Z世代の飲料市場におけるパラダイムシフト 「酔うための酒」から「メンタルパフォーマンス最大化」へ。トライブから紐解く「第3の時間」の創出
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株式会社クロス・マーケティング
コンサルティング本部 シニアコンサルタント
堀 好伸
生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。
生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。
「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。
著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ:https://www.nhk.or.jp/school/sougou/active10_process)
この記事は、2026年9月28日に開催されたセミナーの内容を基にポイントを解説しています。
「パブリック」でも「完全なオフ」でもない『第3の時間』を企業はどうデザインするか?
はじめに
近年、若年層を中心としたアルコールの「ソバーキュリアス(あえて飲まない選択)」や酒離れが叫ばれて久しいですが、市場の実態は単なる「飲酒量の減少」にとどまりません。飲料に求める価値そのものが、従来の「酔うため・ストレス発散のため」から、「自分のメンタルや感情の状態をチューニングするため」へと大きく変容しています。
本コラムでは、2026年9月28日に開催された株式会社クロス・マーケティングとSEEDER株式会社の共催セミナー「Z世代の飲料トレンドと新しい時間の過ごし方」の内容に基づき、世界で起こっている飲料市場のパラダイムシフトと、先進生活者(トライブ)の行動分析から見えてきた新しい時間の過ごし方「第3の時間(サードタイム)」におけるマーケティングの「次の一手」について解説します。
1. 「飲まない世代」の再解釈と、グローバル飲料市場の潮流
世界的な酒類市場調査機関IWSRやギャラップ社のデータによると、米国をはじめグローバル市場において「Z世代はお酒を飲まない」という従来の見立てに変化が生じており、一定の層がアルコールを日常生活に取り入れ始めていることが報告されています。しかし、彼らの飲み方は上の世代のような宴会型・大量消費型とは一線を画しています。
現在、欧米・アジア諸国で顕著になっている最新の飲料トレンドには、以下の4つの象徴的な動きが見られます。
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夕方5時の儀式「デイキャップ(Day Cap)」
夜遅くにバーなどで締めとして飲む「ナイトキャップ」に対し、夕方17時頃に軽くカクテルなどを嗜むスタイルが広まっています。一日の終わりを待つのではなく、自分時間を前倒しして「今日の区切り」をつけるポジティブな行動です。 -
所有欲と楽しさを満たす「バズボール(BuzzBallz)」
米国やインドで大ヒットしている200mlの球体型容器入りRTD。度数15%でありながらストローで飲むカジュアルさや多様なフレーバー(オレオクッキー味など)を展開し、アルコール度数の高さではなく「デザインや楽しさ」で購入されています。 -
自宅を小粋なバーに変える「プレミアムガラス容器RTD」
イギリス発の100ml小容量ガラス瓶入りカクテル。グラスに氷やフルーツを添えるだけで上質なバー体験を自宅で手軽に再現でき、リユース可能な環境配慮デザインも若年層に支持されています。 -
韓国発「シェーキング&シャーベットハイボール」
振ってゼリー状にして飲むハイボールや、凍らせて食べるハイボールなど、スイーツや清涼飲料の延長線上でおしゃれに嗜む新感覚の飲み方が拡大しています。
これらのトレンドに共通するのは、アルコールを「酔うための手段」としてではなく、「その時間をどのように心地よく過ごしたいか」という自己表現やマインドチェンジのツールとして消費している点です。
2. トライブ分析:ノンアルを「マインドチューナー」として可変利用する先進生活者

SEEDER社が提唱する「TRIBE(トライブ:3〜5年先の未来を先取る先進的生活者像)」の行動分析から、新しい飲料価値を実践する2つの先進事例が提示されました。
事例①:感情の深さでアルコール/ノンアルを切り替える「スイッチドリンカー」(OTさん / 26歳・会社員)
OTさんは、動画コンテンツを視聴する際の「没入度の深さ」によって飲料を使い分けています。
- 没入したいとき(オンのオフ): 海外ドラマ(『ウォーキング・デッド』等)の世界観に入り込み、登場人物の感情に共鳴したい場面では、劇中の真似をしてウイスキーのロックを嗜みます。
- 気楽に楽しみたいとき(オフのオフ): YouTube観賞や翌朝の予定がある日はノンアルコールビールを選び、適度なリラックスと体調管理を両立させています。
事例②:週始めの気持ちを「オン」にする「モチベーションチューナー」(Tさん / 26歳・地方公務員)
Tさんは、月曜朝の車通勤前に「ノンアルコールビール」を飲んで出社します。
- 仕事への切り替えスイッチ: 甘い清涼飲料ではなく、ビールの持つ苦味や炭酸のキレを「よし、やるぞ」というモチベーション喚起のトリガー(引き金)として活用しています。
- 機能性エナジーとしての活用: 週5日の空手や筋トレ後にもノンアルビールを愛飲。お酒の代用品ではなく、メンタルパフォーマンスを高める「機能性飲料」として能動的に選んでいます。
彼らにとってノンアルコール飲料は、「お酒が飲めないから選ぶ消極的な代用品」ではなく、「自分のマインドや感情を狙った状態にコントロールするための機能性ツール」へと昇華しています 。
3. 公(パブリック)と私(プライベート)の境界を超える「第3の時間(サードタイム)」の誕生
かつてのライフスタイルは、「仕事(オン)を完全に終えてからプライベート(オフ)を楽しむ」という明確な二分法が一般的でした。しかし、リモートワークの浸透やデジタル環境の常態化に伴い、生活者の時間意識は「オンの中にオフを差し込む」「日常の隙間に自分時間を作る」方向へと移り変わっています。
完全に公的でも完全なプライベートでもない、このグラデーション状の空間・時間帯こそが「第3の時間(サードタイム)」です。
「第3の時間」において生活者が求めているのは、ダラダラと過ごす時間消費ではなく、「短時間で自分の感情やモチベーションを上手に整え、パフォーマンスを最大化すること」です。この時間の質を高める触媒として、飲料が極めて重要な役割を果たしています。
4. 飲料マーケティングの「次の一手」:代替品訴求から「コンディショニング・パートナー」へ
Z世代をはじめとする現代生活者の飲料シフトは、今後の商品開発やブランドコミュニケーションに大きな示唆を与えています。企業が取り組むべきパラダイムシフトのポイントは以下の3点です。

- 「アルコール vs ノンアルコール」の二項対立からの脱却
「お酒を飲む人 / 飲まない人」という属性でターゲットを分断するのではなく、「どんな感情・マインド状態になりたいか(没入、スイッチオン、リフレッシュなど)」という機会・目的軸で商品を再定義することが求められます。 - 「代用品」から「能動的なコンディショニング飲料」への価値再定義
ノンアルコール飲料や微アルコール飲料を「お酒が飲めない時の妥協案」として訴求するのではなく、「仕事やトレーニングのモチベーションを高める」「作品への没入感を深める」といった積極的な効能(マインドチューニング機能)を前面に打ち出すことが有効です。 - 生活者の日常に寄り添う「第3の時間」の体験設計
夕方17時のデイキャップや、週初めの朝の切り替えなど、生活者の新しい生活リズムにフィットする飲用シーンやパッケージサイズ(小容量、持ち運びやすさ、デザイン性)を提案し、年間を通じた「コンディショニング・パートナー」としてのポジションを確立することが成功の鍵となります。
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