vietnams-next-motorbike-choice-ev-or-ice.html
さらに、この潮流は二輪車にとどまらず四輪市場にも波及しています。VinFastは手頃な価格設定に加え、大規模な割引施策や下取りサポート、無料充電などの積極的なプロモーションを展開し、四輪EVの市場シェアも短期間で拡大しています。都市開発と環境政策が同時に進むベトナムでは、モビリティ全体の電動化が生活者にとってより身近な選択肢となりつつあります。
まとめ
バイク文化が深く根付く国だからこそ、ベトナムで進む二輪と四輪の双方で進む電動シフトは、今後のモビリティ産業だけでなく、街のあり方や人々の生活リズムにまで大きな影響を与える可能性があります。規制が購買行動を変えるのか、新興ブランドが市場を牽引するのか。あるいはその両方が相乗効果をうむのか。いずれにしても、ベトナムのモビリティ市場は今、東南アジアの中で最もダイナミックな変容を遂げている領域のひとつとなっています。
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