技術はあるのに、新商品につながらないのはなぜ? ~研究開発の「面白い」を生活者価値に変える3ステップ~
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株式会社クロス・マーケティング
コンサルティング本部 シニアコンサルタント
堀 好伸
生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。
生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。
「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。
著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ:https://www.nhk.or.jp/school/sougou/active10_process)
技術はある。独自性もある。研究開発部門では将来性も感じている。
それなのに、商品企画の会議になると話が前に進まない。
「この技術で何ができるのか」は説明できる。
一方で企画側からは、「それは誰にとって価値があるのか」「市場で本当に選ばれるのか」と聞かれる。
さらに、いざ新商品を考え始めると、既存商品の改良案ばかり。
調査では「欲しい」と評価されたのに、商品化してみると思ったほど売れない。
こうした一見別々に見える悩みは、実は同じ流れの中で起きています。
技術を生活者価値へ翻訳する。
アイデアの可能性を広げる。
そして、市場の視点から進めるテーマを見極める。
この3つが分断されていると、せっかくの技術が商品・サービスの方向性につながりにくくなります。

STEP1 研究開発と企画をつなぐ「共通言語」をつくる
研究開発部門は、技術の性能や仕組み、「何ができるのか」を見ています。
一方、企画部門は、「誰が欲しいのか」「どんな価値になるのか」「選ばれる理由があるのか」を見ています。
どちらが正しい、という話ではありません。見ている起点が違うのです。
そのため、技術シーズと生活者ニーズをいきなり結びつけようとすると、会話が噛み合わなくなりやすくなります。
そこで必要になるのが、その間に、
「この技術によって何ができるのか」
「生活者にどんな便益をもたらせるのか」
という“翻訳”のステップを置くことです。
たとえば、専門的な技術説明をそのまま企画へ渡すのではなく、「負担を減らせる」「状態を整えられる」「変化に気づきやすくなる」といった、生活者にとって意味のある言葉へ置き換える。
すると、研究開発側の「できること」と、企画側の「求められる価値」を同じ構造で話せるようになります。

STEP2 技術を“できること”に分解して、発想の幅を広げる
共通言語ができても、「では、何の商品にするか」で再び手が止まることがあります。
ここで陥りやすいのが、技術をいきなり既存の商品カテゴリに当てはめることです。
化粧品の技術なら化粧品。
食品なら食品。
オフィス関連の技術ならオフィス用品。
カテゴリから考えるほど、既存商品の延長案に寄りやすくなります。
そこで、技術を一度「できること」へ分解する視点が重要になります。
たとえば、「守る」「整える」「伝える」「気づかせる」「減らす」など、技術が持つ働きや便益まで視点を広げてみます。
すると、「この技術は、何の商品に使えるか」という問いが、
「生活者のどんな行動を楽にできるか」
「どんな不安や手間を減らせるか」
「どんな新しい体験を生み出せるか」
という問いに変わります。
商品から考えるのではなく、価値から考える。
この順番に変えることで、既存カテゴリの外側にも用途の候補が広がっていきます。

STEP3 “欲しい”だけで決めず、市場機会を見極める
アイデアが広がったら、次は「どれを進めるか」を決める必要があります。
ここで注意したいのが、「欲しい」「魅力的」という評価だけで商品化を判断することです。
たとえ魅力的なニーズでも、すでに別の方法で十分満たされていれば、新しい商品が入り込める余地は小さいかもしれません。
重要なのは、
・どれくらい求められているか
・今どれくらい満たされていないか
・どの程度の広がりが期待できるか
といった複数の視点から見ることです。
「やりたいのに、うまくできない」
「困っているのに、ちょうどよい解決策がない」
こうした状態に自社の技術で応えられるなら、そこには新しい商品・サービスが入り込む余地があります。
発想の面白さだけで終わらせず、生活者ニーズと市場性を照らし合わせる。
そこまで行うことで、「面白そうなアイデア」が「進める根拠のある開発テーマ」へ変わります。

大切なのは、3つのステップを分断しないこと
技術を生活者価値へ翻訳する。
できることに分解して、用途を広げる。
生活者ニーズと市場性から、優先順位を見極める。
重要なのは、この3つを別々に行わないことです。
アイデア出しだけでは、「面白いけれど売れるか分からない」で止まります。
一方、市場調査だけでは、目の前にあるニーズに引っ張られ、自社技術ならではの可能性を十分に活かせないことがあります。
技術起点の発想と、生活者起点の検証を一つの流れとしてつなぐ。
そうすることで、研究開発・企画・デザインが共通の判断軸を持ち、次に進める開発テーマを選びやすくなります。

実際の企業では、技術をどう生活者価値へつなげているのか?
ここまでご紹介してきた考え方を、実際の企業ではどのように商品・事業開発へ活かしているのでしょうか。
ライオン株式会社様の事例では、研究部門が持つ独自技術の可能性を、生活者にとってどのような価値になり得るのかという視点から整理し、次の事業・商品開発につなげる取り組みをご紹介しています。
技術そのものの説明に留めず、
「この技術によって、生活者にどんな価値を提供できるのか」
を考え、さらにその可能性を市場の視点から確かめていく。
研究と事業の目線を揃えながら、技術の可能性を広げていった実践例です。
「自社の技術を、どう生活者価値へ変えればよいのか」
「研究開発と企画・マーケティングの目線を、どう揃えればよいのか」
そんな課題をお持ちの方は、ぜひ実際の取り組みをご覧ください。
自社の技術ポテンシャルを、次の商品・サービスへ
技術の可能性を生活者価値へ変換するには、単にアイデアを出すだけでも、市場調査を行うだけでも十分ではありません。
技術の強みを整理し、生活者視点で可能性を広げ、その市場性まで一つの流れとして考えていくことが重要です。
クロス・マーケティングの「Seeds-Needs Bridge」では、独自技術を生活者にとっての価値へと転換し、次の商品・サービス開発の方向性を考えるプロセスを支援しています。
「独自技術はあるが、どの市場・ニーズに接続すべきか分からない」
「研究開発と企画の議論が噛み合わない」
「アイデアは出るが、どれを進めるべきか判断する根拠がない」
そんな課題がある場合は、まず技術をそのまま商品へ当てはめるのではなく、一度“生活者にとっての価値”へ翻訳することから始めてみてはいかがでしょうか。
