認知度も売上も見ているのに、なぜ次の施策が決まらない?“心理的ブランドエクイティ”を中核に調査を設計する方法
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株式会社クロス・マーケティング
コンサルティング本部 シニアコンサルタント
堀 好伸
生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。
生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。
「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。
著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ:https://www.nhk.or.jp/school/sougou/active10_process)
この記事は、2026年2月17日に開催されたセミナーの内容を基にポイントを解説しています。
業績と活動をつなぐ“共通言語”の構築!『心理的ブランドエクイティ』指標を中核にデザインする ブランド力向上への戦略立案プロセスの変革
はじめに:数字はあるのに、次のアクションが見えてこない
「認知度は前年より上がっている」
「購入意向は大きく変わっていない」
「売上は目標を下回っている」
ブランド調査の報告会で、こうした数字を確認している企業は多いのではないでしょうか。
認知度、好意度、購入意向、売上、シェア。確認している指標は少なくない。
それでも、「今の施策を続けるべきか」「どこを改善すべきか」と聞かれると、明確に答えるのが難しい。
必要なのは調査項目を増やすことではなく、マーケティング活動が生活者にどのような変化を生み、それが購入や業績へどうつながるのかを捉え直すことです。
1.売上と認知度だけでは、途中の変化が見えない

売上やシェアは事業成果を把握するために欠かせず、認知度もブランドの浸透状況を確認するうえで重要です。
しかし、この二つだけでは、ブランド施策が生活者にどのような変化をもたらしたのかまでは分かりません。
広告を強化して認知度が上がっても、「名前を知っているだけ」なのか、「特徴まで理解されている」のか、「自分に合うと感じられている」のかによって意味は異なります。
反対に、売上がまだ動いていなくても、ブランドへの信頼や好意、選好が高まっている可能性もあります。心理的な評価が変化してから、購入や業績に表れるまでには時間がかかることがあるためです。
だからこそ考えたいのが、ブランド施策と売上の間で、生活者に何が起きているのかという問いです。
2. 活動と業績の間にある「心理」を捉える

企業は、広告、PR、店頭、商品体験、Webサイト、SNS、CRMなど、さまざまな接点を通じてブランドの価値を伝えています。
生活者は、接点に触れたからといって、すぐに商品を購入するわけではありません。
まずブランドを知り、特徴や違いを理解する。そこから「信頼できそう」「自分に合っていそう」「このブランドを選びたい」といった心理的な態度が形成され、購入、継続利用、推奨へつながります。
つまり、マーケティング活動と業績の間には、接点・体験、認識・イメージ、好意・信頼・選好といった中間の変化があります。
添付資料では、業績を示すKGIと活動を示すKAIの間に、生活者視点の行動・心理・認識を配置し、課題や機会を導き出す情報基盤として構造化しています。
活動だけを見ても、生活者にどう受け止められたかは分かりません。売上だけを見ても途中経過は見えません。この間を捉えることで、初めて「施策がどこまで届いているのか」を判断できます。
3. 心理的ブランドエクイティを「先行指標」として捉える

そこで重要になるのが、心理的ブランドエクイティという考え方です。
心理的ブランドエクイティとは、生活者の中に形成されている、ブランドに対する心理的な価値を捉えるものです。
たとえば、
「このブランドは信頼できる」
「自分に合っている」
「他のブランドより魅力を感じる」
「今後も選びたい」
といった評価が含まれます。
認知しているか、購入したことがあるかという行動だけではなく、生活者がブランドに対してどのような態度を持っているかを見る考え方です。
心理的ブランドエクイティは、現在の売上そのものではありません。
しかし、中長期的なビジネスの変化に先立って動く「先行指標」として捉えることで、将来の機会やリスクを早い段階で考えやすくなります。
たとえば、現在のシェアは小さいものの、認知者の中ではブランドへの心理的評価が高い場合。
そのブランドには、今後認知を広げることで成長できる可能性があるかもしれません。
一方で、現在のシェアは高くても、心理的な評価が低下している場合。
現時点の業績だけでは見えない、将来的なリスクが表れている可能性があります。
現在の業績と、生活者の中に形成されているブランド価値。
この二つを合わせて見ることで、ブランドの状態をより立体的に捉えられるようになります。
4.調査を意思決定につなげる3つの視点
現在のブランド調査を見直す際は、次の3点を確認してみてください。
①各指標を「なぜ測っているのか」説明できるか
認知度や購入意向を継続して測っていても、どの施策判断に使うのかが曖昧であれば、報告は「上がった・下がった」で終わります。
活動、認識、心理、行動、業績を一つの流れとして整理し、各指標の役割を明確にする必要があります。
②ブランドの状態を示す中核指標が決まっているか
調査項目が多すぎると、部門ごとに重視する数字が変わり、課題認識もずれていきます。
すべてを一つにまとめるのではなく、ブランドの現在地と将来性を考えるうえで、何を中核として追うのかを定めることが重要です。
③調査結果から「何を強化するか」が分かるか
品質への信頼、独自性、口コミ、広告接触など、どの要素がブランドエクイティを動かしているのかを分析し、現在の評価と組み合わせて施策の優先順位を整理します。

おわりに:調査を「測るもの」から「動くためのもの」へ
売上データもある。ブランド調査も実施している。それでも次の施策が見えてこないのであれば、必要なのは新しい数字を増やすことではなく、すでにある指標のつながりを整理することかもしれません。
マーケティング活動が接点をつくり、接点や体験が認識を変え、認識の変化が好意や信頼を生み、その心理的な変化が将来の購入や売上につながっていく。
この構造が明確になることで、調査は「何ポイント動いたか」を確認するものから、「次に何を強化するか」を決めるものへ変わります。
ブランド調査は、ブランドに関わる人たちが同じデータを見ながら、現在地を理解し、次のアクションを決めるための共通言語でもあるのです。
心理的ブランドエクイティを中核にしたブランド調査設計
クロス・マーケティングでは、心理的ブランドエクイティを中核にしたブランド浸透度調査の設計・見直しを支援しています。
業績とマーケティング活動の間にある生活者の認識・心理・行動を構造化し、課題や成長機会、強化すべき項目を把握できる調査フレームを構築します。
具体的な指標設計や分析方法は、資料で詳しくご紹介しています。
