PSM分析のやり方とは?設問設計から結果の読み方、注意点までわかりやすく解説
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PSM分析の概要と導き出される4つの価格
消費者に尋ねる4つの質問の回答を用いた累積グラフの交点から、受け入れられる価格帯などを導き出す仕組みを理解できます。
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調査データに見る許容価格帯
ハンバーガーのデータを用いた事例から、導き出された複数の価格に基づく具体的な結果の読み取り方を把握できます。
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適切な調査手順と他手法との使い分け
データクリーニング等の注意点やCVM分析・コンジョイント分析との使い分けが分かります。
【あわせて読みたい】 商品コンセプト全体の受け入れられやすさについて深く理解したい方は「受容性とは?マーケティング調査での意味や高める方法を解説」をご覧ください。また、調査対象のグループ分けや回答数の設定方法について知りたい方は「アンケート調査の「割付」とは? 必要性・方法・決め方をわかりやすく解説」もおすすめです。
PSM分析は、消費者に4つの価格に関する質問を行い、受け入れられる価格帯を把握する調査手法です。質問の形式はシンプルですが、誰に聞くのか、何を見せて聞くのかといった調査設計によって、結果は変わります。今回は、PSM分析の調査設計のポイントや結果の読み解き方、注意点、ほかの価格調査手法との使い分けを解説します。
商品の価格設定に向けて、どのような調査が適しているか、目的や課題の整理からご相談いただけます。
PSM分析とは
PSM分析(Price Sensitivity Measurement=価格感度測定)は、消費者に価格に関する4つの質問を行い、消費者に受け入れられる価格帯を把握する価格調査の手法です。オランダの経済学者ピーター・ヴァン・ウェステンドルプが1976年に発表した手法で、4つの質問への回答を累積グラフにし、曲線の交点から消費者に受け入れられる価格帯を導き出します。
【PSM分析の4つの質問】
●高すぎて買えないと感じ始める価格(高すぎる)
●高いと感じ始める価格(高い)
●安いと感じ始める価格(安い)
●安すぎて品質に不安を感じ始める価格(安すぎる)
4つの質問から導かれる4つの価格
4つの質問への回答を価格ごとに累積してグラフを作成すると、4本の曲線が描かれます。このとき「安い」「安すぎる」の2本は、価格が高い側から累積する(反転させる)のがポイントです。曲線の交点からは、次の4つの価格が導かれます。
【PSM分析で導かれる4つの価格】
●上限価格:「高すぎる」と「安い」の交点。これより高いと購入されにくくなる価格の上限
●妥協価格:「高い」と「安い」の交点。消費者が「この程度なら仕方ない」と受け入れる価格
●最適価格:「高すぎる」と「安すぎる」の交点。価格に対する心理的な抵抗感が最も小さくなる価格
●下限価格:「高い」と「安すぎる」の交点。これより安いと品質への不安から購入されにくくなる価格の下限
下限価格から上限価格までの範囲が、消費者に受け入れられる価格帯(許容価格帯)です。各価格の詳しい意味や算出の仕組みについては、用語集「PSM分析とは」もあわせてご覧ください。

調査データで見るPSM分析の結果
ここでは、クロス・マーケティングが実施した「価格に関する調査(2024年)」から、ハンバーガーのPSM分析の結果を紹介します。
●下限価格:154円
●最適価格:299円
●妥協価格:339円
●上限価格:500円
この結果から、ハンバーガーの許容価格帯は154〜500円であることがわかります。なかでも最適価格の299円から妥協価格の339円のあたりは、価格への抵抗感が比較的小さく、受け入れられやすい価格帯と読み取れます。仮に450円で販売する場合、許容価格帯には収まっていますが上限価格に近いため、価格に見合う価値をどう伝えるかがより重要になるでしょう。なお、2023年5月に実施した同じ調査では上限価格が699円で、1年あまりで約200円低下しています。このように、同じ設計で定期的に実施することで、価格感覚の変化も把握できます。

出典:株式会社クロス・マーケティング「価格に関する調査(2024年)」
PSM分析が活用される場面
PSM分析は、主に次のような場面で活用されています。
●新商品の市場導入価格の検討
●既存商品の価格改定(値上げ・値下げ)の検討
●新カテゴリーの商品など、参考にできる市場価格がない場合の価格探索
●ターゲット層やユーザー層ごとの価格感覚の比較
PSM分析の進め方
PSM分析の手順自体は複雑ではありませんが、消費者に受け入れられる価格帯を適切に把握するには、調査設計が重要です。ここからは、実施の手順に沿って押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
1. 調査の目的と対象者を決める
最初に、「何の価格を、誰の感覚で判断したいのか」を明確にします。新商品であれば想定ターゲットやカテゴリーの購入者、既存商品の値上げであれば現在のユーザーが主な対象になります。ユーザーと非ユーザーでは価格の感じ方が異なることも多いため、両方の意見を知りたい場合は、あらかじめ両者を分けて集計できるように設計しておきましょう。
また、属性ごとに結果を比較したい場合は、全体の回収数だけでなく、比較したいグループごとに十分な回答数を確保できるかを事前に確認しておく必要があります。どの属性の回答者を何人集めるかは、割付の設計とあわせて検討しましょう。割付の考え方については「アンケート調査の「割付」とは? 必要性・方法・決め方をわかりやすく解説」をご覧ください。
2. 回答前に提示する情報をそろえる
PSM分析では、回答者が「何に対して」価格を答えているのかをそろえることが重要です。商品のコンセプトや写真、内容量、主な特長など、価格判断の材料となる情報を統一して提示しましょう。情報が少なすぎると、回答者がそれぞれ異なる商品を思い浮かべてしまい、回答がばらつく原因になります。
既存商品の場合は、現在の販売価格を提示するかどうかも検討が必要です。現行価格を見せると回答がその金額に引き寄せられやすくなる一方、見せなければ回答者の記憶や想像に頼った回答になります。調査の目的に応じて判断しましょう。
3. 回答形式を決める
回答形式には、金額を直接入力してもらう自由回答と、あらかじめ用意した価格から選んでもらう選択式があります。
●自由回答:回答者の感覚を細かく把握できる一方、極端な金額や入力ミスが混ざりやすい
●選択式:回答のばらつきや外れ値を抑えやすく、新カテゴリーの商品など相場観がない場合に有効
選択式の場合は、選択肢の範囲と刻み幅が結果を左右する点に注意が必要です。用意した範囲の外にある価格は回答できず、刻み幅が粗すぎると交点の位置も粗くなります。想定している価格を中心に、十分に広い範囲を設定しましょう。
4. 回答データをチェックする
集計の前に、回答データの品質を確認します。PSM分析の4つの回答は、本来「安すぎる<安い<高い<高すぎる」の順に金額が大きくなるはずです。この順序が崩れている回答は、設問を読み違えている可能性があります。あわせて、桁を誤って入力したと思われる極端な金額がないかも確認しましょう。
こうした不適切な回答をチェックし、集計から除外したり修正したりする作業を「データクリーニング」といいます。どの回答を除外の対象とするかは調査の目的や内容によって異なるため、調査設計の段階で基準を決めておくことが大切です。なお、Webアンケートでは、回答画面上で矛盾した回答を入力できないように制御することで、こうした回答を未然に防ぐこともできます。
5. 累積グラフを作成し、交点を読み取る
データが整ったら、価格ごとに回答者の割合を累積して4本の曲線を描きます。前述のとおり、「安い」「安すぎる」は価格が高い側から累積します。グラフはExcelなどの表計算ソフトでも作成できますが、交点は選択肢の価格と価格の間に位置することも多いため、読み取り方をあらかじめ決めておくと、調査ごとの比較がしやすくなります。
PSM分析の結果を読み解くポイント
PSM分析で算出された4つの価格は、そのまま価格設定の正解になるわけではありません。結果を適切に活用するには、許容価格帯の幅や属性別の違いなどを確認し、消費者の価格感覚を総合的に読み解くことが重要です。ここでは、結果を読み解く際に意識したい4つのポイントを紹介します。
許容価格帯の幅に注目する
4つの価格だけでなく、許容価格帯の幅そのものにも意味があります。幅が狭い場合は、消費者の間で「この商品ならこのくらい」という相場観が共有されていると考えられ、価格を変更したときの反応も大きくなりやすいでしょう。反対に幅が広い場合は、相場観がまだ定まっていないか、回答者によって価値の感じ方が大きく異なる可能性があります。後者の場合は、次に紹介する属性別の分析が特に有効です。
全体の結果だけで判断しない
全体の最適価格が、どの層にとっても最適とは限りません。性別・年代、利用頻度、普段購入しているブランドなどの属性別に結果を比較すると、層によって許容価格帯が大きく異なることがあります。価格を判断する際は、全体の結果よりも、メインターゲットとする層の結果を重視しましょう。
既存カテゴリーでは「相場」に引っ張られやすい
すでに市場が確立しているカテゴリーでは、回答者は普段の購入価格を基準に答える傾向があります。そのため、結果が現在の市場価格に近い水準に収まりやすく、新しい価値を持つ商品であっても「今ある商品と同じくらい」という評価になりがちです。新しい価値を打ち出す商品の場合は、そもそもその価値が回答者に伝わっているかを、コンセプトテストなどであわせて確認しておくことが有効です。
交点はピンポイントではなく「幅」で捉える
価格の回答は、100円や500円、1,000円といったきりの良い金額に集まりやすい傾向があります。そのため累積曲線は階段状になりやすく、交点の位置も回答のわずかな違いで動くことがあります。算出された価格を1円単位の正解と捉えるのではなく、おおよその価格帯の目安として扱うのが現実的です。

PSM分析の注意点と限界
PSM分析では、消費者に受け入れられる価格帯を把握できます。一方で、その価格で実際に何個売れるか、競合商品と比較したときにどの商品が選ばれるかまでは、PSM分析だけでは分かりません。結果を価格設定に活用する際は、こうした限界を理解しておくことが重要です。
「その価格で何個売れるか」はわからない
PSM分析でわかるのは、消費者が「受け入れられる」と感じる価格帯です。その価格で実際に何人が購入するのか、売上や利益が最大になるのはいくらなのかまでは、PSM分析だけでは推計できません。価格ごとにどの程度の人が受け入れるかまで把握したい場合は、後述するCVM分析などの手法と組み合わせる必要があります。
アンケートの回答と実際の購買行動は異なる
PSM分析の回答は、「この商品を買うとしたら、いくらなら高い(安い)と感じるか」を、アンケート上で想定して答えたものです。実際に自分のお金を払う場面では、そのときの予算や、セール・ポイント還元の有無などによって判断が変わることもあります。アンケートで答えた価格感覚が、そのまま実際の購買行動に結びつくとは限らない点に留意しましょう。
競合商品との比較を前提にしていない
PSM分析は、基本的に1つの商品について価格感覚をたずねる手法であり、競合商品との比較の中でどう選ばれるかは測っていません。競合が価格を改定したり、新商品が登場したりすれば、消費者の価格感覚も変化する可能性があります。
ほかの価格調査手法との使い分け
PSM分析だけでは把握できない価格変更への反応や、価格と機能などのバランスを検討したい場合は、ほかの価格調査手法を組み合わせる方法があります。ここでは、代表的な手法との違いと使い分けを整理します。
CVM分析:価格ごとに許容する人の割合を見る
CVM分析(Contingent Valuation Method=仮想評価法)は、もともと環境保全など価格をつけることが難しいものの価値を、金額として評価するために用いられてきた手法です。価格受容性調査では、回答者に「支払ってよい金額」をたずね、価格ごとに何割の人が許容するかを把握し、価格を変更した際の反応をシミュレーションする目的で活用されます。値上げや値下げによって、どの程度の顧客が離れるのか、あるいは獲得できるのかを検討したい場合に適しています。
コンジョイント分析:価格と他の要素のバランスを測る
コンジョイント分析は、価格だけでなく機能やデザイン、ブランドなど複数の要素を組み合わせた商品案を評価してもらい、消費者が何をどの程度重視しているかを明らかにする手法です。「価格を上げる代わりに機能を追加するか」といったトレードオフの検討や、競合商品を含めた選ばれ方の分析に適しています。
【目的別:価格調査手法の使い分け】
●受け入れられる価格帯を手軽に把握したい:PSM分析
●価格を変更した際に、許容する人の割合がどう変わるかを把握したい:CVM分析
●価格と機能・ブランドなどのバランスを検討したい:コンジョイント分析
値上げ局面でのPSM分析の活用
PSM分析は、新商品の価格設定だけでなく、既存商品の値上げを検討する際にも活用できます。現在の販売価格と許容価格帯の位置関係を確認することで、値上げの余地を検討する材料になります。
現行価格が許容価格帯のどこにあるかを確認する
まずは、現在の販売価格が許容価格帯のどのあたりに位置しているかを確認しましょう。上限価格までに余裕があれば、一定の値上げ余地があると考えられます。反対に、現行価格がすでに上限価格に近い場合は、単純な値上げではなく、付加価値の追加や内容量の見直しなど、別の打ち手もあわせて検討する必要があるでしょう。
値上げ案ごとに条件を変えて比較する
「価格を据え置いて内容量を減らす」「内容量を維持して価格を上げる」など、複数の案がある場合は、回答者を分けてそれぞれの条件を提示し、結果を比較する方法もあります。どの案が消費者に受け入れられやすいかを、事前に把握するのに役立ちます。
定期的に実施して価格感覚の変化を追う
物価が上昇する局面では、消費者の価格感覚そのものも変化していきます。同じ設計でPSM分析を定期的に実施すれば、許容価格帯がどのように動いているかを時系列で把握できます。比較の精度を保つためにも、対象者の条件や提示情報、回答形式は毎回そろえておきましょう。
まとめ
PSM分析は、4つの価格に関する質問から消費者に受け入れられる価格帯を把握できる価格調査の手法です。結果は4つの価格だけでなく、許容価格帯の幅や属性ごとの違いまで含めて読み解くことが大切です。一方で、「その価格で何個売れるか」まではPSM分析だけでは分かりません。算出された価格を価格設定の「正解」として扱うのではなく、ほかの価格調査手法も組み合わせながら、価格判断の根拠として活用していくことが大切です。
価格への受容性を把握し、価格設定に活用するため、調査設計や分析手法の選定からご相談いただけます。
