既存データから「体験価値」を転換する~休眠資産を新商品コンセプトの起点に変える方法~
公開日:
株式会社クロス・マーケティング
コンサルティング本部 シニアコンサルタント
堀 好伸
生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。
生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。
「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。
著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ:https://www.nhk.or.jp/school/sougou/active10_process)
市場調査、顧客アンケート、購買データ、インタビュー記録。
社内には多くのデータがあるのに、新商品の会議になると、
「結局、何をつくればよいのかわからない」
「既存商品の改善案しか出てこない」
という状態に陥ることがあります。
データが足りないように見えますが、問題は量ではなく、データをどの単位で捉えているかにあるかもしれません。
調査データが「事実」のまま止まっていないか
調査から得られるのは、満足度、利用率、購入理由、不満点といった事実です。
現状把握には欠かせませんが、項目ごとの数字を確認するだけでは、生活者にどのような変化が起きているのかまでは見えません。
例えば、「利用する時間帯が変わった」という結果があっても、そこで分析を終えれば、時間帯に合わせた機能改善にとどまりがちです。
一方で、
「なぜ、その時間に使うようになったのか」
「どのようなライフシーンの変化があったのか」
「その場面で、どのような状態になりたいのか」
までつなぎ直すと、同じデータが、これから求められる顧客体験を考える材料に変わります。

データが古いのではなく、「見方」が固定されている
過去の調査は、その時点の目的に沿って分析されています。
満足度調査であれば満足・不満の把握、利用実態調査であれば頻度や利用場面の確認が中心です。
しかし、同じデータでも問いを変えると、別の意味が見えてきます。
例えば、複数年の調査結果を並べて、
「生活者の行動はどう変わってきたか」
「商品が使われる場面はどう移り変わったか」
「求められる体験価値はどう変化したか」
という観点から読み直します。
すると、過去のデータは「古い結果」ではなく、社会や生活者の変化を読み解くための資産になります。

新しい調査の前に、既存データを棚卸しする
もちろん、新しい調査が必要な場面もあります。
ただし、その前に、社内にどのようなデータがあり、どこまで活用できるのかを確認することが重要です。
調査テーマ、実施時期、対象者、設問、自由回答、インタビュー記録などを整理し、複数の調査を横断して見ることで、単独のレポートでは気づけなかった変化が浮かび上がります。
重要なのは、データを増やすことではなく、今ある情報から何を読み直せるかを考えることです。

データやアイデアは、「持っている」だけでは事業につながらない
既存データを棚卸しする目的は、レポートを整理し直すことではありません。
重要なのは、そこにある情報を、
「生活者はどう変化しているのか」
「その変化から、どんな新しい価値が考えられるのか」
「自社は何を提供できるのか」
という問いにつなぎ直し、次の意思決定に使える形へ変えることです。
これは、調査データだけに限りません。
社内に蓄積された知見やアイデアも、個別に存在しているだけでは、新しい商品や事業のコンセプトに結びつかないことがあります。
実際に「情報を事業へつなげる」には?
朝日新聞社の新規事業開発でも、当初は約200ものアイデアがありながら、具体的な事業イメージを描ききれないという課題がありました。
そこで、社内にある情報や強みを改めて棚卸しし、第三者の視点を交えながら「なぜ?」を掘り下げるワークショップを実施。
さらに、調査や情報提供だけで終わらせず、議論を重ねながら事業の核を明確にしていくことで、新規事業の方向性を具体化していきました。
ポイントは、情報を増やすことではなく、すでにある情報を「次に何をするか」へつなぎ直
したことです。
調査結果も同様です。
数字や回答を報告書の中に残すのではなく、生活者の変化や次に求められる体験という視点で読み直すことで、データは新しい企画を考える材料へ変わります。
▼調査を“報告書”で終わらせず、新規事業のコンセプト開発まで伴走した事例
既存データを「次の顧客体験」へつなげる
Concept Discoveryでは、保有している情報やリサーチデータの状況に応じて、既存データの再分析を活用しながら、生活者の変化や新しい価値提供の切り口を整理します。
満足度や利用率をもう一度集計するのではなく、生活者の行動、ライフシーン、体験価値の変化として捉え直し、次の商品・サービスコンセプトにつなげます。
新しい調査を増やす前に、社内に眠るデータから何を発見できるのか。
使い切れていない調査データは、単なる「休眠資産」ではなく、次の顧客体験を考えるための出発点になり得ます。
